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多くの意見を生んだ「#採用やめよう」について自分なりに考えてみた

先日、クラウドソーシング大手のランサーズ社が打ち出した「#採用やめよう」というメッセージが話題になりました。新聞に同ハッシュタグ入りの広告が逆さで掲載され、Twitter上にはハッシュタグ入りで様々な意見が飛び交っています。詳しい内容やランサーズ側の意図は、こちらのホームページに詳しく書かれていますのでご覧ください。

Twitter上では賛否両論、実にさまざまな意見が見られます(こちら)。個人的には「それだけ誰もが働き方に関心を持っているのだな」という感想ですが、私もいくつかハッシュタグ付きのTweetを投稿させてもらいました(こちら)。こうしたTweetを見た中で、1人のフリーランスとして感じたことを綴っておこうと思います。

なお、私はLOY2015で受賞させていただいたり、ランサーズ社のイベントで登壇させていただいたりと、何度もご一緒した経験があります。初めて登録したのは、独立したばかりの2010年。最近はランサーズ経由で仕事を受けていませんが、ときに発注側として利用することもあり、受発注の両面から長く利用してきたサービスです。しかし、別にランサーズを持ち上げるつもりはありません。誰の味方とかではなく、あくまで客観的な意見となりますので、事前にお伝えしておきます。

「採用やめよう」に込められた本当の意図は?

なんとなく否定的な意見は、この言葉をストレートに捉え過ぎてしまった方に多く見られるような気がします。恐らく「採用やめよう」という表現に対して、「採用をなくしてフリーランス活用に切り替えよう」「正社員やめてフリーランスになろうぜ」等と受け止めた方は少なくないでしょう。特にランサーズ社の広告ですから、自社に人材・案件を集めるべく行われた発信…と見られてしまっても、これは致し方ない部分があると思います。それほど、インパクトあるちょっと過激なコピーでしたから。

私は中の人ではないので推測に過ぎませんが、この広告を冷静に見たとき、次のような呼びかけだと受け止めました。

「採用だけに固執するのではなく、もっと多様性を持って人材戦略を見直そう。正社員以外にも、戦力となる人材確保の方法はある。」

つまり採用自体をなくそうという全否定ではなく、採用(=雇用)だけの人材戦略をやめようという意味合いです。もちろん、ランサーズ社としてはフリーランス活用(≒クラウドソーシング)を推したいのだと思いますが…。要するに企業に対し、「今は採用だけでなく色んな方法があるんだよ」と伝えたかったのかなと。この辺については、企業の人事担当者が実際にこの広告を見て、どう感じ取ったかを聞いてみたいところです。

企業に求められるのは多様な選択肢

私は、過去に人材業界で勤務していた経験があります。それこそ新卒採用から中途採用、派遣、あるいは求人広告まで取り扱いました。当時は今ほどフリーランスという働き方が浸透していなかったものの、「なかなか採用できない」と悩む企業は山ほど。思うように採用できず、事業計画を見直さざるを得なくなった…なんてケースもあります。

その中で採用方法に目を向けてみれば、ソーシャルリクルーティングをはじめ手法は多様化してきました。求人媒体への出稿を控え、自社サイトの求人ページを充実化し、SNS戦略で採用を強化させるような企業もあります。

そう考えると、今度は古くからある採用という枠を取り払い、もっと柔軟かつ多様性を持って人材確保に取り組むタイミングなのかもしれません。採用よりスポットでの委託関係の方がマッチするケースは間違いなくありますし、場合によってはコスト削減にも繋がるでしょう。

私の会社は社員を持たずに数十名のフリーランスとパートナーシップを構築することで事業を行っていますし、それが可能な世の中であることは確かです。実際に採用も何度か考えましたが、そのたび私にはフィットしないという結論に至っています。これは業種・業界などによって違う部分で、もちろんフリーランスの入る余地がない企業もあるでしょう。あるいは、採用とフリーランスを掛け合わせた形が適することもあるはずです。つまりは多様な働き方があることを受け止め、可能な部分で選択肢を広げていった方が、結果的に企業も成長する世の中に入っているのではないでしょうか。

自身の価値観に合った働き方を選ぶ時代

また、働く側も社会の変化と共に、仕事あるいは人生に対する考え方や価値観が変わってきました。お金より遣り甲斐などを求める、一見すると綺麗ごとに聞こえるようなスタイルも、私の周りですら実践している人がたくさんいます。「自分らしく働きたい」「自分にとって幸せな働き方を実現したい」と考えたとき、企業に属することがむしろマイナスとなるケースは増えているのではないでしょうか。

私はお金より、時間を優先したいという考えで独立しました。定時勤務、フレックス勤務と経験しての独立。自分の時間、特に子供たちの近くで過ごす時間をもっと得たいと思ってのことです。結果、学校や幼稚園の行事にはほぼフル参加できていますし、色んな”初めて”の瞬間にも立ち会えました。これは「家族のためなら時間を削ってでも必死に働く」という考えの方からしたら、ものすごく異質なものでしょう。でも、そういうお金以外に価値を見出す人は、確実に増えています。

また、例えば私には4人の子供がいます。小学生が2人、保活に失敗して幼稚園生となった三男、そして1歳の娘です。妻はすでに身内がおらず、私の両親は遠く離れた東北の地にいます。出産・育児においては、基本的に親類など一切頼らず(というか頼れる人が近くにいない)にやってきました。PTAや習い事、幼稚園の送迎etc...。もちろん仕事や趣味なども含め、なんとか夫婦連携して取り組んでいます。でも今の生活は、私がほぼ在宅しているから実現しているものであることは、自他ともに認める事実です。過去には会社員だった時代もありましたが、もし独立していなければ…今の生活は無理だと思います。実際、妻も子育てについて以下のように話してくれました。

「あなたが家にいるから、安心して4人も子供が産めた。一人っ子は嫌だったけど、もし会社員だったら出産は2人までだったと思う。今だって、たまに出張で不在くらいなら良いけど、ずっと家にいないとなれば無理。」

子供が4人というのは結果に過ぎませんが、結果的に私は今がとても幸せですし、これを崩したくありません。つまり6人の大家族というのは私にとって幸せな形であり、そのためにはフリーランスという選択肢が最適なのだと思うのです。

フリーランスが最高なわけではない

これだけフリーランスが良いと感じている私ですが、周囲にこの働き方を勧めようとは一切思いません。実際、自ら「なりたい」と言ってくる人を除いては、勧めたことすらないのです。なぜなら、私にとって最高な働き方でも、万人にとって最高とは限らないから。それは、先に述べた考えや価値観はもちろん、ライフスタイル、あるいは性格によっても違います。

フリーランスは時間や場所、あるいは仕事そのものまで自ら選べる(実際には選べず悩んでいる方もいます)自由な働き方です。しかしその代わり、すべての事柄は自分の責任。たとえ仕事が得られず収入がなくても、誰も助けてくれません。あるいはトラブルが起きた際、誰かに相談することはできても、最終的に対応するのは自分です。最初からずっと順風満帆なら良いですが、そんなことは稀でしょう。私もこれまで月収が1万円しかなかったり、金銭難で消費者金融の一歩手前まで行ったり。あるいは詐欺に遭ったり、ちょっと怖い系な方とトラブルで裁判沙汰になったりしたこともありました(詳しい話は非常に長くなるので割愛...)。実際のところ周囲の力をおおいに借りましたが、ちゃんと全て自分が前に立って解決しています。

こうした経験を経ても、やはり私はこれからもフリーランスでありたいと思っています。それ以上に得るものがありますし、むしろそれすら経験とできるくらいの気概が必要だと思うから。しかし、誰でもそれを乗り越えられるわけではないでしょう。避けられるものなら避けたい…私だってこれが本音です。あまりこういうリスキーな部分は表に出てきませんが、絶対に知っておくべきでしょう。これ以外に、会社員なら会社側がやってくれていたことを、すべて自分でこなす(あるいはお金を払って外注する)必要もあります。実際にフリーランスとして飛び出し、あまりにやることが多くて驚いたという声は少なくありません。

