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大昔、パリの蚤の市で買った1個のグラス、不思議な巡り合わせで再びみけ子の手に⁉️その③

前回までの話はこちら↓


グラスを販売していたA店が品物を引き取りに行った場所はS市

みけ子の友だち@@さんがお店をたたんで戻ったご実家もS市

見覚えのある小さなグラスも引き取った商品の一つであったこと

この事実がみけ子の中で一つにつながり、確信になった。

この小さなグラス、みけ子が35年前にパリの蚤の市で一目惚れして買ったグラスだ‼️

そしてそのグラスは、友人の@@さんにプレゼントしたものなのだ‼️

@@さんとみけ子夫婦は結婚後も付き合いがあった。家具を買う必要があった時は真っ先に@@さんのお店Bに見に行ったし、週末買い物に出た時はB店に立ち寄って雑貨を選んで買ったりコーヒーをご馳走になったりした。

みけ子は過去の事はすっかり忘却の彼方になってしまう、記憶力に(も)問題のある人間だが、その点はダンナの方が細かい事を良く覚えていた。仙台市内の中心部にお店があったが、バブル景気で人々の購買意欲が増していた頃に、大きな店舗に移転してリニューアルオープンした事。その後の時代の変化で、お店の規模を縮小して元いた中心部に再オープンした事も。

みけ子はすぐには思い出せなくていたが、店名や関係者の名前や移転した地名までダンナは覚えていて、A店のオーナーに記憶にある限りの情報を伝えた。するとA店のオーナー氏は、目を丸くしてしばし絶句した。概ねその通りだが直接の接点がない@@さんの名前は思い出せないらしかった。するとその話を近くで聞いていたスタッフが、「その方@@さんで間違いないですよ❗️ご名刺頂きました。これです‼️」と取引きの時に1枚だけいただいて来たという、廃業したB店のオーナーの小さな名刺を出して来た。そこには確かに、みけ子夫婦と浅からぬご縁があった@@さんの名前があったのだ。バラバラだったパズルのピースがピタッとハマった。うわーこんな偶然ってある?😱

その場にいた全員が驚いてあっけに取られる中、A店のオーナーはくだんのその小さなグラスを引き取った時のことを詳しく話してくれた。@@さんは固定店舗は持たず、イベントなどがある時に地元のマルシェなどに参加してアンティークの販売をしていたらしかった。そしてそのグラス、廃業したB店の商品の中に混ざっていたのではなかった。オーナー個人の所有物として飾り棚の一角に花を挿して飾ってあり、個人の持ち物としてずっと大切にしていた物だったと。そしてまたそのグラスは、他の商品とは別の場所に置いてあったためその場に置き忘れ、途中で気がついてわざわざ取りに戻ったのだと言う。

何だか聞いていても、直ぐには現実のことには思えなかった。こんなすごい偶然があるなんて……。わずかな記憶から奇跡的に繋がったご縁だ。みけ子はその小さなグラスを買って帰ることにした。

20代から結婚して家族が増えるまで、ショップオーナーと客としての関係を超えての付き合いがあった@@さん。彼女が少し前に亡くなって、以前ご縁があったつながりからか、偶然亡くなった事実を知ることになった。長いこと大切に持っていてくれた品物が繋いでくれたご縁。きっと彼女が自分のことを知らせたくて、このグラスはそこにあったような気がしてならない。

過去に何度も大きな地震があったが、その地震で壊れることも傷付くこともなく、彼女がずっと大切に手元に置いていてくれたこと。そして遠く神奈川のお店を通じて、このお店に商品引き取り依頼があったこと。もしこの時半年ぶりにこのお店を訪ねてみようとは思わなかったら、お店を出ようとする時にこのグラスに気づかなければ。手軽な値段の手に取り易いモノだったし、みけ子が目にする前に他の人の手に渡っていたりすれば……。数々のほんのわずかな偶然が重なって、奇跡的にこのグラスは35年ぶりに自分の元に再び戻って来た。旧友との懐かしい思い出と共に。

その日は古い友人だった亡き彼女を偲んで、自分の元に戻って来たグラスで乾杯した。しばらく禁酒していたけれど、この日ばかりは特別だった。

パリのクリニャンクールで入手した、この小さなグラス。このグラスが旧友の思い出を蘇らせてくれたと思うと、なんだか気持ちの奥がほわっと温かくなる心持ちがしている。


なんだかものすごく長くなってしまいました。最後までお読みいただきありがとうございました。



↓台所や冬場にストーブの上に置いて映える、鮮やかなオレンジ色の琺瑯製のやかん。



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櫻井みけ子久美
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