のら猫から家族 夢を叶えた猫の思い出2
『野望、悲しいけどラッキーな転機』
ボクの名前はマロ。この家でゴハンをもらって1カ月。
サヨさん、ノリさん、タカさん、ババさん、
そして時々やってくるマオさん、みんなボクたちを気にかけてくれる。
のら猫たちはコミュニティがあって、それぞれゴハンをもらう家がある。
あちこちの家に顔を出して別の名前で呼ばれている調子のよい猫もいる。
でもボクはどこに行っても追い払われてしまう。
あちこち毛が抜け落ちてみすぼらしいから、近づくと嫌がられるんだ。
そんなボクがやっと居場所を見つけた。ずっとここに居たい。
ボクはこの家の子になりたい。
ここのリーダーは茶々丸だ。
そして茶々丸をサポートしているゴウ。2匹はとても仲良しだ。
茶々丸とマツの黒ペアが歩いていたり、
茶々丸とハクの白黒ペアでいる時もある。
みんな仲良しだ。
ボクがここに入れたのは茶々丸のお陰だ。感謝しているけど…
だけど、この家の子になるにはサヨさんの1番である茶々丸、
2番のゴウの存在が邪魔だ。
ハクも人間慣れしているから油断できない。
マツは妊娠しているからか警戒心が強いので大丈夫だろう。
何とかしてその上の存在にならなければならない。
まずは声出し。一生懸命鳴く練習を続けていると、
今まで出せなかった声が少しずつ出せるようになった。
「マロ」と呼ばれたら「ニャニャ」と返事ができた。
何度も呼んでもらえるようになって嬉しい。
しばらくして、マツは顔を出さなくなった。
どこかで子育てしているのだろう。
ハクも来なくなった。傷を負っていたのでちょっと心配だ。
ボクらは危険がいっぱい。猫同士のケンカだけではない。
ハクビシンやキツネ、タヌキもいる。
そして梅雨明け間近の夕暮れ、茶々丸が交通事故にあい虹の橋を渡った。
道路を渡るのは本当に危険だ。
寂しくなった。サヨさんも他の家族も茶々丸の名を呼ぶことがある。
ゴウは茶々丸が亡くなったことを知っているのだろうか、
庭先から家の中をジッと見ていることが多くなった。
茶々丸が居なければゴウはボクを避ける。
ボクは今がチャンスと庭や畑など、全体を縄張りとするよう動き出した。
もともとゴウは道路向かいの家がホームグランドだったので、
そっちに追いやろうと思ったけど、サヨさんたちに叱られた。
道路側の作業場にゴウの場所を用意し、
ボクは冷蔵庫側に戻されてしまった。
暑い夏、ゴウは庭の木陰にいる。
サヨさんが出かけるのを大きな石の上で見送り、
ノリさんが帰ってくると顔を出してゴハンをもらっている。
アピール上手なヤツだ。なかなか手ごわい。
更に厄介なのは、茶々丸が居なくなると別のオス猫が次々やってくるようになった。
中でも目つきの悪いブチがゴウやボクを威嚇して追い回すし、
ゴハンも横取りされる。
サヨさんやノリさん、ババさんはブチを追い払ってくれるけど、
またやってくる。
ブチはゴウと同じく道路向かいの家でゴハンをもらっていて
「シンちゃん」と呼ばれている。
「ブサイクのくせにキカナイ子で他の子を追い払う」とお向かいさんが嘆いていた。
ゴウにとって茶々丸の存在は大きかった。
2匹でいることに意味があったはず。
茶々丸とゴウのエピソードは別の機会に話したいと思う。
そして9月、サヨさんたちが留守の間にゴウは姿を消した。
風の噂では少し離れたところに移ったらしい。
その辺にも別のコミュニティがあり、
気になったので探してみたけど会えなかった。
気付いたらラッキーかアンラッキーか、1番も2番もなくボクだけが残った。
そこからは他の猫たち、特にシンをこの家に近づけないように戦いが始まった。
同時にサヨさんや他の家族にも、自分の存在を一生懸命にアピールした。
ボクは絶対にこの家の子になってやるんだ!!
あーでも、まだまだ大きな壁があった。
ボクが1番になったとして「ノラネコ」「ソトネコ」でしかない。
サヨさんには「ワン」と「ニャン」の家族がいるんだった。