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夫婦で歩くブルゴーニュ歴史散歩1-7/サンマルタンの野望

https://www.youtube.com/watch?v=lMUJ_2IezIQ

La Table du Squareを出て、そのままボーヌ村の城壁に沿って歩いた。
「トゥールからサンマルタンが軍団を連れてブルゴーニュに入ったのは紀元372年から377年だった」
「どうしてサンマルタンはブルゴーニュに布教へでたの?」
「ん。その理由は大事だ。でもその話の前にサンマルタンの話をしよう。
おそらく・・サンマルタンはアグリッパ街道Lyon-Blougne線を利用してCavillonumに入った。資料はない。しかし間違いなくそのルートだと僕は思う。トゥールからブルゴーニュまでは400km以上ある。林道を進むのは至難だ。多数の僧侶と兵士を連れての利用は必ずローマ街道を使っただろうと思う。むしろローマ街道が有ったからこそ、サンマルタンはブルゴーニューを落とす気になったんだろうと思うな」
「・・・落とす、ねえ」
「サンマルタンは間違いなくLyon-Blougne線を使った。この街道を利用すれば相当な隊列を引き連れたとして整備されたローマ街道を通れば10日も有れば走破しただろう。Cavillonumは、いまのシャロン・シュル・ソーヌChalon-sur-Saôneだ。リヨンの北で一番大きな交易地だった。ボーヌ村は北30kmにある。デジョンまでは北80kmだ。
サンマルタンの教団(軍団)はCavillonumを拠点として北へ布教した。兵站はアグリッパ街道Lyon-Blougne線を通してトゥールとの間に確保した。教団は福音を知らせると共に、ガリアとローマの神々の神殿や祭壇を次々と破壊し、財宝のすべてを自分たちのものにした。見返りは農耕と工作機械についての最新技術だ。こうしてサンマルタンの教団によって、ブルゴーニュの生産技術は一挙に上がったんだ」
「古い神を捨てて、新しい神の福音・・なわけね」
「ん。御利益のない神様は浸透しない。サンマルタンは極めて明快な御利益と奇跡をもたらす教団(軍団)だったわけさ。
たとえばだよ・・いつ葡萄を植えるのか、どうやって害虫から守るのか?いつ収穫すればいいのか?どんな器具を使えば簡単に作業できるのか?教団が、キリスト教帰依した人々に与えた知識は、まさに土地の人々には魔法らように見えたに違いない。すべて教団がローマから引き継いだ知識だ」
「なるほどねぇ、ひとたまりもなくブルゴーニュの人たちはキリスト教徒になっていったわけね」
「サンマルタンは拠点となる地域に幾つものサンマルタンの名前を付した教区を作った。そして破壊した神殿や祭壇の資材を作って『アウレリアヌス城壁Mur d’Aurélien』を作ったと言われてる。それが今のボーヌの城壁の原型だ」

ゆっくりと城壁沿いを歩いていると、見かけるのは観光客ではなく地元の人たちばかりだった。
「観光客はこちらには出ないのね」嫁さんが言った。
犬を散歩させている人と何度もすれ違った。
目の前右側にChateau de Meursaltの看板が見えた。
「シャトー・ムルソー?ムルソーじゃなくて此処に有るの?」
Château de Meursault(Rue Charles Giraud, 21190 Meursault)
http://www.chateau-meursault.com/
「いやいや、農園はもっと南西だ。文字通りムルソーにある。そばに素敵な公園があるよ。
ここは営業所兼配送センターだな。ボーヌの周辺には、こんな感じで有名どこの営業所兼配送センターがいっぱいある」
「・・で。ボーヌにサンマルタンは拠点を移したのね」
「そうだ。兵站の受取先であるCavillonumまで30kmだしな。ボーヌの西には北へ走るアグリッパ街道がある。平定のため城塞としては最適だったんだろう。資料を見ると、このサンマルタンのカストルムは約1,000人収容することができたという。相当の大きな砦だ。西側がフォーブール・サン・マルタンle faubourg Saint-Martin、南はフォーブール・ブルトニエールle Faubourg Bretonnièreが有った。その時の残滓がボーヌの村の城壁から対角線上に出ているフォーブール・ブルトニエール通りRue du Faubourg Bretonnièreに名前として残っている・・それがこの道だ」
僕は立ち止まって、右前にゆっくりS字に走る道を指した。
遠くに丘が見える。

「それを言うためにずっと城壁の道を歩いてきたの?}
「いや・・このまま観光センターMaison des Climatsへ行きたいんだ。もう少し先だ。
ほら。フォーブール・ブルトニエール通りはゆっくりと丘を昇っているだろ?」
「・・わからない。むこうに森が見えるだけ」
「昇っているんだ。この道をまっすぐと行くとポマールPommard/ヴォルネVolnay/モンテリMonthelie/ムルソーMeursaultがあるんだ。そして小さいがサンマルタンの教会Church of St. Martinがある」
「なるほどね。じゃ、さっさと観光センターへ行きましょ」
「はい」


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました