ある個人経営のこじんまりした温泉宿に見る経営戦略
みけ子が大好きでよく行く県北の温泉♨️。その温泉街には、大きくて立派で洗練されたサービスを売りにしたホテルもあれば、個人経営の小さな宿もある。湯量も豊富で温泉風情に溢れる山間の温泉地はとても魅力的だ。湯煙と街全体に硫黄の香りが漂う街は、ただ歩いているだけで楽しい。
自分のような昭和な人間には、そんな昔風情の温泉街は格好のリラックスの場で、世のしがらみを捨てて心から寛げる素敵な場所なのだ。
だけど、昭和の時代の「家族旅行なら温泉」「社員旅行も大人数で温泉宿に繰り出す」という時代ははるか昔になってしまった。これまで通り「温泉があり、立派な施設で豪華な食事が出る」と言うことだけで温泉が繁盛する時代ではなくなってしまったよね。その場に行っていかに満足感を得られるか、宿は今の時代様々な工夫をして生き残りを模索していると思う。
立派な施設のある有名な温泉地でさえも、今の時代生き残って行くのは大変だ。それなのに家族経営で、宿の施設も特に立派ではなくそれでも経営を工夫しながら生き残って、利用客の評判も上々の宿もある。その宿を仮にA旅館とする。
そのA旅館は温泉の中心街からは距離があるし、家族経営で施設も小規模だ。だけど料理が美味しく、温泉は源泉掛け流し。2種の自家源泉を所有していて、日帰り温泉の人気も上々なのだ。そのA旅館の人気の秘密はその「料理の美味しさと掛け流し自家源泉2本、さらに利用しやすい料金と手作り感のある暖かい接客」であるとみけ子は考えている。
夕食はそこに並ぶ料理のほぼ全てが宿の女将さんの手作りで、出来合いのパック入りの食品と見られる料理はほぼ並ばない。小鉢のおひたしや佃煮程度の料理でも手をかけて最初から作られたものなのだろう、と思われる優しく丁寧に調理された味なのだ。当然、天ぷらは熱々、冷たい料理は冷たいうちに供される。ここまで料理に手をかけるのは、出来そうで中々出来ないと思う。
立派な施設ではないが、建物内は掃除が行き届いておりチェックアウトの時は玄関を出てゲストの姿が見えなくなるまで見送ってくれる。食事用の大広間もなく、宿泊客は全て部屋食だ。だけど部屋の布団を敷いたりはご自分でどうぞ、と言うセルフなの。サービスに手を抜かない部分と省略してもOKなところのメリハリをつけている。
そしてこの宿の他の宿とまるで違う特徴として、最初から「この日からこの日までは休業日です」という日にちを1ヶ月のうちに数日、数ヶ月前から決めている。お正月ならば、1月4日以降の平日の連続した4〜5日を最初から予約を取らない日にちとして設定してあるのよ。限られた人数での運営で、働く人の休養や建物や設備のメンテナンスに充てる。もしかしたらこの時に、他の温泉宿に勉強を兼ねて出向いているのかも知れない。これは賢いやり方だと思うわ。
そして小さいことだけど、その宿の予約は電話でしか受け付けてない。今時ネットで予約できないのってどうなの?と思ったりもするが、聞くところによると、大手の予約サイトの宿側の利用手数料って結構な金額なのだという。小さな宿でリーズナブルな料金も売りにするならば、そういった部分の費用の圧縮も経営の知恵の一つであると思う。電話であれば、初めて利用するゲストに施設の建物のこととか丁寧に説明することが出来る。部屋にはエアコンはなく、夏場は部屋に扇風機が置いてあるだけだ。みけ子のような昔風情の宿を楽しんじゃう客ならいいが、今時の空調の効いた部屋しか耐えられない、という人には最初からそのことを言葉で説明するしかないと思う。
→民泊でゲストを受ける側からすると、宿泊の施設やルールについて細かく説明してあるのにそれを読み飛ばして「@@だから居心地が悪かった」とか「場所が##で騒音が気になった」とかあらかじめ説明してある事項にクレームをつけて評価を低く付けるとか💦説明ちゃんと読んで、理解してから予約してよ〜(T . T)と毎回思ってしまう。そういうことで評判が下がるのは、ホスト側からすると勘弁してよ〜、な訳。
少人数の家族経営で宿の建物もそれほど立派ではなく、だけどお正月やお盆などの繁忙期はあっという間に予約が埋まってしまう。地方の寂れた温泉地のそれも中心街からは離れていて、特に秘境でも絶景露天風呂でもなく。そんな小規模の宿の経営戦略、とも言えないけれど心からの暖かいおもてなしがある宿。あ、そしてみけ子は冬場に部屋にこたつがかかっているのが、高評価の大きな理由の一つなんだよね。
小さな温泉宿の居心地の良さと繁盛の秘訣を、その宿に行く度に考えるのだ。
*表題も文中の写真も、A旅館で撮影したものではありません。予約しようと思った時に混んでいるとイヤなので、おすすめの宿ですが名前は出しませんでした(笑)
↓厚みのある三角柱型のガラス花瓶です。この形は滅多に見かけません。生花はもちろん、ドライフラワーを飾っても似合いますね。