書けん日記:32 世界の終わりの前と後に
昨今――
世界情勢、とくに東欧、中東あたりがまたもやきな臭い、今日このごろに。
T氏「ちょいと前に、こういうアニメをやっていてだな」
不肖「なるほど、ポストアポカリプスな。ゲームでもいっぱいありますし」
不肖「あっそうだ(唐突)。Falloutのドラマ見なきゃ。ゲームやってからのほうがいいですかね」
T氏「情報ゼロからのほうが面白いかもしれんぞ。それはそうと――」
不肖「はい」
T氏「現状、いつ第三次世界大戦がおこって、今の世界がふっとんでポスト・アポカリプスになってもおかしくない――もしそうなったら。そうならなくとも」
T氏「――死を前にして、何がしたいか? これを考えるのもたまにはよかろうもん」
不肖「やめてください、そんな。私が明日にも死にそうな爺のような。せめて……死ぬ前に何がしたいか? くらいにしておいてくださいよォ」
……と。は言ったものの。
もし。最期が目前に迫るとして。されど、死ぬ前に何かをできる、その選択の猶予くらいはある状況を考えると――
『死ぬ前に、やりたいこと』 ……意外と、難しいですね。
今までしていなかった、新しいことをしてみる? それとも……
昔やった、楽しいことをもう一度? このどちらか――
前者の『新しいことへのチャレンジ』は、冒険心、チャレンジ精神が刺激されてときめきそうですが……今までしていなかった=できなかった=つまり、最期の今でもやっぱり出来ない……という、切ねえ結論が待っていそうで。しかも、
「……初めてやってみたけど、意外と……なんかいまいちだったなあ」
「……そっか、イマイチだって気づいてたから。今までスルーしてたんだなあ」
と、最期に徒労感を抱いて果てることになりそうで――
ならば、後者なら。
「昔やって楽しかった、良かったことをもう一度……!」 うん、これなら。
……と。は言ったものの。
昔の、よかった探し? さて……記憶に残る、またやりたい「よかった」?
……美味い食事、美味い酒。
たしかに、これらを最後にまた味うわうと言うのは、健全な『やりたいこと』に思える。されど……最後にまた食べたい美味、美酒って。何かあったかな? と考えると……。
いくつか思いついても。
「ああ、あの店もうねえや」「新鮮なあれが、いま手に入るかなあ」
「あー。あの酒。昔は一晩でボトル殺してたなあ」「いまじゃ、半分飲んだら寝ちまう」
とかで。
じゃあ「握り飯と牛丼かっこんどくかー」になってしまう、甲斐性のない自分に気づく不肖……。
……あとは。楽しかった遊び、とか?
それらも、当時は楽しかったのであって。そのころの仲間もおらず、孤独になってしまった今、楽しかった当時の遊びに興じてみたところで虚しさが残るだけだと……すっげえ白ける、はっきりわかんだね(白だの黒だの)。
……そうなると。
あれっ? もしかして私。最期に、いまわのきわにも、何も言い残せない寂しいラストシーンになってしまうのでは? それはせつない。なにか、最期に……。
もし叶うのなら、またやってみたいことの一つや、二つくらい――
ありました。
イタリア、イタリア。世界に冠たる、イタリア ♫(急に歌い出す)
イタリアの至宝……フェラーリ様とか、ランボルギーニの旦那は、まあおいといて。
アルファロメオ――
もう一度、アルファロメオに乗ってみたい。新車じゃなくて、もう20年以上前の。
私の最初の車だった、アルファロメオ156(中古価格12万えん)
その後に乗った、アルファロメオ155(ただでもらった)、そして147(中古価格25万えん)――
ほぼ鉄くずで売られていた中古イタ車だけあって、故障のオンパレードだったアルファロメオたち。修理屋を探して持ち込んで、買ったときの数十倍の金を浪費して……それでもまだ故障して。
道路で立ち往生したことも何度か。ガレージから出せなかったことも数しれず。しまいには、JAFの、外車専門のレッカー業者のお兄さんに
「あっ、菅沼さん。まいどです。今度はエンジンですか、電装?」と、名前と顔を覚えられて常連になってしまう始末で。
それでも……走っているときのアルファロメオは、他に比類できるものがなく。
安心安全、宇宙最強の日本車が走るこの三河の道路を、それでもミラノ生まれのアルファロメオで走ると……あのハンドリング、アクセル、そしてサスペンションの揺らぎ、全てが私を包みこんでくれて、愛おしくなる……車が私を愛してくれなくても、こっちだけ夢中になってしまう。
でも。それでもいい、それがいい……すれっからしの年増女、腰と足を痛めて昔みたいに踊れなくなってしまった踊り子に入れあげている馬鹿な男、そのままに……私が夢中になれた、アルファロメオ。
それでも、故障だったり、もう修理部品がなかったりで……お別れするしか無かったアルファロメオたち。
また機会があったら、余裕があったら。
あれらのアルファロメオに、また乗ってみたいものです。
もういっこ、ありました。
オートバイ。何台も、乗り継いだバイクたち。
東京から、三河に都落ちして……とった普通免許、そしてオートバイの免許。身の丈に会わないスポーツバイクから原付きスクーターまで、いろいろ乗りました。
中でも……最後に残ったのは、YAMAHAのSRX600。もう40年近く前のバイク。
これに乗って、いろんなところに行きました。
ツーリングで、県外に。そして名古屋の仕事場に。ちょっとした買い物に。
そして……病に倒れて入院した、母の看病と介護に病院へ――
……そうして私は。母が亡くなったあとは、アルファロメオもバイクも、降りてしまって――
アルファロメオには、隣に乗せていた母の思い出が残ってしまっていたから。
バイクには……怖さだけが。これに乗っていたらいつか自分も死ぬ、という形のない恐怖だけが残ってしまって。
それでも、忘れられないのは――
峠道を、バイクで一人走ったときの風の音。流れてゆく四季の山々。
名古屋から戻る幹線道路の、冬の寒さ。透明感すらある冷たい空気の中の、孤独。
バイク仲間と、多少のやんちゃをして駆け抜けた、あのころ。
……叶うのなら、もう一度、バイクに乗ってみたい。
倉庫で眠っているSRXを、また走れるようにして乗ってみたいものです。
そして。渇望。私が諦めきれないのは――
お話を書きたい。物語を書きたい。また本を書いたり、ゲームのテキストを、セリフを書きたい。
書いたものを皆様にお届けしたい、見て頂きたい。
そして願わくば……皆様に、お楽しみいただきたい、と……。
それが。この不肖が、ポスト・アポカリプスであろうと日常だろうと、最期まで渇望することなのだな、と……昔の、愛車やバイクの画像を引っ張り出していて気づいた次第であr
T氏「いまやれ」
不肖「スミマセンスミマセン……」
T氏「すぐやれ」
不肖「すみません許してください、何でも書きますから」
T氏「今 というか次の有料ボタン早く置いてみるんだよヨォ」
不肖「ハイッ」
………。
…………。
……………。
………………。
…………………。
……………………。
…………………………書けん。
T氏「タイトル回収? ラストでOP流れるやつ? 最終回かな」
不肖「やめてください、不吉な」