のら猫から家族 夢を叶えた猫の思い出1-2
『古い冷蔵庫の上2』
朝から雨。猫は濡れたくないので出歩かない。
ご飯にありつけないことも多いので体力温存、
雨の当たらない場所を選んでじっとしている。
でもボクはお腹が空いたので冷蔵庫を目指すことにした。
隣の敷地には今は使われていない大きな倉庫がある。
倉庫と言っても屋根や壁にトタンを貼り付けただけで、
すでにあちこち剥がれ落ちている。
それでも雨風や直射日光を避けられるので、
ボクらの通り道や遊び場には持ってこいの場所だ。
錆びて広がった壁と地面の隙間から数メートル先の冷蔵庫を見上げた。
雨はシトシト降っていて冷蔵庫上には何も置かれていない。
がっかりしたけど、せっかく来たのだから少しだけその場で待ってみた。
冷蔵庫の向こうから傘を差した人間が近づいてきた。
カリカリの入った器を持っている。
冷蔵庫の上は水たまりができていたので、上がり台の上に置いた。
上がり台は軒下に入り込んでいるので雨が当たらず乾いている。
「ご飯だよー」と声をかけてから戻って行った。
ボクには気づかなかった。
毎朝ゴハンをくれるこの人はサヨさん。
昼は仕事に出かけてしまうけど、待っているボクらを見かけると
夜でもカリカリをくれる。
ボクは雨の中を大急ぎで上がり台に移動し、
カリカリ入った器をジッと見ていた。
カリカリの音がしても茶々丸もゴウも来ない。
カーテンの開く音がして見上げたらサヨさんと目が合った。
「おはよう。今日はマロが一番乗りだね」。
ボクは返事をしようと口を動かしたけど声にならない。
「どうぞ」と言って部屋の奥にいってしまった。
ボクは周りを気にしながらもカリカリを食べ始めた。
少しして後ろに気配があった。
振り返ったらマツが近づいてきてボクの後ろに座った。
ある程度食べたところでマツに場所を譲った。
マツはお腹が大きいから雨の中でもゴハンを食べに来たのだろう。
上がり台も濡れるほどの大雨や風の強い日は、
傍にある積み上げられた廃材の上にゴハンが置かれる。
屋根があって濡れないからボクとマツとハクは
ゆっくりゴハンが食べられる。
日差しの強い夏や雪の日も廃材置き場が食事処になる。
そんな日は茶々丸とゴウも一緒だ。
板の上に向かい合って二匹ずつ順番で食べる。
うるさいカラスもこの場所には降りて来られない。
毛づくろいや、お昼寝にはもってこいのお気に入りの場所だ。
この家には他にも人間がいて、ボクらを覗きにきたり、
声をかけてきたりする。
最初はドキドキして身構えたけど、茶々丸もゴウも逃げずに
適度な距離で好き勝手にしているからきっと大丈夫。
何たって時々だけど、おやつがもらえる。