ですから、そうした責任まで負いたくない、周囲からの守りが必要だという人にとって、フリーランスは最適解とはならないでしょう。私から見ても会社員のメリットは山ほどあります。ただ単に、私にとって色んな働き方を天秤にかけたとき、今のスタイルが良かったというだけ。最高の働き方というものは、人それぞれ違って当然なのです。

それだけ働き方には誰もが関心を寄せている

「#採用やめよう」についてTwitterで寄せられた意見は、もの凄い件数に及んでいます。中にはランサーズ社を否定するものもありますが、これは仕方ないでしょう。ただし1つだけ言えることは、それだけ多くの人が「働き方」について関心を寄せているということです。良くも悪くも、無関心であれば、わざわざハッシュタグ付きで意見などしないでしょう。

働き方改革や人生100年時代など、近年になって自身の働き方・生き方を見直すのに十分すぎる刺激的な言葉が飛び交っています。全国各地でセミナーが開催されたり、関連書籍が山のように販売されるようになりました。SNSで情報が流れてきては、つい気になって中を読んでしまうという方は、きっと多いことでしょう。私も近年、仕事やお金のことなどを中心として、頻繁に自分会議を繰り広げています。

そして今回の「#採用やめよう」という広告は、良し悪しはともかく、働き方について考えている人の心を強く刺激したはず。だからこそ賛否両論、反射的にTweetした人が多かったのだと思います。これは、私も同じです。ですから今回の広告は置いておいたとしても、これほど今は「働き方」というテーマに関心が集まっているということ。これが表に浮彫となっただけでも、良い機会になった気がします。

今考えるべき「働き方」

私はいつも働き方を考えるとき、「生き方」から考えるようにしています。働くとは人生の一部であり、特に私にとっては人生を充実させる1つの手段だからです。自分はどのような人生を送りたいのか、どうすれば自分らしくあれるのか。そのうえで、「ではどんな働き方が合っているのか」と考える。これは時間と共に変わることもあるので、定期的に自分会議によって見直しています。

働かなければお金は得られません(一部を除く)。そして、お金がなければ生きられないし、家族を養えないのが現実です。しかし、その働く手段は多様化しました。フリーランスのような形態はもちろん、企業の副業解禁、複業の受け入れなど。自分らしく働き、そのうえで目指す人生を送れるのであれば、それに越したことはありません。ですから一度、「自分にとって一番いい働き方は何なのか」について、考えてみる価値はあると思います。もちろんその結果、今が最適解だというのでも良いでしょう。それでも、最初から選択肢を自分で狭めてしまう必要はありません。

企業も働く側の考えや価値観の変化をしっかり受け止め、選択肢を提供してみると良いのではないでしょうか。もちろん、企業によってできることは違って当然。「色んな人、色んな働き方があるのだ」とう前提で、人材戦略を練り直してみてはいかがでしょうか。採用が上手くいかなかったのなら、業務の振り分けを見直して一部を外注してみる。採用だけでなく、既存社員が担っていた雑務を外注することで、社員の生産性を高めるなど。選択肢を広げることで、色んな可能性が見えてくるはずです。

フリーランスには色んな人がいます。もちろん全員ではありませんが、優秀な人材ほどフリーランスでも活躍できているというのは、確かな部分が大きいでしょう。中には、家庭事情などで「どうしても雇用関係では働けない」人もいます。既存の採用だけに固執するということは、そうした人材との出会いを逃しているということ。これは、企業にとっても損失ではないでしょうか。必死になって採用活動に追われるより、もしかしたらそういうフリーランスを受け入れられる体制を作った方が、より効率的に企業成長を目指せる可能性もあります。

多様な働き方が受け入れられ、もっと企業と人の両方が元気になれば。あまり頭の中が整理できないまま、雑文となってしまいました。広告が打ち出されたのは、ちょうどフリーランス10年生を迎えた日。こうとりあえず私は、家族と共に私自身が笑顔であり続けられる、そんな人生を目指して働きます。

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