夫婦で歩くシャンパニュー歴史散歩/1-8-2/発砲しないシャンパンワインについて02
https://www.youtube.com/watch?v=b2g1BGJ_VLA
「そうよね、シャンパンが生まれて300年くらいだから。シャンパニューにはもっともっと長いワインの歴史が有ったはずよね。シャンパンの勢いに負けて、そんなときのことをきれいに忘れていたわ」
「たしかに・・目の前の大きなパワーが有れば、それがすべてだと思っちまうもんだ。でもこうやって発砲していないシャンパニューワインを手にすると、目線は一転するだろ?」
「そうね、ほんとにそうね。でも・・買いにくい?わけでしょ?}
「ん・・たしかに。でも面白いだろ?」
「でもなぜピノノワールとピノムニエばかりなの?」
「昔はそんなことなかった。ブルゴーニュがピノ・ノワールになったのはブルゴーニュ公国初代公王だったフィリップ・ル・アルディの勅令だったろ?」
「ええ、作りやすくて丈夫なガメイ種に追われてピノノワールの畑が教会のモノばかりになっちゃったときでしょ?」
「ピノは高貴な葡萄だ。たしかに通年ごとに変性種が出やすいし取り扱いの難しい葡萄だったが、公王の命令でピノノワールにすることで、金持ちたちだけのワインとして大成功をしたんだよ。
シャンパニューはその二番目のドジョウを狙ったんだ。安いワインはパリ周辺に掃いて捨てるほどあった。一方ブロゴーニュという高級路線の先例がある。シャンパニューの所有者たちは、中央の金持ちが多かった。資本投下は出来た。それなんで、いわゆる差別化を狙ったんだろうな。だからそんなに昔の話じゃない」
「じゃ、最初はピノとシャルドネばかりだったの?ガメイ?」
「いや。当初はスタンダードにアロブロゲス族Les Allobrogesの葡萄だったと思うよ。」
「アロブロゲス族ってローヌ川にシラー種を持ち込んだひとたちでしょ?」
「そうだ。よく憶えてるね。葡萄は温暖地でしか育たない。だからガリア人たちの土地じゃ育たなかった。だからローマ人は、ガリア人/ケルト人たち相手の交易には、通貨としてワインを使っていたんだ」
「そのことはローヌへ行ったとき・・シャーヌフデパブとジゴンダスへ行ったときに話していたわね。でもなるべく搬送経費がかからないように葡萄畑がどんどんローヌ川を北上していた・・という話」
「ん。そのときに利用されたのが、東方から移住してきたアロブロゲス族が持ち込んだアロプロジカという葡萄だった。これがシラー種の原型になった。ちなみにシラーという名前はトルコのシランという地域を指す。シランから来た葡萄という意味だ。
ローマ軍人皇帝だったプロブス帝はガリアにおける産業を、今までの王から一転して奨励した人だった。
彼の奨励で、アロプロジカはローヌ川に沿ってどんどん北へ葡萄生産地が上がっていったんだ」
「イルドフランスの葡萄もそうだった・・ということ」
「ん。もちろんロアールの下流ナントNantes周辺には、既にスペインから持ち込まれた寒冷耐用種は持ち込まれていたがな、イルドフランスでの主体はプロブス帝の指令で持ち込まれた葡萄だろうな。
ところが西ローマ帝国はあっけなく滅びてしまった」
「ローマ人は?撤収しちやったの?」
「全部ではない。それとローマ人たちの混血ガロロマーナがいた。彼らがそのまま葡萄畑を継いだんだよ」
「人は一夜の旅人・・」
「そう・・葡萄畑は1000年も続く。携わる人々は次々と代わる。・・しかし停滞は数百年に渡って続いた。それが大きく変わったのは、フランク族にペー王朝が台頭してフランス王国となってからだ。それとやはり・・フランドル地方が急速に栄えたことが大きいと、僕は思うな。1000年代に入って欧州大陸北東部そのものが交易によって大きく発展して行ったんだよ。それに相まってワイン製造業も大きく発展したわけだ」
ロジェ・ディオンを引用する。
『活発に商業活動を営み、あらゆる職業を牛耳っていたこれらの都市の有力者たちは、裕福になるにしたがって、これみよがしにワインを飲むことに満足を見出す上流階級としての自尊心を身につけるようになっていった。十一世紀後半、サン・トメールでは当時すでに《ブルゲンシス》と呼ばれていた人々が、自分たちの利益を守るため、《ポタティオネス》 (文字通りには「飲む集まり」の意)と呼ばれる会合を定期的に開くギルドと称される組合を結成しており、そのギルドの規定には組合の長が確保しなければならない調達物資の筆頭にワインが挙げられていた。』
「なるほど~シャンパニューも2000年のワインの歴史を持つているわけね。シャンパンだけに惑わされてはダメということなわけね」
そうです。そのために・・今夜はあえてCoteaux Champenois Bouzy Rouge 2009をディナーの席に選びました♪
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました