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日加贔屓球団の両エースに共通点を見つけた話

こんにちは。
今回のタイトルは、『日加贔屓球団の両エースに共通点を見つけた話』
とある2人の先発投手を比較していきます。よろしくお願いします。


はじめに

日加の贔屓球団ということですが、日はもちろん、千葉ロッテマリーンズ。加はカナダのトロント・ブルージェイズです。MLB唯一のカナダ所在チームで現在は菊池雄星や、昨季大谷とHR王を争ったゲレーロJr.などが在籍しています。
そして本noteの主役は、佐々木朗希ケビン・ゴーズマンです。

佐々木朗希とケビン・ゴーズマン

佐々木朗希については深く説明するまでもないでしょう。3年目の今季は完全試合を達成し、NPBで最も注目された選手の1人となりました。

対して、ケビン・ゴーズマン”Kevin Gausman”は、今季からブルージェイズに加入した右の先発投手。今季は31先発で174.2イニングを投げ12勝10敗、防御率3.35という成績でした。

ちなみに、ブルージェイズは唯一のカナダ球団ということで、FA選手(特にアメリカ国籍)から敬遠されがちという事情があります。同じMLBでありながら国外移籍となるため不便が多いのでしょう。
しかし、彼はアメリカ国籍でありながら、自身がかつてプロデビューしたトロントという地に愛着を持ち、他球団より契約条件の劣るブルージェイズを選んでくれたナイスガイです。

そういえば、佐々木朗希も本拠地と縁の深い選手でした。

2人の共通点

1.成績

まずは、成績面から2人の投球スタイルを見ていきます。
なお、佐々木は規定未達となってしまったため今季パ・リーグ20先発以上の投手(21人)を、ゴーズマンについてはア・リーグ規定到達者(22人)を比較対象としています。

()内は順位

佐々木朗希と言えば、まずは奪三振でしょう。4/10には13人連続奪三振と1試合19奪三振という記録を達成。今季は規定未達でありながら、リーグ2位となる173個もの三振を奪いました。K%は脅威の35.31%で、リーグ唯一の30%越えです。
ゴーズマンも奪三振能力に秀でた投手です。2021シーズンから2年連続で200奪三振を上回り、今季のK%は28.28%でリーグ5位。(なお、1位は大谷翔平さんです。)

続いてゴーズマンに視点を向けると、今季の投球の大きな特徴として与四球の少なさが挙げられます。今季の与四球数は先発回数(31)より少ない28個。BB%にすると3.86%で、これはリーグで2番目に低い数字です。過去2シーズンはともに6%台だったのが、移籍を機にリーグトップクラスまで改善されました。
佐々木もやはり与四球は少なく、今季のBB%は4.69%。佐々木の上位に加藤貴之(1.95%)、石川歩(3.97%)、田中将大(4.49%)といわゆる”技巧派”が並んでいるのを考えると、佐々木の異常性が際立ちます。

奪三振、与四球ときたら、次はもちろん被本塁打。佐々木のHR/9は0.49で、被弾の少なさもやはりリーグトップクラス。特に前半戦は、13度先発して交流戦で打たれた2本のみと圧倒的な投球をしていました。
ゴーズマンのHR/9は0.77で、佐々木と同じくリーグ6位。しかも驚くべきことに、前半戦で3本、後半戦で12本という偏り方まで似ています。

ここまで挙げた奪三振・与四死球・被本塁打を用いた指標として、FIPというものがあります。(詳細は以下リンク参照)

簡単に言えば、味方の守備関係なく、投手vs打者のマッチアップにおける失点率を表したものです。防御率同様に低いほど投手能力の高さを表し、先発よりもリリーフの方が低くなる傾向にあります。
個人的にFIPは投手能力を評価する指標として半ば懐疑的ですが、投手の投球スタイルを測る一要素としては有効だと考えています。そのFIPで見ると佐々木は1.39、ゴーズマンは2.38でともにリーグトップ。
よく支配力の高い先発投手に対して、「クローザーが9イニング投げてる」なんて形容をしますが、正にその通りの数値を残しています。「事故が起こりづらい投手」とも言えるでしょうか。

ここまでだと、「贔屓のエースがさー、三振取れて良いピッチャーでさー」と、これで終わってしまいます。本題は次の章です。

2.球種構成

2人の最大の共通点は、球種構成です。佐々木もゴーズマンも4シームとスプリットが投球全体の8割以上を占めるツーピッチ。しかも、右打者に対してスライダーが増えるところまで酷似しています。

日本では一般的に投げられているフォーク・スプリット。MLBで成功する日本人投手には欠かせない球種ですが、MLB全体で見ると数は決して多くありません。向こうの投手からすると”空振りを取る球”と言えば、スライダー・カーブ系の曲がり球が主流となります。
(しかし、最近は大谷の活躍でMLBでもスプリットが注目を集めているらしく、吉井”新監督”のブログでも取り上げられています。)


そんなMLBの中で、ゴーズマンは傑出したスプリットの使い手です。今季の全205奪三振のうち、129個をこの球種で奪いました。
今季彼が投じたスプリットのWhiff%は44.4%、Put Away%は25.1%で全体2位。(*100打席以上)
決め球としていかに優れたスプリットであるかが伝わるかと思います。

・Whiff%:(空振り数/スイング数)
→打者がスイングを試みたうち、空振りになる確率

・Put Away%:(三振数/2ストライク時の投球数)
→2ストライクから投げた時、三振を奪う確率

さらに、Run Valueも全スプリットの中で2番目の-14。雑に言えば、1年間スプリットを投げ続けることで14点防いだということになります。

レベルも文化も全く異なる2つのリーグで、4シームとスプリットを駆使して三振の山を築く投手がいる。ということに強い共通性を感じ、本noteを書きあげた次第です。

2人の相違点、そこから見える課題

ここまで共通点ばかり取り上げてきましたが、最後に決定的な相違点を挙げましょう。被打率です。
今季の佐々木は.177。規定未達ではありますが、リーグで最も打たれなかった先発投手と言えるでしょう。
対してゴーズマンは.270、これはリーグで4番目に高い数字です。ともにリーグトップのFIPでありながら、防御率に大きな乖離があるのもこの被打率が影響しています。

この被打率の主な要因として考えられるのが、球速。160km/h超えが代名詞の佐々木に対して、ゴーズマンの4シームはそれほど速くありません。今季は平均95.0マイル、最速98.9マイル。MLBの球速水準を加味したら、NPBにおける佐々木のような速球派とは言えないでしょう。

4シームとスプリット、両輪揃ってこそのツーピッチです。
今季の佐々木は、前半戦では4シームの平均球速が159.2km/hでしたが、マメの影響もあって後半戦は156.4km/hに低下。後半戦は直球を痛打される場面が増えました。
ゴーズマンを教訓とするならば、高出力の4シームはそのままに、年間通してその出力を維持するスタミナが今後の課題となるでしょう。

ただし、これはあくまで ”現状の” 投球スタイルにおける課題です。
先述した4シームの平均球速ですが、年間で見れば昨季から6.1km/hも向上させました。昨季はチェンジアップ、今季はカーブとスライダーを新たに披露。後半戦は4シームを補うようにスライダーの割合が増えていきました。
ファンの想像を超える進化を遂げている選手です。将来的には、今と全く別の “佐々木朗希” でMLBを席巻しているかもしれません。

終わりに

最後までお読みいただきありがとうございました。もしよかったら、ブルージェイズ推してください。

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