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マーケティングサイトのUXで一番大事なものは何か

もしあなたがビジネス的な成功をWebサイトに委ねるのならば、人間の感情を知り適切なアプローチをする必要がある。

一般的にUXデザインの主眼は、ユーザビリティ(機能性や使いやすさを追求すること)に対して向けられることが多い。
特にアプリやプロダクトにとって、サービスが利用されるか否かを左右するくらい重要なことは自明であるが、Webサイトにおいてはどうだろうか?


Webサイトの用途は大きく分けて2つ

単にWebサイトといっても、用途に応じて考える必要がある。

  1. アプリなどのプロダクトのウェブ版であるサイト

  2. アプリやプロダクトを紹介し、登録を促すサイト

1はいわゆる、ウェブアプリ(あるいはオンラインツール、ウェブベースプロダクト)というもので、サイト自体がサービスの利用になっているタイプ。
2はマーケティングサイト(あるいはプロモサイト、LPなど)といった、サイトから切り離されたサービスを利用してもらうためにあるタイプ。

今回は2の前提、いわゆるマーケットサイトについて話そうと思う。


サイトの役割は、ビジネスに貢献するということ

私はマーケットサイトでは、いかにサービスの利用に導くかが目的である。
まず結論から、誤解を恐れずに言うとサイト自体の設計には過剰なユーザビリティは必要はないと考えている。

ユーザーが使うか使わないかを意識的に判定するのがウェブアプリであり、マーケティングサイトでは、無意識的に使ってみたいという感情になるような設計が必要だからである。つまり、簡単にいうと、

ウェブアプリ→「ユーザー体験をより良いものにする」
マーケティングサイト→「ユーザー体験をコントロールする」
といったように、重視するものが根本的に異なる。

体験をコントロールする

ユーザー体験をコントロールするというのは、どういうことだろうか。

・意図的に「ユーザーの心」を操るということ
・人の行動を狙い通りにさせること

こう言うと洗脳的な怪しさがあるものの、つまりは「ユーザーの感情を意識した設計」ということである。人間の意識決定には、大部分が感情によるものだというのは、認知神経科学者アントニオ・ダマシオの研究でも示されている。

では、マーケットサイトで、サービスを使ってみたいと思わせるには何が必要だろうか。私がUX戦略を考えてサイト設計をする時、以下のような感情を意識している。

  1. ユーザーがサービスに期待感を抱く

  2. ユーザーがサービスの詳細を知りたいと思う

  3. ユーザーがサービスの良さを理解する

  4. ユーザーが自分にとって必要だと感じる

  5. ユーザーの生活がより良くなると感じる

  6. ユーザーの不安が解決してくれると感じる

  7. ユーザーがサービスに信頼感を抱く

  8. ユーザーが実際に行動したくなる

これらはすべて感情ベースで書き出していて、すべて満たすことでサイトの役割は果たしているといえる。
人の感情は段階を経て変化するので、この順序で構想をするというのもポイントだ。

基本的に、感情が8に至るまでには1〜7までのプロセスをクリアしていく必要がある。2の段階に移るには、まず1を満たす必要があるということは容易に納得できるかと思う。

ちなみに、AIDMAの法則やUXフレームワークにおけるユーザージャーニーマップなどがあり、それらに基本的な思想は似通っている(厳密には違うが割愛)。


第一印象はすべての源となる

さて、表題とした「マーケットサイトに一番大事なものは何か」は単に読者を釣りたいだけではない。(期待感は持てただろうか)

ユーザーの感情を意識した設計におけるファーストステップは、サービスに期待感を抱かせること。それは紛れもなくサイトを訪れた時の第一印象で決まるので、まずはしっかりとしたビジュアルアプローチの定義が大事だというのが結論である。UX設計の初動にあたるイメージとしては意外な感じがしなくもない。


ニューロデザインでも提唱されている

ニューロデザインとは、ドン・ノーマン(認知科学、デザイン、ユーザビリティ工学の分野における著名な学者)によって提唱されたモデルである。
ノーマンによれば、ユーザー体験を形成する大黒柱は3つあるということだが、その1つに視覚的要素を挙げている。
少しわかりづらい言い回しだが、以下のように述べられている。

■Visceral(内臓的反応)。
これは与えられた経験に対して即時的な反応、つまり反射神経のようなもの。この反応を起こすのに重要なのは「見た目」であり、「美しさ」と「インパクト」を追求することにある。

視覚的なデザインは、ユーザーの頭の中に入り込み一時的なUXを向上させる。例えばユーザーに革命的な予感をもたらすアート表現だったり、何らかの利益を図ることを示唆するタイポグラフィによって、その感情を揺さぶることを目的とする。

また、ユーザーは後の問題にも寛容になるようだ。
即時的反応によって、一度期待感が高まればユーザーはその後に起きる些細な問題に負の感情を抱きにくくなるということがわかっている。
これは心理学でいう「認知の歪み」とも同義であるかと思うが、否定的なものも自ら肯定的に考えようとする傾向があるほどのものであるといえる。だからと言ってユーザビリティや他の要件を蔑ろにしていいということではないが。

残りの2つの柱は、アプリやプロダクト向きなので今回は割愛するが、詳細はこちらで。

デザイナーならビジュアルに凝るのは当たり前でしょ?
というのはさておき、ビジネスオーナーにその必要性を説くのは容易ではなく、双方がこの事実を共有していることで、アート的なデザインにおける議論も積極的かつ肯定的に捉えることができるという点で、有効なヒューリスティックであることは間違いない。

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