だから私は、猫になりたい。
作:みけれこ
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〇猫になりたがりな僕等シリーズ
〈第2弾〉
●比率…♂︎0:♀︎2 【性別変更不可×】
●時間…約30分
※こちらの作品は、ほんのり同性愛(GL)を思わせる表現があるので、苦手な方はご注意ください。
《登場人物》
♀︎種島 紗季(たねしま さき):社会人、26歳。近所の洋菓子店で働いている。幼い頃から雪とはずっと過ごしている、幼馴染み。ぼんやりとしたところがある雪の事を放っておけない。
♀︎瀬戸内 雪(せとうち ゆき):社会人、26歳。近所の病院で医療事務をしている。優しく穏やかな性格。紗季の事が大好き。(モノローグ多め)
▽名前のみ登場する人物
♂︎黒(くろ)…雪と同じマンションで隣の部屋に住む男子高校生。体調不良で倒れかけていたところを、雪に助けられたのを切っ掛けに、雪とはちょっとしたお茶仲間のようになっている。
▽以下から本文▽
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雪(M):紗季(さき)ちゃんは、私にとってヒーローだ。私にとって大きな光そのもの。ただただ純粋に憧れてた。大好きだった。それだけで良かったはずなのに。……どうして私は、この気持ちを持ってしまったのだろう。
雪:あっ!紗季ちゃん!お疲れ様ー!
紗季:雪(ゆき)!待っててくれたの?ごめん、結構待たせたでしょ。
雪:全然待ってないよ!待ったとしても、待つの好きだし、問題ない!
紗季:いっつも、あんたそう言うけどさぁ。もー…。(軽く笑いながら)お疲れ。先にどっか入ってくれてて良かったのに。
雪:やーだよ。紗季ちゃんと久しぶりに、ご飯行けるんだよ?少しでも一緒に居たいじゃん!
紗季:あーはいはい、そうですかー。まったく。ありがとうね。
雪:いいえ!いつものお店でいい?
紗季:そーだね!思いっきり飲んで食べて、その後はカラオケでも行くか!!
雪:やったー!そうしよそうしよ!
----------行きつけの飲み屋。賑わう店内。
雪:はい!飲み物きたよー!
紗季:ありがとー。それじゃあ…!せーの!
雪&紗季:かんぱーーい!
紗季:(思い切りビールを飲む)ぷっはーー!
雪:はー!美味しいねー!紗季ちゃん、相変わらずいい飲みっぷり!
紗季:いやーーもー!久しぶりに飲んだー!最っ高!幸せーーー!
雪:ふふ。最近益々忙しそうだもんね。お休みもなかなか取れてなさそうだし。体とか、大丈夫?
紗季:いや、だからさ、あんたは私の母親かって。それ毎日、LINEでも聞いてくるじゃん。しかも、ほぼほぼ毎日お店にも来て、ケーキ買ってってくれてるんだし。その度に顔、見てるじゃん?実の母親よりも、私と会ってるよー雪。
雪:そうだけどっ、気になっちゃうの!紗季ちゃんが元気ないと、私は嫌なんですー。
紗季:はいはーい、ありがとねー。お陰様で紗季ちゃんはとっても元気ですよー。
雪:それは良かったでーす!
紗季:あーあ。いつになったら、私離れできるのかな、雪は。
雪:え?紗季ちゃんが、私の事が『嫌』になったら、だよ?
紗季:まーたそんな事言って。もう何年あんたと一緒に居ると思ってんの。今更あんたのこと、嫌になるとか、ある訳無いでしょー。
雪:んんー?紗季ちゃん、それって惚気?雪のこと、だーいすきって事?ふふふー。(嬉しそうに)……あ、因みにね、4歳くらいからずっと一緒にいるから、もう22年くらいになるね!
紗季:もうそんなに一緒にいるんだ、私達。お互い結婚もせずに、やっばいねー。
雪:私には紗季ちゃんが居るから、何もやっばい事なんてないけどねー。
紗季:はいはい、そーですね。雪には私が居ますねー。……そういえばこの間、雪のお母さんに、『あの子、紗季ちゃん紗季ちゃんばっかり言ってて、大丈夫かしら。』って、私がなんか相談を受けたんだけど?
