市民活動をやっていた時の話/思い出すのもイヤな人 その2
建物保存の市民活動。まちづくりって言葉さえ当時はなかったかも知れない。市民活動やNPO団体が社会的に認知され、関わる人たちが大幅に増え始めていた頃のことだ。
自分たちの活動する地域のすぐ近くに、プロのカメラマンの方がいた。かつて東京でも活躍されていた方で、ご自分の名前を環した事務所も運営していた。仮に菅原哲夫さんとする。
その菅原哲夫さん、日大の写真学科を卒業後に一流のカメラマンのアシスタントとして修行しその後に独立した、と聞いた。カメラマンの助手として腕を磨き、独立するまで相当苦労して個人の写真事務所を構えたのだろうと想像する。
その菅原さん、写真のテーマとして古い建物も多数撮影していた。私たちの活動対象の古い建物の所在地からも近い場所に事務所を構えていて、その関係から私たちと一時期共に活動することになる。
その菅原さんが写真展を開催することになった。展示するのはこれまで撮影した歴史ある建物の写真パネルだった。私たちの団体もその写真展の設営撤去、機関誌での告知、開催中の受付や見学者の動員などかなりな部分で協力をした。そしてその場では団体の活動をアピールするチラシの配布等をした。
会場の設営や受付等、他の所に頼んだりしたらかなりな経費になったのではないかと思う。それを私たちはボランティアで協力した。
私たちの団体の協力もあって、菅原氏の写真展は盛況のうちに最終日を迎えた。その前後から、菅原氏は年に4回発行される機関誌に寄稿して下さったりと色々と協力をしてくれる関係になった。
ただこの菅原氏、師弟関係の厳しいプロカメラマンの世界で揉まれて来たせいかプライドがやたらと高くて気難しく、接するのにだいぶ難儀した。
連載寄稿してもらった、機関誌への書き下ろし原稿と掲載する写真を締め切り間際になってアレコレとわがままな注文をつける。「自分の原稿が機関誌のこの場所に掲載されるのは変だ。自分は一流のカメラマンなのだから、機関誌のトップ記事として1ページ目に大きく掲載されないのはおかしい!」というような事を言ってくる。
写真展のポスターのデザインや会場で配るパンフレットなどのデザインを、活動団体の機関誌のデザインを手がけていたデザイナー氏に(かなり金額を値切って)引き受けさせておいて細かく注文をつけて何度も手直しさせる。
こちらのちょっとした不手際や連絡ミスを大仰に騒ぎ立て、もう印刷するばかりになっていた機関誌から原稿を引き上げようかと思った、と脅しのような言い方をしたり。
彼のような実績もある一流のカメラマンと手を組んで一緒に活動するのは、私たちのような弱小市民活動団体にとってはかなりメリットが大きかったとは思う。ただその菅原氏の芸術家気質なのか、気難しさとその都度言うことがコロコロ変わったり、機嫌が悪いと電話口で怒鳴りつけられたりと直接やり取りをしていた自分にはストレスでしかなかった。
その他にも、仕事で他のデザイナーにデザイン案を100個以上出させてそれを全て気に入らなくてボツにしたとか、普段も何かと大威張りで男尊女卑的な発言を繰り返したりとか。この菅原氏は人間的にも大いに問題のある人だった。きっと上の立場の人にはヘコヘコし、ちょっとでも下の立場の人間には威張りまくると言う人だったんだろう。
自分が書き下ろしの原稿と写真を提供して(やって)いると言ういつも上から目線の発言と、協力を強要するような姿勢が最初から最後まで変わらず途中から「もうこの人と一緒にやっていくメリットはないのではないか」と思い始めた。
団体を共に立ち上げた仲間にも相談した上で、揉めることなくこの菅原氏と円満に縁を切る方法はないか、悩みながら考えた。
そして私は考えて、以下のような内容の手紙を彼に書いて出した。
こういった内容の手紙と預かっていた原稿と写真、菓子折か何かと一緒に送って、彼との関係はお終いにしたかと思う。(もうかなり昔のことなので細かいところは記憶が曖昧です)
この後、その菅原氏からは特にこちらへの苦情も接触も無かったかと思う。めんどくさい相手と縁を切れて私は心の底からセイセイした。
市民活動団体って、基本的には「来るもの拒まず去るもの追わず」で運営するしかなく、お金ない、人材ない、ノウハウもないの無い無い尽くしでなんとかやっていかなければならない。今思い出しても自分には手に負えない事ばかりでイヤになるのも当然だった。自分も未熟だったし、関係していた人にもイヤな思いをさせただろう。
でもその時を振り返ると自分にはキャパギリギリ目一杯だったし、色々上手く行かなかったことも多かったが「まずは合格。こんな程度で十分」と当時の自分に声をかけたい気分だ。まずは全てが過去の終わった話なので、めでたしめでたし、と思いたい。
「思い出すのもイヤな人 その3」はあるかな〜?
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