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"行動できない恐怖心"への処方箋ーー『生きのびるための事務』
年末年始の友人との会話から気づいた“締め切り”の難しさ
皆さん、こんにちは。映画監督の三澤です。
「風像(ふうぞう)」という映像制作会社の代表をしています。年末年始ということで、地元の友人などに会われる機会が多い方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私自身も最近、会社勤めの友人と会ったとき、「自分で締め切りを決めながら仕事を進めるのは大変でしょ?」と言われ、「本当にそうなんだよね」と共感しました。
肌感覚として、自営業やフリーランスで仕事をしている人にとって、一番の難所は自分で締め切りを設定することだと思います。しかも、私はそれが特に得意ではない(笑)。その友人が思い出させてくれたのは、大学時代のエピソードです。提出期日を翌日に控えたレポートが手付かずの状態で「いつになったらやり始めるのか、自分を試ているんだ」と言い放ったらしく、自分でも「いかにも言いそうだな…」という感じですが、全く記憶にはありません(苦笑)
結局、そのときは明朝になってもほとんど進まず、何とか間に合わせたらしいのですが…。
今、改めてこの「行動できない」状態の背後を注視すると、そこには、恐怖心があるのではないかと思うんです。つまり、「いざ始めても納得の形に仕上がらないかもしれない」という不安。そして、その原因は「どのくらい時間がかかるか見積もりが立てられていない」ことにあるのではないでしょうか。
自営業・フリーランスの難しさと“恐怖心”
クライアントワークでは締め切りや要件が比較的はっきりしている場合が多いかもしれません。しかし、自営業やフリーランスの場合は、それに加えて「自分の事業を成長させるための活動」を進めなければなりません。ここでは、自分自身で締め切りを決めてプロジェクトを動かしていく必要があります。でも、漠然とした恐怖心を抱えたままだと、日々の忙しさに紛れて後回しにしてしまうことも多い。
この「怖さ」にどう打ち勝つかが、フリーランスや自営業者にとって大きな課題だと思っています。そんな折に思い出したのが、今年読んでとても感銘を受けた一冊の本。今日はその“処方箋”となる本をご紹介したいと思います。
恐怖心に効く“処方箋”:『生きのびるための事務』坂口恭平 原作/道草晴子=漫画
私がおすすめしたいのは、坂口恭平さんと道草晴子さんが書かれた『生きのびるための事務』という漫画形式の本です。坂口恭平さんは小説家、建築家、音楽家など多方面で活躍されている方で、この本では「ジム」というイマジナリーフレンド(空想の存在)が、著者の大学時代の自分に「スケジュールとお金の管理」について説いていく物語が描かれています。
「スケジュールとお金の管理」の方法として
いまの生活をノートに書き出す
10年後の1日を、起きる時間や飲むコーヒーの値段まで徹底的に具体的に書く
そこで生まれる“ギャップ”を埋めるための「段取り」を考える
というように、夢や将来像を「ふわっと」語るのではなく、数値や時間を入れて徹底的にリアルにすることがポイント。そうすることで、自分が抱いている漠然とした不安、曖昧な期待を少しずつ解消していけるわけです。
具体的に書くことで見える“ギャップ”と行動プラン
年末年始、目標を立てる方も多いと思いますが、理想像をただ掲げるのではなく、実際の1日を細かく書き出すことが非常に有効です。書き出したときに気づくのが、いまの生活との明確な“ギャップ”。そこが見えてくると、「このギャップを埋めるにはどういう段取りが必要か?」という視点を持ちやすくなります。
「段取り」は本書でもキーワードになっていて、つまり「行動できない恐怖心」や「いつまでたっても先延ばしになる不安」は、事前の具体的な見積もりと計画(段取り)によって大幅に緩和されるというわけです。
まとめ
年始に新しい目標を立てるのはワクワクする反面、うまく動き出せないまま時間が過ぎてしまうこともあります。大学時代の私のように「ギリギリまで何もしないで、自分がいつ動き出すか試している」状態が長く続くと、結局は締め切りに追われて満足できない成果で終わる…なんてことにもなりかねません。
恐怖心の正体は「どのくらい時間がかかるか分からない」という見積もりの甘さ
坂口恭平さんの『生きのびるための事務』は、その恐怖心を克服する具体的な“処方箋”を提示してくれる
自営業・フリーランスに限らず、多くの人が「今」と「未来」のギャップに悩んでいます。もし「どうしても先延ばし体質が治らない」「自分で締め切りを守れない」と困っているなら、ぜひこの本を手に取ってみてはいかがでしょうか。具体的な行動に落とし込むヒントが、たくさん得られるはずです。