「鹿鳴館の夜」〜洋風御懐石の夕べ〜 案内と食器、メニューで見るレストランクレッセントの歴史(7)(8)(9)
秋深く、菊花も美しく咲き乱れるこの頃、皆様方には益々御清祥のことと御慶申し上げます。クレッセントハウスの年中行事「鹿鳴館の夜」も回を重ね、今年は第7回を迎えることとなりました。
近年フランスでは「ムニュ・デギュスタシオン」という調理形式が注目されております。これは日本料理の影響を多分に受け、合せて19世紀末の数多いメニューを現代人の嗜好に会うようにアレンジして少量づつ味わう、いわば、フランス風の懐石料理とも言えるものであります。
当館は昨年からこの晩餐会をより愉しくするため、単に明治のメニューに囚われず、本当の美味しさを追求した日本的洋食の研究を続けてまいりましたが、今年は前記「ムニュ・デギュスタシオン」を洋風懐石と考えてメニューを構成すると共に、当館所蔵の19世紀和洋食器を取り合わせて、独特の雰囲気を楽しんでいただこうと思っております。
何卒、明治の香高き芝公園に皆様御揃いでご来駕下さり、美しい秋の夜を存分にお楽しみ下さいます様、ご案内申し上げます。
昭和56年10月
石黒孝次郎
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7、8回目あたりから、案内状もかたが出来てきて、前の年と内容が同じ年も出てきます。第8回目は、第7回目と内容が同じで、サブタイトルだけ『古き良き時代の第晩餐会』としているのですが、サブタイトルがつく様になったのも小さな変化。案内状やメニューもデザインが同じになっています。
9回目では、サブタイトル等は同じですが、『第9回目 鹿鳴館の夜 案内状」の上に、「日本ダイナースクラブ会員の皆様へ』と、特定の人たちに向けての内容になっているのが特長でした。
第9回目(昭和58年10月)の案内状内容は以下の通り。
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日本ダイナースクラブ会員の皆様へ
第9回目 鹿鳴館の夜 ご案内 〜古き良き時代の大晩餐会〜
秋深く、菊花も美しく咲き乱れるこの頃、皆様方には益々御清祥のことと御慶申し上げます。クレッセントハウスの年中行事「鹿鳴館の夜」も回を重ね、今年は第7回を迎えることとなりました。
私たちは常々現代にマッチする調理の最新技術と、嗜好にフィットする献立を研究する側、現代から見れば古典共言える19世紀メニューの収集と、これらについての研究を通して、より良い今日の料理を創造する様努力しております。
そこで本年は、ベル・エポックと言われた19世期末から今世紀初頭にかけて、南フランスの美食天国として有名なパイヨンヌにあるグランド・ホテルで、1899年10月11日に行われた大晩餐会のメニューが偶然手に入りましたので、これを基調にして献立を組み立てて見ました。
明治の香高き芝公園に皆様御揃いでご来駕くださり、独特の雰囲気の中でb別記のメニューを御賞味くださって、美しい秋の夜を存分にお楽しみ下さいます様館員一同お待ち申し上げております。
昭和58年10月 石黒孝次郎
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偶然手に入った1899年のメニューを元に組み立てられた献立。料理は創造。これもまた、祖父らしい遊び心と理想の料理店の形。ただ高級料理を楽しめるだけでなく、組み立てられた造形物の様に、全てが調和して、遊び心のエッセンスを盛り込む。今の時代に、これだけの要素を取り入れて、それが調和している場所が日本のどこかにあれば、それは、本当に、守られるべき場所だと思います。コロナで老舗がどんどん閉店を余儀なくされている中、この資料をまとめながら、切に願うばかりです。