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冬が寒くて本当に良かった

冬が寒くて本当に良かった

BUMP OF CHICKENの名曲「スノースマイル」の冒頭の一節。

道産子の私には、冬が寒くてよかったことなど一度もなかった。

朝は布団から出られなくなるし、雪かきは手伝わなくてはいけないし、通学のバスは平気で30分くらい遅れるし、その間バス停に立って待たなければいけないし。

だから、この曲を初めて聞いたとき、衝撃的だった。

確か、夜の21時くらいだったと思う。高校生の頃だった。勉強の休憩中、流していたラジオから、「初解禁」という形でオンエアされていた。最初のアコースティックギターの音でラジオに聞き耳を立てた私は、この最初の一節で完全に心を持っていかれた。まるで体に電気が走るくらいの衝撃だった。

冬が寒くてよかった ???

次に、

君の冷えた左手を 僕の右ポケットにお招きする為の この上ない程の理由になるから

と続いて。

当時、高校生なりの恋みたいなものをしていた私にとって、妄想をするには充分な材料(笑)であったし、こんな考え方ってあるの!と、固定概念をひっくり返された驚きと感動が入り混じった感情になった。初めて聞いたときは、この部分を聞いただけで放心状態になり、そのあとの歌詞は入ってこなかったくらいだ。

曲が終わったところで、ふと我に返り、曲名とリリース日をメモした。リリースはまだ先ということで、当時はリリース前にゆっくり曲を聴く手段もなく、ラジオでまたオンエアされることを願った。

そして、のちに聞いた歌詞の全容でも、雪国に住む私にとっては、曲の中の2人の姿を想像するのは容易で、寝る前にこの曲を聴いて、この二人と自分の恋を重ねて夢見ることもあった(最終的には切ない結末なのだが、そこは自分のいいような形に解釈をしていた)。

あれから15年以上経つが、この時のように曲の冒頭を聞いただけで、衝撃が走ったように感動した曲は、まだないと思う。ラジオで流れていたのを偶然聞いたということも、相乗効果を生んだのかもしれないが、あの感動は今もnoteにこうして書きたくなるくらいのものだ。今でも寒い冬が来ると、この曲のことを思い出してしまうし、街で偶然この曲が流れているのを聞くと、足が止まってしまう。

当時の恋を思い出すとか、青春に戻る、というよりは、単純にこの曲の世界に浸りたくなる、という感情になる。映画を見るのに近いと思う。今も、この曲を聞きながらnoteを書いてみようと思ったが、曲に聴き入ってしまって全然はかどらないので、一回だけ聞いてすぐ止めた(笑)。

きっと、私にとってこの曲は「一生もの」なのだと思う。この先、ずっと寒い冬が来るたびに、この感情になれるのだと思うと、

冬が寒くて本当に良かった

と思う。





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