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東京島嶼まぼろし散歩#27/伊豆諸島07
『リゾート・シーピロス』は、夕食したいレストランまで連れて行ってくれる。これはありがたい。知らない街を夜にウロウロ歩くのはしんどいからね。空港までピックアップの方に、その旨お願いしておいた。
chez Queux(シェ・クー)までは、すぐだった。
「Chez Queuxってお店。モントリオールにあったわよね」
「あ・あったな。旧市街だ。魚が得意なフレンチだったな」
「八丈島のChez Queuxもそうなのかな・・」
「たのしみね」
シェフがお一人で賄っている店だった。東京から食材を求めて越してきたとおっしゃってた。夜はおまかせのみで4500円だった。ワインはまずシャンパンをお願いした。
「一人でこなしているんだから、メンドくさいこと言っちゃダメよ」と嫁さんが小声で言った。
はいはい。
シャンパンに手を付けながら、おもむろに話始めた。
「国家は必ず4つの要素を備えている。独自領土・独自軍隊・独自法律・独自貨幣だ。この何れかを他国に預けているのは植民地だ、自立国家ではない。軍はその国の要所に置かれる。防衛にあたって重要に地点にだ」
「ふうん。では・・伊豆諸島は・・とつながるわけ?それともシャンパニュー地方の生い立ちにはいるわけ?」
「伊豆諸島です」
「はいはい。・・で?」
「伊豆諸島には明治以降、まとまった軍備が置かれなかったんだ。もともと軍隊ってぇものは日本にはなかったからな。サムライと雑兵はいても軍人なる者が日本に持ち込まれたのは。明治に入ってからだ。しかしその軍人が伊豆/小笠原諸島には簡易なものしか整備されなかったんだ」
「どうして?」
「そもそも軍というのは、外から国を守るものだ。幕末明治初頭、小笠原/伊豆諸島は各国の捕鯨船の寄港地であり、船を降りた人々が居留地を作ったりしてたとこだ。それでも整備された軍隊を明治政府は配置していない」
「だから、どうして」
「ただ単に重要視していなかったということだろう。防衛庁防衛研修所戦史室の出したレポート(まえがき)にも『本土の対上陸作戦が切実化したのは、戦局の焦点が本土近くの中部太平洋に移った昭和十九(1944)年二月以降といえよう』とある。つまり伊豆諸島は東京市から派遣された警察が『内を守るため』に居ただけで、国家として『伊豆・小笠原諸島を外から守る』という意志を持っていなかったんだと思うよ。」
「でも第二次世界大戦の時、硫黄島は激戦区になったんでしょ?」
「ん。そもそも根本的な部分で日本国には『日本国内が敵国に襲われる』という発想がなかったんだよ。侵攻は"する"もので"される"かもしれないとは露も考えていなかった。・・たしかに満州事変以降日本の領地獲得は欧米からの強い反感をかった。しかしだからと言って欧米が日本へ攻めてくるとは露とも考えてなかったんだ。シナのように植民地化されると思ってなかったんだよ。日米モシ戦ウバは雑誌ネタとして相当書かれていたが、すべて攻めていく形で攻められる形ではない。・・ペリーの脅迫と英軍戦艦の攻撃から100年経っていないのにな。きれいに日本は自分たちが軍備的経済的後進国だったことを忘れている」
「そうね・・そういえばそうね」
「日本国が・・もしかすると島伝いで連合軍が攻めてくるんじゃないの?と思ったのは1943年5月のアッツ島玉砕以降だ。その年の秋から日本軍は南東方面での敵との決戦に変更し「絶対国防圏」を決めたんだよ。1943年9月30日の御前会議だ。「今後採ルヘキ戦争指導ノ大綱」に「帝国戦争遂行上太平洋及印度洋方面ニ於テ絶対確保スヘキ要域ヲ千島、小笠原、内南洋(中西部)及西部「ニューギニア」「スンダ」「ビルマ」ヲ含ム圏域トス」とした」
「ああ。ようやく小笠原の名前が出てくるのね」
「しかし・・敗戦は続いた。」
「物量の差?」
「という人が多い。実態は軍の構造の問題だ。日本軍は第一次大戦の時から軍の組織が変わらなかった。実は日本兵は19世紀までのやり方で、現地で食料を調達する装備のままだっだ。日本軍は、ロジスティックを駆使して戦闘以外のことで兵士が疲弊しない形をとらなかった。逆に連合軍の兵士が戦地で、食べ物を調達できないで餓死するなんてことはあり得なかったんだよ」
「それって物量の差じゃないの?」
「もし物量が少ないなら、その量に有った軍隊を作るべきだ。それが出来なかった。そこに決定的な敗因がある。近代化しないまま旧態依然なガラパゴス化した軍隊組織が敗因の原因だ。それが自国兵を餓死に至らしめた理由だ。自国兵を餓死に追い込んだ国家は20世紀に入って日本だけだ。いまも同じようにガラパゴス化してしまった政治組織が跋扈している。いま一番危惧すべきはそれだな」
「なんか違う話になっちゃったわね。だんだんディナーに相応しくない話になっちゃったわね」
「すいません」
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