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第二ブレストンウッズ体制について

先の大戦以前は、国家間の取引は金の現物を中間に挟んで行われていました。互いの国の貨幣を保持してこを利用する場合もありましたが、大口の場合はどうしても金現物を利用していたのです。

しかし大戦は、戦場となった国々を徹底的に疲弊させました。生産拠点が破壊され尽くしたからです。先の大戦参加国のなかで無傷だったのはアメリカだけでした。それが戦後アメリカの一人勝ちをもたらした大きな理由だったと言えましょう。その過程の中で、金現物の代替え物としてドルを利用するという協定が結ばれました。それがブレストンウッズ協定です。

ブレトンウッズ協定でドルは1オンス=35ドルと同等としました。なぜそれが可能だったか? アメリカが当時一番金現物を有している国だったからです。この協定によって、各国中央銀行は金現物をストックする必要がなく、より取り扱いが楽な貨幣へ移管できるようになったわけです。

しかしこの協定には大きな弱点がありました。それは、アメリカが信用できるか?という弱点です。
つまり、この協定が成り立つにはアメリカが保有している金現物以上のドルは刷らない・・という前提条件が無ければなりません。・・ほぼ20年間、世界の中央銀行は疑念を持ちながらもそれをアクションに移しませんでした。しかし、朝鮮戦争/ベトナム戦争と、得るものの少ない「防共」という御旗だけにアメリカが富を消費し始めると、各国は「はたしてアメリカが協定をまもっているのか?」強く疑念を抱くようになりました。

とば口を切ったのはドゴールでした。ドゴールは筋金入りの古典的金本位主義者です(笑)彼の財務アドバイザーだったジャック・リュエフもです。ドゴールはベトナムから手を引いた後、1960年代後半からフランス中央銀行に対して、保有しているドル準備高の80%を金に換えるように命じました。となる・・と他欧州の中央銀行もこれに追随したのです。彼らがため込んでいたドルが猛烈な勢いで金現物に交換されてしまい、アメリカは保有している金現物を膨大な量、失ってしまったのです。
これが、リチャード・ニクソン大統領が1971年の秋に「ドルは金現物と兌換しない。ドルはアメリカという国家の信用に裏付けられた不換紙幣とする」と宣言した理由です。金為替本位制を放棄した瞬間です。こうして、たった一夜で20年間続いたブレストンウッズ協定は藻屑になって消えました。

つまりですね。ドルは「切り下げられた」のではないのです。ドルが金為替本位制を放棄したため、各国中央銀行との一年にわたる会議を続け「プラザ合意」によって、帰着点を模索したのです。いまその「プラザ合意」が反故になろうとしているのです。
アメリカは、アメリカ軍産ネオコンとそれを支える政策を維持するために、FRBが不換紙幣であるドルを希釈し続けて(パウエルの金利誘導はその反動)きました。なぜアメリカ人が購買力を失ったか?理由はこの貨幣の赤字化のせいです。
ほぼ80年間、連邦政府は、世界がドルを保有するか、市場が受け入れないものはFRBがマネタイズする、つまりFRBが自ら政府の債務を買い、財務省に渡す金を印刷するとわかっていたので、望むだけの支出をすることができたのです。つまり自由に世界の警察として「防共」を御旗として世界へ派兵できたわけです。
連邦政府の使ったお金はFRBが自らのバランスシートでその債務を保有することになります。数字を見てみると・・2008年のFRBのバランスシートは0.880兆ドル弱であった。現在では8兆816億ドルです。彼らは嘘偽りなくデータを公開してます。

そのお金はどこに回ったか? 半分は軍事企業に、そしてもう半分は医療産業に・・です。そういえば最近、巨大なフェスティバルがありましたね。コロナパーティというやつ。これは医療産業に猛烈な利益を与える巨大フェスティバルでした。リンドン・ジョンソンの「偉大なる社会」による福祉国家は、今やしっかりと根を張り、絶えず拡大しています。アメリカ人皆国民保険に至りそうな勢いです。
そしてアメリカ軍は世界の隅々にまで介入しています。実は他国の軍事介入は、アメリカでは意外に国民の同意が取りやすい。原則的にアメリカのファイティングはベビーフェイスとヒールの戦いだから、ヒーローとヴィラン話には熱狂します。

しかしですね、そんなマーベル/DCシュチェーションが成立するのは、世界が不換紙幣である(でしかない)ドルを受け入れているからです。限界はあります。ブレストンウッズ協定に限界があったように。
FRBが、基準通貨であるという矜持を失えば・・あるいは失っていると見做されれば・・時代は変わります。いまその瞬間にあるということです。

オバマ・クリントン・バイデン利権を守るための、ルーブルのSWIFTからの締め出しは、あまりにも驕り昂ぶりだったと言えましょう。結果として、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)上海協力機構(SCO)ユーラシア経済連合に、国際貿易の決済手段としてドルに代わる商品ベースの為替媒体を開発するためのワーキンググループ結成をもたらしました。いまこれにサウジアラビアなど(アメリカ軍の傘の下で利権を守られていた国々)も参加し始めている。

僕はこの大きな時代のトレンドに、トランプはいとも易々と乗るとみています。彼のすごさは、他の政治屋と違って引きずっている金づるが付いていないことです。したがって、だれかを儲けさせてやる必要がない。これは政治に係るものとして素晴らしい力です。
実はですね、いま成立するであろうと思われる新しい兌換貨幣は、おそらく資源と金を背景としたものになります。つまり資源国でもあるアメリカにとって、充分承認できる兌換体制なんです。トランプは間違いなく過去の借金をチャラにする・・そしてリセットした上で新しい貨幣システムを構築するだろうとみてます。これに乗り切れない企業/国家は雲散します。

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勝鬨美樹
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました