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星と風と海流の民#06/カロリン海の白い航跡

https://www.youtube.com/watch?v=VOY7vFQrXnY

コロニア飛行場はデケティック島を縦断するように在る。島の大半が飛行場だ。トシさんのボートはその小さな艀に停まっていた。ボートは意外なほど係留されていた。僕が乗り込むとトシさんは真っ直ぐ南東へボートを走らせた。島はすぐに小さな影になってしまった。右側に陸影が続いた。僕がマングローブに覆われた陸を見つめていると、トシさんが言った。
「ナニムウィンサ半島Nanimwinsapwだ。あそこに日本軍のトーチカが残っている。ジャングルに包まれていて飛行機から見え難い工夫がされていた。日本軍の拠点があったところだ。地下堂窟と塹壕に守られていた。あとで見に行くか?」
「・・いや。いい」
「そうか・・サイゴンが墜ちたのは先月末だったな。悪いな、余計なことを言った」
「気にするな。たしかにポナペは敗戦まで日本の統治国だったもんな。やはりその戦跡を見る人たちはいるだろうな」
「ああ。意外と多い。ここは米軍から大規模な攻撃を受けなかった。だから朽ち果ててはいるが、今でも戦時中の建物は無数に残っているんだ」
トシさんは、振り返るようにデケティック島を見た。
「デケティック島を挟んで、ポナペの日本軍基地は、東のナニムウィンサ半島Nanimwinsapwと西のソケス半島Sokehsに有った。ソケスにあるソケス山Sokehs Mountainの麓に司令部が有った」
「なるほどな。空港のある島と半島は海路で繋がっていたのか?」
「ああ。今もそのままだ。それでも橋を作るという話はある。今度お前が来るときは、きっとそれが出来上がっているぜ」
「そうか。少しずつ便利になるわけだな」
「ん。この島へダイビングに来る人が増える。ロッジは大忙しになる。お前もどうだ?越してくるか?気のいい嫁さんを紹介するぜ」トシさんは哄笑した。

ボートは右に陸影を見ながら南へ南へと下りた。ときおり左側に島の影が見えた。横切るときに「あれがタカウー島Takaieuだ。俺のロッジはすぐそこだ」と教えてくれた。
トシさんのロッジは海岸沿いに有った。ボートを停めると、彼は「さて行くか」と言いながら浅瀬に「よいしょ」という言葉で降りた。一瞬ビックリしたが、僕も一緒にボートを降りた。海は膝くらいまでだった。
「わりと岩場だから気を付けろよ。時々、浜別に着く前に躓いて転ぶ客がいる。だからいつも嫁さんは包帯持ってロッジで待ってるんだ」
そのとき、トシさんの若い夫人はロッジで待っていなかった。浜辺に大きく手を広げながら待っていた。そして浜辺に上がる前に飛びつくように僕をハグした。
「マイク!よかったね。無事だったのね!!」彼女がキスが僕の両頬に飛び回った。
その熱いキスは、逝ってしまった沢山の友だちのために僕が受けた・・そんな気がした。

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勝鬨美樹
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました