堀留日本橋まぼろし散歩#05
元旦はみんな集まってママの洋風お雑煮を!そしてそのあとはペランシュラのおせちを頂いた。TVはyoutubeでTimesSquareのカウントダウン。雨だぁ~マンハッタンは。孫たちはもう寝たのかな・・と話しながら、おせちを頂いた。
店の前は、非中華系の観光客がずいぶん通る。新富町築地はいまインバウンド向けのホテルだらけだからね。ウチのまえはインバウンドストリートなんですよ。そんな観光客が時折ドアを開けて入ってくる。「いちいち断わるのナンだから、いっそ入れちまえば?」と僕が言うと、ママに「誰がそのための支度をすると思ってるのよ」と言われちゃった。すいません。で、やっぱりオープンは2日からということで・・でもあんまり人が多いんで、そのうち「昨日お休みにして今日やったほうがよかったかしら・・」と弱音を吐いていた。ははは♪年末に僕が言ってたとおりになった。
でも「ほら、言ったとおりだろ」とは、もちろん言いませんよ。正月から逆鱗には触れません。ゼレンスキーじゃあるまいし。
そのうち「今日の散歩は?」とママが言いだした。
「湯島天神」僕が即座に言うと「初詣に行くの?あら珍しい」と返された。
「いや境内にある泉鏡花の筆塚へ行きたいんだ。ここンとこ、泉鏡花にハマってるから・・」
「筆塚?って金色夜叉??」
「いや、金色夜叉は尾崎紅葉だ。婦人図だよ。熱海と湯島じゃ、そうとう場所が離れてる」
「別れろ切れろというのは芸者の時にいうものよってお話でしょ?あなたの好きな都都逸のCDで演ってるお話」
「ん。それは三亀松師匠のものだ。三亀松っあンの声色な」
「湯島の筆塚は昭和十七年に、里見惇氏、久保田万太郎氏、岩田藤七によって建てられた石碑なんだ。」
「あら、全員あなたのアイドルじゃないの」と言って笑った。
「ん。三亀松っあンもな。」
・・というわけで、人心地ついたところで、湯島に出た。
これが大失敗だった。初詣の群衆でとんでもないことになっていたんだ。周辺道路は全部閉鎖され、湯島坂の通りに実盛坂あたりまで参詣人が群を為して並んでいた。あのお~僕が行きたいのは梅園の方なンですが~と言いたいとこだが無理だね。早々にあきらめた。それで明神下中通りを中山道まで歩いて、アキバのオタク通りへ出た。しばらくぶりの神田電気街裏通りである。
ところが・・こっちも驚いた。電気屋以外はなにもないはずの通りなのに飲食がいっぱい出来ているのだ。こいつにはメイド喫茶がいっぱい出来た時くらいびっくりした。
ムカシのオタク通りは、ママも僕に付き合わされて何度も来ているから、相当びっくりしたようだ。
「それにしてもなんであんなにケバーブ屋さんがあるの?ラーメン屋さんはわかるけど、なんでケバーブなの?」
「一時パキスタン人がアブないもの持って闊歩してたからな、その引きずりかもしれないな」まあ、そのくらいのことしか言えない。
「・・それと、立ちんぼの違法ソフトが入ったCDを売る中国人・・いないわね」
「それは、わりと前からだ。何度にもわたっていっせい検挙されたからな。さすがにいなくなった」
「どんどん、姿をかえてるのね・・」
「たしかに・・すごいもンだ。まあ、このまま手ぶらで・・"いぬかわ"ってわけにいかないから、あきばおーでも覗くか」
「なに?"いぬかわ"って」とママが聞いてきた。
「"いぬかわ"はよくねぇからなって、佃の伯父さんがよく言ってたよ。"いぬかわ"ってぇのは「犬の川端歩き」のことさ。なにも拾わずウロウロ歩くだけってぇことだ」
というわけで・・あきばおーで要りもしない小物を買って帰宅した。