雪:あらま、それはそれは。なんかごめんね。うちのお母さんがー。
紗季:なんとなーーく、私が申し訳ない気持ちになったわ。
雪:別に紗季ちゃんが、そんな気持ちになる必要はないよー。
紗季:なんとなくよ、なんとなく!はぁ………。最近いい人いないの?あんた結構モテるくせに、断るし、付き合ったのかと思えば長続きはしないし。
雪:だって、紗季ちゃんの話しても、つまらなそうな顔をされたり、無視したり、なんかよく分からない嫉妬?とか、されるし。面倒くさい。
紗季:それはあんたが悪いって。……そういえば昔、デートに私も付き添わせないと行かないとか言って、泣かせた男も居たよね。あれはほんと、不憫でならなかった。男が。
雪:紗季ちゃんよりいい男が居ないのが、悪いと思います!
紗季:私は女だよ、男じゃない。分かってますかー?
雪:分かってるよ!私は!紗季ちゃんが!!だーーーいすきなの!
紗季:はぁ……。少しは私離れしなさい。
雪:だから、紗季ちゃんが私のこと嫌になればだよ。それかさ、紗季ちゃんが私より大切な人を見つけたら、離れるよ。
紗季:………私にとって、あんたは1番大事な人っていう自信はあるのね。
雪:え、だって、そうでしょ??
紗季:……そのどや顔は腹立つからやめなさい。(でこぴん)
雪:いだっ
紗季:まったく…。こうなったら、私が責任もって雪にいい人見つけるしかないなー。
雪:え、やだ。そんなの必要ない。
紗季:私はあんたのお母さんから、あんな相談、二度と受けたくない!
雪:だーかーらー、気にしなくていいってば。時がきたら、私もその内素敵な人?と出会えるよ、きっと。…はーい、ほらほら、美味しい焼き鳥きましたよー。
紗季:時がきたらって、一体いつよ。あんたにその気が無いなら、いつまで経ってもそのままでしょーが。あーー焼き鳥、うまい!!
雪:だから、ずっと言ってるでしょ。紗季ちゃんが私の事が、嫌になったら、か。紗季ちゃんに私より大切な人ができたらって。
紗季:あんたにとって、私はなんなんだ!
雪:だーーーーーーいすきな人!
紗季:あーーもうっ!話が進まん!
雪:だからもう、この話は終わり!はーい!生ビールもう一丁!
紗季:……うあ、だめだ。…何か、久しぶりに飲んでるからか、結構酔ってきたかも。
雪:あらあら、お水もありますよー。
紗季:ありがとうー。……ほんと、結構面倒見もよくて、いい女なんだからさーー、ゆきぃーーー。
雪:紗季ちゃんに、いい女って言われるのは嬉しいけどーー。…もーー、今日は何だかしつこいなー?さては、うちのお母さんに、何か入れ知恵されたなー?その手の話はこれ以上何も進まないから、もう終わりだよー。
紗季:(溜息)……んーーー。…それも無いとは言わないけど、私だって純粋にあんたの幸せを願ってるんだよ。
雪:…………あ、そうだ。この前買っていったさ、紗季ちゃんのお勧めケーキ!あれね、黒(くろ)くんと一緒に食べたんだけど、とっても美味しかったよ!黒くんも喜んでたし!流石、紗季ちゃんのお勧め!人気なのも分かったよー!
紗季:……え、……黒?……黒って、あんたが拾った高校生の?え、なに、あんた、まだその子と繋がりあんの?
雪:拾ったって、そんな怪しい言い方しないでよ。体調悪そうにしてたから、声掛けただけですー。…まあ、それから割と頻繁にね、お茶してるの。よく遊びに来てくれるからさ。
紗季:なーにそれ。毎回、ケーキ2つ買っていくから、可笑しいとは思ってたけど!そういう事か!もー、だから年頃の男を、簡単に部屋に入れるなって言ってるじゃん。その気も無いのに、そんなうら若き青年を弄ぶ(もてあそぶ)なんて…酷い女だねー。
雪:弄んでなんていないってば。だってさ、私と黒くんって10歳くらい歳の差あるんだよ?あっちからしたら私なんておばちゃんだし…。私は、歳の離れた弟ができたみたいで、ちょっと嬉しいのー。お茶仲間みたいな。紗季ちゃんとこのケーキも一緒に食べれるし。
紗季:…あんたはそう言ってても、あっちはどうなんだろうね?……ほんとーに、何もされてないわけ?されてないにしても、何も言われたりも無いの?
雪:…何もされてないし、してないし!何も言われてはーーーーーー…………いない、よ。
紗季:なんか今、変な間があったけど。
雪:ち、違う!なんも無い!ほんとに!何も言われてもいません!黒くんは可愛い弟的な存在!あっちもそれ以上のことは何も無い!!です!
紗季:相手の気持ちまで言い切るのはどうかと思うけどねー。
雪:もーーー!紗季ちゃんの、意地悪!
雪(M):私は小さな頃から、紗季ちゃんの事が大好きだ。幼い頃、友達作りが苦手で、いつも隅っこに1人で居た私を、きらきらの素敵な笑顔で引っ張り込んでくれたのが紗季ちゃん。あの時の彼女は誰よりも輝いて見えて、ヒーローみたいだった。あの時の光景を今でもずっと鮮明に覚えている。紗季ちゃんは私のヒーロー。
それからずっと一緒に居た。誰よりも傍に居たくて、誰よりも紗季ちゃんの事を知っていたくて。ずっとずっとずーーーーっと傍に居た。ただただ、純粋に大好きだった。でも、ある時に気がついてしまった。紗季ちゃんへの『大好き』、が、純粋な『大好き』だけじゃないって事に。それは、紗季ちゃんに初めての恋人ができた時だった。
街で紗季ちゃんと当時の恋人が楽しげにしている姿を見かけた時、私には見せたことの無い顔をした彼女がそこには居て。とても悔しくて悲しくて寂しくて。すっごく嫌な気持ちになった。私が知らない紗季ちゃんを、あの人は知っている。…彼女の隣を歩くその人を心底妬ましく思った。その時、気がついてしまった。私は、紗季ちゃんの全てが欲しいんだなって。
自分でも、少し恐怖を感じる程の強い気持ち。これが恋なのか愛なのか、……ただの独占欲なのか。今もよく分からない。分からないけれど、彼女の中の1番の特別は私だけであればいいのにって思う。……でも私も、紗季ちゃんの1番の幸せを願っている。だから、紗季ちゃんにこの気持ちを押し付けることはしたくない。ちょっとの我儘と、大好きの気持ちだけいつも投げて、それ以上の気持ちは仕舞い込む。
だって、この距離感が1番幸せなんだって、私も分かってるから。……紗季ちゃんは、私のこの気持ちを望んではいないって分かってるから。
----------場所を変え、夜の公園。
紗季:あーーーやばい、飲みすぎたーー…。頭くらくらしてる。
雪:だから辞めときなって止めたのにー。もー。……どうするー?カラオケは辞めときますかー?
紗季:はぁ………久しぶりだったから、ペース配分間違えたわー…。
雪:もー…。せっかく、もう少し一緒にいられると思ったのに。紗季ちゃんの馬鹿ー。
紗季:あーーー……ごめんって。うーー気持ち悪い……。
雪:まったくもー。仕方ないなぁ。(紗季の背中を擦りながら)ま、紗季ちゃんが楽しそうだったから、良いけどさ。……また今度、今日の分を上乗せで、沢山私に付き合ってもらうからね。
紗季:はは……その時は、覚悟しておく…。……あーーー…風が気持ちいい。
雪:……少し落ち着くまで、ここで休憩しますかー。
紗季:んー。あんたは先帰りなー?私は別に大丈夫だから。
雪:私が!紗季ちゃんを置いて!!さっさと帰るとでも?!
紗季:…だよねー。分かってて言ったわ。圧がすごい圧が。
雪:ほんっと!そうやって私を弄んで!紗季ちゃんこそひっどい女だよねー。
紗季:はいはい、そーですねー。私は酷い女ですよー。
雪:でも、そんな紗季ちゃんも大好きな私は、どうしようも無い女ですよー。
紗季:本当にそれなーーー。
雪:………ねぇ、紗季ちゃん。
紗季:なーによ。
雪:…あれ、本当に辞めてね。
紗季:あれってどれ。
雪:さっき言ってたやつ。
紗季:さっき?……何言ったけ。
雪:『私が責任もって、雪にいい人見つけなきゃ』ってやつ。
紗季:……ああ、それか。辞めってって、どういうこと?
雪:私、紗季ちゃんにそんな事されるの、いっちばん嫌だから。本当にそういうの要らないからね。……私のタイミングで、私は私の幸せを見つけていくから。だから、何も心配しなくていいからね。
紗季:……………別に、無理強いする気なんて無いよ。雪の自由だって分かってるし。ただ、雪のお母さんも心配はしてたから、ちょっと思っただけ。あんたが嫌な事は、私はしないよ。
雪:……うん。ありがとう、紗季ちゃん。
紗季:ま、そんな焦っても仕方ないことだしねー。それぞれのペースだよね、恋愛なんて。タイミングよ、タイミングー。
雪:…………紗季ちゃんは?
紗季:んー?
雪:…紗季ちゃんは、最近はいないの?…なんか、いい人、とか、気になる人、とか。
紗季:……あーーー…。……雪にあんだけ言っといて難だけど、……居ないわ。
雪:…………ふーん。じゃあ、紗季ちゃんの隣は、まだ暫く私の場所だね!
紗季:場所って…。はぁーあ。はいはい、そうですね。
雪:ふふ、紗季ちゃん、大好き!
紗季:知ってる。
雪:へへ。………あ!猫!
紗季:んー?あ、ほんとだ。珍しい、白猫じゃん。野良かな。
雪:めっちゃこっち見てるよ。こっち来たいのかな。
紗季:……ふっ、なんか、雪みたい。
雪:え?私?
紗季:そう。……小さい頃さ、あんたいっつも1人で隅っこに居たじゃん。でも、こっちの仲に入りたそうにじーーーっと寂しそうな顔して見てくるの。あの猫みたいに。
雪:え、バレてたの?!
紗季:あんな見てたら、嫌でも気がつくわ。でもあんたさ、凄い人見知りだったから、声掛けても逃げるし。なのにすっごい見てくるから、何か面白くて。周りの子達は、どうしたらいいんだろうって、困惑してたよ。お菓子で釣るとか言ってた子もいたな。
雪:お菓子……それは釣られてたかもしれない。
紗季:はは、確かにね。……でさ、焦れったくなって、私が強引に引っ張り込んでみたら、案外簡単に入って来たから、何だこの子って。面白いなーって益々思ったんだよね。
雪:………そうだったんだ。…あ、猫、行っちゃった。
紗季:はは。あんたもさ、あんだけ警戒心強い感じ出してたんだから、普通、猫みたいに逃げるんじゃないの?って思ったんだけど。まさか、こんな腐れ縁になるとは、思わなかったなぁ。
雪:……あの時の紗季ちゃんは、ヒーローだったもん。
紗季:あんたそれ、ずっと言ってるよね。よく分からないけど。
雪:よく分からなくたっていいよ。紗季ちゃんは私のヒーローだから。あの日から、一人ぼっちの雪は救われたんだよ。
紗季:ふーん。なら、いいけど。
雪:もしさ、あの時の私が、さっきの猫みたいに逃げてたら、紗季ちゃんはどうしてた?
紗季:んーー。なんか逃げたくせに、どーせまたこっち見てきそうだし。見てくる限りは追いかけたかなー。
雪:結局、紗季ちゃんに捕まる運命だったって事だ!
紗季:運命って。……ま、そうかもね。あんたと私は、こうなる運命だったのかもね。
雪:赤い糸的な?!
紗季:ちょん切るか。それ。
雪:酷い!!!
紗季:ふふ、嘘だよ。…さて、大分酔いも落ち着いてきたし。そろそろ帰るかー。
雪:………うん。
紗季:なーに、寂しそうな顔してんの。またすぐ会えるんだから、いいじゃん。お店にも来てくれるんでしょ?
雪:行くよー。……行くけど、さ。お互い忙しくて、こうやってゆっくり話せる時間も、最近はなかなか取れないから。やっぱり寂しいじゃん。
紗季:まぁ、そーだねー。でも、忙しい事は有難い事だよねー。
雪:それはそうだけど。……私は、もっと紗季ちゃんと一緒に居たいから、ちょっと辛い。
紗季:いつも顔合わせてるのに?
