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銀座幻散歩#03
さて。再々度4丁目の交差点に戻る。服部時計店(和光)の表示はまだPXになっている。Post Exchangeというのは連合軍兵士用の商品/飲食などを売る店のこと。「TOKYO PX」という看板を出していた。ただやはり手狭だったので、松屋にもおなじPXを出している。商品的な棲み分け・利用する兵士の階級による棲み分けをしていたのか?知りたくて嗅ぎまわったことがあるんだけど、結局判らなかった。服部時計店の社史をみてもPX時代のことは殆ど語られていない。松坂屋もそうなんだけどね、地下に米兵向けのキャバレーがあったことは(いずれも7年ちかく)語られていない。汚点と思ってるのかもしれない。
三丁目の角にあるのが教文館ビル。キリスト教系の本に力を入れてる本屋だ。此処はアントニン・レーモンドに設計されたビル。聖路加と同じね。地下にレストランがあって、そこに富士アイスが入っていた。
「銀座の富士アイス」と云えば永井荷風で彼の日記の中にしばしばその名前が出てくる。
ついでに荷風の「断腸亭日乗(昭和8年11月25日)」引用しちゃう。
「十一月廿五日。今日も好く晴れたり。読書の外為すことなし。日の暮るゝを侯ちて銀座に往き、不二アイス屋にて夕餉を食して後紅茶をキユウベルに喫す。酒泉萬本山田樋田杉野竹下の諸子在り。酒泉君知る所の某令嬢と千疋屋に入り盆栽及び熱帯産小魚を観る。小魚の価貴きもの八九拾円、廉なるものも五六円を下らず。菓子屋青柳にて名物の金鍔を焼くを見、之を購ひ三個拾銭也きゆうぺるに還る。杉野氏其の知る所の墺国の婦人を紹介す。維也納府の人。年三十歳許り仏語また英語を善す。」
和光と教文館の間に、木村屋・御木本がある。木村屋にも喫茶部があった。このふたつに挟まれて月ヶ瀬があったが、今は山野楽器に替わっている。山野楽器はもともと有楽町に有ったが戦災で焼け落ちている。
ちなみに添付した写真、ひとつは松屋にあったPX
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