不在という名の酒アブサン#01
フランス語で、absentアブサンは「不在」という意味にもなる。
「不在」という名の酒absintheは、ニガヨモギを中心に作る。これがまったくもって痛烈な幻覚作用を持つ酒で、飲めば酩酊と幻覚のダブルパンチをくらったという。もちろん今のアブサンに幻覚性はない。昔は有った。その幻覚性にロートレックやゴッホといった芸術家たちがハマった話は有名だ。
この「不在」という名の酒、欧米では20世紀初頭に製造禁止になっている。ところがだね。日本には有ったんですよ。サントリーがヘルメスリキュールのシリーズとして、ずっと販売していたんです。
僕が最初に飲んだアブサンも、このサントリー製のアブサンだった。大学生の頃。ゴールデン街の奥の薄汚いバーで・・だった。
僕の大学はキャンパスが鶴巻温泉の先だったんで、遊び場は新宿なことが多かった。
先ずTAROさんを覗く。それからDIG/DUGを覗く。植草先生がいらっしゃれば、とりあえずそこでスタック。先生が帰られた後はゴールデン街へ直行。というコースだった。
そして、ゴールデン街の薄汚いバーでは、いつもアブサンを飲んでいた。煙草はジタンだっだ。なんとまあ20代そこそこのガキんちょがスノッブな! 今考えると赤面モンなンだけど、その頃は大真面目で、友人たちと薄暗い酒場の隅で紫煙に塗れながら、レヴィ・ストロースを語り、ミッシェル・ビュトールを語り、チャーリーパーカーを語った・・その横にはいつもアブサンの瓶があった。
辻邦正が訳した「アブサン・聖なる酒の幻」を読みながら、そんな「灰色の・・しかし明るい灰色の青春時代」を思い出した。
僕には、この"不在"というの名の酒が、陰鬱な"ふり"をした青春のシンボルだったな。
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無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました