猫田による猫田のための、ラムネ。
ラムネを飲むなら瓶に限る。
限らなくてもいいけれど。
ラムネ味じゃなくって、
ラムネを瓶で飲む動作が好きだから。
味じゃなくって動作が好きなこと。
そういうものはいくつかある。
例えばたばこを吸う動作が好き。
箱から一本取り出すところから、
火を押し消して手放すところまで。
基本的にたばこを吸わないのだけれど、
同席する知り合いがたばこを吸っている、
その光景と動作を見るのが好き。
興味を惹かれるものへ、
視線はしっかりと持っていかれてしまう。
気を悪くしないでください。
嫌に思ってるんじゃなくて、
むしろ好きだから見てしまうのだから。
たばこを吸う動作は、
見ているだけでかなり満足する。
けれどラムネはそうはいかない。
あれは自分で飲んでこそ、
心躍るというか、楽しさが噴き出すというものだ。
開けるのに失敗したラムネと一緒。
ビー玉を押し入れて栓を開ける。
炭酸の通り道をふさがないように、
ビー玉をくぼみに乗せてそうっと飲む。
ペットボトルより幾分か小さな飲み口から、
しゅわっとした飲み物が流れてくる。
それらすべて全部エンタメだ。
ラムネという飲み物そのものも好き。
まあ好きだけれど正直言ってしまうなら、
牛乳が多めのコーヒー牛乳の方がもっと好き。
淹れたてのあったかいコーヒーの方がもっと好き。
にもかかわらず時々ラムネが飲みたくもなるのは、
ラムネを飲むという行為そのものの、
ささやかなエンターテインメント性ゆえなのだろうな。
いつかビー玉をくぼみに引っ掛けずに飲む方法も、
会得したいけれどいつになるのやら。