「笑ゥせぇるすまん」オリジナルストーリー／親ガチャ失敗 前編 みけ子作
＊藤子不二雄(A)氏原作の「笑ゥせぇるすまん」。TV放送されていた当時、大好きで毎回楽しみにして見ていました。オリジナルストーリーを1本のシナリオもどきにまとめました💦 お時間とご興味のある方は是非お読み下さいませ〜♬
モノローグ
私の名は喪黒福造。人呼んで笑ゥせぇるすまん。ただのセールスマンじゃございません。私のとり扱う品物はココロ、人間のココロでございます。お〜ほっほっほっほっほ〜。
この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり。そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。さぁて、今日のお客様は……。
和釜 杉世（わがま すぎよ）２５歳 工場勤務
古びた木造アパート。灯りの灯る２階の１室から、物がぶつかり割れる音や言い争う声が漏れて来る。
母・善子「もう杉世！良い加減にしてちょうだい❗️暴れたって何も良いことないでしょう⁉️やめなさいっ‼️」
杉世「私が不幸なのは、何もかもお母さんのせいよっ💢貧乏なのも私がブスなのもみんなお母さんのせい❗️私は親ガチャに外れたのよっ‼️」
母・善子「私が一生懸命ここまで杉世のことを育てたのに……。なんて言い草なの⁉️お母さんは本当に情けないわっ。」
杉世「私なんて生まれて来なきゃ良かったのよ❗️もうこんなお母さんと話してるだけ時間の無駄だわ💢もうこの家から出て行ってやる‼️」
母・善子「待ちなさい❗️杉世、杉世❗️」
母の声にも構わず、荷物を乱暴にスーツケースに詰め込む杉世。そして大きな音を立てて階段を下り、家から出て行く。ケンカの勢いで飛び出して来たものの、杉世に行く宛はない。駅前のベンチで荷物に寄りかかりながら、イラつく杉世。
杉世「シングルマザーでいつも家計はカツカツ。お母さんが離婚しなければこんなことにはならずに済んだのに❗️両親が揃っている家が本当に羨ましかったわ。それに私、お母さんに似てブスだし。私が不幸なのは何もかもあの母親のせいなのよ💢ああっ、イライラするわっ❗️」
そんな様子を遠くから見つめる喪黒。
所在なさげに夜のベンチに一人で座る杉世に、チンピラ風の２人組の男たちが声をかける。
男１「よ〜よ〜おねぇちゃん、ヒマだったら俺たちと付き合わない？面白いところに連れてってやるよ♬」
男２「どこにも行くとこねぇんだろ？ちょうどいいわ。俺らと一緒に行こうぜ〜」
杉世「えっ、イヤよ❗️うるさいわね、あっちに行ってよっ‼️」
怯える杉世。腕を引っ張って、どこかに連れて行こうとする男２人。
男1.2「そんなつれないこと言わないでさぁ、俺たち2人といいことしようぜぇ」
杉世「やだっ、離してっ❗️イヤ〜っ‼️」
そこに、チンピラ2人と杉世の間に割って入る喪黒。
喪黒「あんたたち、ワタシの娘に何するんですか？しつこく付きまとうとこうですよ。ど〜〜〜〜ん❗️」
男1.2「うわ〜〜〜〜っ」
その勢いで弾き飛ばされる2人。
喪黒「大丈夫ですか、杉世さん。お怪我はありませんでしたか？」
杉世「あ、ありがとうございます。大丈夫です……。で、でもどうして私の名を？」
喪黒「申し遅れました。私こう言う者です。」
名刺を差し出す喪黒。
喪黒「色々とお悩みのようですね。よかったらちょっとお話を聞かせていただけませんか？」
場面変わって、Ber魔の巢。カウンターの中ではマスターは、いつも通り眠そうな顔で皿を拭いている。カウンターに並んで座る杉世と喪黒。
杉世「お母さんとケンカして家を飛び出して来ちゃったんです。行くアテもないのに……。だけど私、お母さんと顔を突き合わせていると何だか妙にイライラしちゃって❗️だって、似たくなかったのにお母さんと顔がそっくりだし、その上不安定なパート勤務でシングルマザー。貧乏で小さい時は人形の一つも買ってもらえなかった。かわいい服も着られなかったし、こんなこと言っちゃダメなのは分かっているけど、親ガチャ失敗としか思えなくて。両親が揃っていて何不自由なく暮らしているクラスメイトが心底羨ましかった。私だけどうしてこんな親元に生まれたんだろう……って。」
喪黒「杉世さんの気持ちは分かりますよ。本当はお母さんが心から嫌いな訳じゃない。だけど、何だか反発があって素直になれないし、他の友だちが羨ましかったんでしょ？恵まれてる他の家に自分が生まれていたらって杉世さんが思うのも無理はないです。どうです？その杉世さんの希望をこの際叶えてみませんか？」
杉世「え？でもどうやって……？」
喪黒「杉世さんに新しい家族をご用意しましょう。そこで杉世さんはしばらく暮らしてみるのです。そうして気が済んだら、お母さんの居るあのアパートに戻るも良し、改めて一人暮らしを始めてみるも良し。いかがですか？やってみませんか？」
杉世「新しい家族ですって？私がそこでしばらく暮らしてみるんですか？」
喪黒「そうです。その暮らしの理想の家族との豊かな生活を満喫したら新しい家族とは別れて、普通の暮らしに戻るのです。しばらく顔を合わせなければ、お母さんに対する苛立ちも消えるでしょう。これまでを振り返るいい機会ですよ。どうです？やってみる気になりましたか？」
杉世「えっ、そうですね……。このままあの家に帰るのも何だか癪だし、しばらく新しい家族と暮らしてみるのもいいかしら？」
喪黒「それがいいですよ。お母さんには私から事情を話しておきます。荷物も持っていることだし、善は急げです。さっそくその新しい家族がいる家に参りましょう。あなたは恵まれた新しい家族とこれから暮らすのです。ただし、杉世さん、それには一つだけお約束してください。この生活は１ヶ月間だけ。それ以上はいられません。その間にこれまでの暮らしやお母さんとの関係を見つめ直して下さい。いいですか？この暮らしは長くても１ヶ月までですよ〜。」
杉世「は、はい……。」
喪黒を不安げに見つめる杉世。
喪黒「あなたは新しい家族と暮らしてこれまでの自分を振り返り、人生とお母さんとの関係をリセットするのです……。」
喪黒「ド〜〜ン‼️」
杉世「きゃ〜〜〜〜〜〜っ」
勢いで弾き飛ばされる杉世。
中編に続く
笑ゥせえるすまんのオリジナル動画はどれを見ても面白いです。こちらも是非ご覧下さいね。
https://www.youtube.com/watch?v=OLTRViBFCAI
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