雪:うん。昔みたいに、ずっと紗季ちゃんと一緒に居られたらいいのに。
紗季:それは無理だねー。私達はもう大人だから。
雪:……………(大きなため息)……あーーーー!!!私!紗季ちゃんの猫になりたいなーーー!!!
紗季:は?猫?何、急に。てか、急に大きな声出さないでよ。近所迷惑だし!
雪:紗季ちゃんの猫になったら、ずーーーーーっと紗季ちゃんの傍に居られるじゃん!お仕事の時は1人で留守番は寂しいけど、でも今よりはきっと傍に居られる!
紗季:なに言ってんの?あんたも酔ってる?
雪:酔ってない!……今よりも、ずっとずっと傍に居て、それで、紗季ちゃんが幸せになる姿をずっと見てる。ずっと…傍で。
紗季:…別に、猫にならなくてもいいじゃん。
雪:……そうかもしれないけど。でも、人間の雪のままじゃ、1人になっちゃうから。
紗季:……1人?
雪:……猫になって、紗季ちゃんに沢山愛されて、そして紗季ちゃんの幸せを誰よりも近くで見てたい。それで………。
紗季:…………それで?
雪:……あーーーーー、と。……それ、で。何だろ。
紗季:はー?ちょっと!やっぱりあんたも酔ってるでしょ!
雪:……あははっ、そうかも!
紗季:てゆうか、雪は猫っていうより、犬じゃない?性格的に。懐くまでは猫って感じはあったけど。
雪:そうかなー?んーー、でも私は猫になりたいな。だってほら、猫ってさ。
紗季:うん?
雪:……猫って、大好きなご主人に、死に姿見せないように隠れるって言うし。
紗季:…………だから、猫になりたいって言うの?
雪:あ、いや!別にそういう訳じゃないけど!
紗季:………何なのほんと。やっぱりあんた結構酔ってるでしょ!
雪:酔ってない、酔ってない!あーもう!上手く言えないけど!とにかく紗季ちゃんの傍にずっと居たいって話!
紗季:よく分からないけど、今でもあんたは私の傍にずっと居るんだから、今のままでもいいでしょ!
雪:んーっ!まぁっっそうだね!!あ、でもさ、でもさ!紗季ちゃんはさ、猫になった私の事も愛してくれる?傍に置いてくれる?
紗季:……何なの、さっきから。……………猫でも犬でも大切にするし、……私は今の雪も大切だよ。
雪:…………そっか。ふふ、嬉しいな。ありがとう紗季ちゃん。
紗季:何なの、ほんと…。あんたもさっさと帰って、水しっかり飲みな。
雪:だから酔ってないってば。
紗季:いや、酔ってるって。さっきから言動がおかしいって。まぁ、いつもおかしいけど。
雪:もー大丈夫だってば。っていうか、最後の一言酷くない?もーー!ほら、帰ろ帰ろ!
雪(M):独り占めにしたいとか、すべてが欲しいとか、そんな事はいつも思う。けれど、それを望めばきっと苦しめてしまうのだろうから。だから望まない。
私だって、紗季ちゃんの幸せを1番願ってる。
貴方が幸せを掴んだ時。その時私は…共に喜べる私でありたい。貴方が大切だと言ってくれる私でありたい。
そう思うのに、私はきっと素直にそれを受け止められない。
だから…私は貴方の猫になって、貴方の幸せを誰よりも傍で見ていたい。そしてその幸せな貴方を見届けて、貴方の愛を沢山受けて。最期は貴方の前から静かに消えて居なくなりたい。気がついたら溶けて消えている、雪のように。
きっとそうすれば貴方の1番の特別には、私が居続けられるだろうから。
なんて…。
雪:……私って、やっぱり…酷い女だな。
紗季:え?何?なんか言った?
雪:何も言ってないよー。
紗季:んーー??
雪:紗季ちゃん酔っ払いだなー。
紗季:雪もでしょー。
雪:私は酔ってないってばー。……ねぇねぇ、紗季ちゃん。
紗季:なーに。
雪:大好きだよ。
紗季:……はいはい。
[END]
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【作品掲載HP】
『^. .^{とある猫の言葉.•♬』
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