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現在のスペイン(バルセロナ)の状況

自分のご先祖様が戦国時代に「マジ信長こえぇー!」とか呟いていたら子孫としてはおそらくアーカイブに残すと思うのだが、今この世界的ショックの時期に生きる一クリエイターとして記録を残すのは重要だと思う。

特にバルセロナに住む日本人といえばさらに数少ないのでここに記録しておく。

実は外出規制が起きた直後すぐ近所で21歳の男性が感染によって亡くなったため、自分の中では結構初期の段階で危機感があった。

だがそれから7週間経つ今はというとかなり危機感がなくなってきていると思う。事実、スペイン人の友人も「もうすぐ規制が解除されるから早くジムに行きたい」と言っていた。

一方で近所では感染者は出ている。

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この写真は自宅から徒歩2、3分のところなのだが救急車が2台ほど止まって何やら物々しくビニールのシートを運んでいた。感染者がここで出たのかどうかはわからない。

確かにスペインでは感染者のピークは過ぎたとされており、一応増加率は低下傾向にある。しかしそれでも感染者数は4月29日の段階で23万人を超えており、電車の改札に切符を通さず乗り越えていくような人が多い人間性を考えると規制が緩和された段階でさらに増えるだろうし最悪ちょっとした紛争が起きるかもしれない。

まぁ、そんな不確定な未来を想像して不安になって今を楽しめないのはバカらしいので、個人的には毎週スーパーで新しい食べ物を購入してその食べ物を撮影するということをやっていたりする。せっかく現地にいるのだから現地で室内でもできることとしてカメラの練習をしているのだ。

名前も知らないクッパが元気だった喜び

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この写真の道を真っ直ぐ進んだところに行きつけのスーパーがある。

この日は春の匂いを交えた空気が頬を撫で、透き通るほどにクリアな空がそれまで天井しか見上げるもののなかった灰色の心を鮮やかなものにしてくれた。長期間同じ部屋で過ごしていると外部の刺激をより鋭敏に感じ取れるようになっていた。五感を通した世界は美しい。

そこでは大樽のような体をした巨漢女性が働いており、めちゃめちゃ目つきが悪く、見た目からそのままクッパと勝手に呼ばせてもらっている。外出規制が出て1ヶ月前に訪れた時はあまりに巨大なためマスクからアゴか鼻がはみ出していた。

その時は申し訳ないが「スーパーでいろんな人と接するわけだし、鼻もマスクに収まってないし感染しちゃうのではないか」と心配になった。

外出規制によりスーパーに買い出しに行く回数は10日に1度ほどだ。

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10日後再び訪れるとクッパがそこにいた。いつも通り鼻がはみ出る布マスクをこしらえ、レジで果物や箱に入った商品を雑に機械で読み取り横の台にスライドさせている。スライドする勢いも雑なのでマリオカートで甲羅を投げるクッパを思い出したのは言うまでもない。

さらに10日後(昨日)、再びスーパーに訪れるといつものレジの定位置にクッパはいなかった。代わりに透明のプラスチックを顔の前に被せた女性がレジ打ちをしていた。

もしかしてクッパがやられたのか?

そう思った瞬間、従業員用の扉からラスボスだと言わんばかりにクッパが現れた。その時自分の心の動きとしてめちゃめちゃ安心したというのは興味深かった。

それまでクッパとは「ありがとう」くらいしか会話をしたことはない。

クッパがあまりにも顔面のインパクトが強過ぎてそれ以外の従業員の顔は覚えていないのだが、自分の頭の中ではクッパを中心に感染と戦う従業員一同の姿が感じ取られた。

本当にありがたい。

僕らがこうして外出規制だなんだと文句を垂れているが、どうしても生活で必要な食品提供のインターフェースとして働いてくれているクッパを中心とした従業員の皆様のおかげで僕らは生きていくことができている。

本当にありがてえ。

ということでスーパーに行った際はできるだけ色々と多くちょっと高いものとかも購入しようと考えたのであった。

現実に適応できていない非効率な社会

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だがよくよく考えてみれば、さっさとテクノロジーを導入して人が働かなくても回るシステムを導入すれば人命をリスクに晒さなくて済むではないか。軟らか銀行の社長よ、マスクとか防護服よりも人との接触が多い箇所をテクノロジーで代替した方が良かったのでは?

そういえば先日、郵便局に行った際も列に30分並んだ挙句に「支払いは現金のみです」と言われその時カードしか持っていなかったので帰されたことがあった。そもそも接触感染があるこの時期に現金のみはおかしい。スペインに来て現金のみの対応を受けたのは初めてだ。あまりに社会が現実に対応できていない。不合理だ。

おそらくこう言った経験をする人はどんどん増える。つまり、「触れるストレス」「触れられないストレス」だ。

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(マクロでは美しいがミクロでは汚く感じる)

東京大学で超音波を使って遠隔でも触覚を再現する装置がメディアに取り上げられていたが、この時代においてかなり需要が出てくるかと思う。

触れたいのに恋人に触れられずにストレスを抱えている人もたくさんいるだろう。逆に触れたくない店員との接触感染を避けるためにAmazon Goなどの接触回数を少なくしたサービスも需要が増すだろう。

つまり、ネットがいよいよテキストや写真といった「視覚」、動画や音声といった「聴覚」を越えて、「触覚」を考慮したスキームをいかに構築するかがこれからの鍵となってくるのかもしれない。

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もしかしたら感染した人が道に唾をはき、別の誰かや動物がそれに接触しいろんなところへと運んだと考えると、身の回りのものは触れることが気軽でなくなる。

すると目の前にあるが触れられないという点ではバーチャル世界と変わらなかったりする。実は今現在、我々はバーチャル世界を擬似体験しているのかもしれない。

今まで当たり前と思っていたことができなくなった時、いつも我々はそのありがたさを思い知るものだ。

今の心境

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正直のところ、今のまま外出規制が続いてくれれば個人的には感染の確率が低くなるため安心できる。しかし、今週の日曜日には外出規制も解除され多くの人の移動が再開することだろう。

すでに医療崩壊しつつある今の段階で解除する場合、おそらく医療現場では命の選択をすることになり、そうしたときに外国人である自分が治療を受けられるかどうかは微妙だ。

それを考えると確かに不安にはなるが、そもそも原始の時代は病気に感染すれば即ゲームオーバーだし、これまで様々な病原体が人類を危機に陥れた史実からすれば仕方がないかという気もする。

ということで自分のできることを文章なり、画像なり、映像なりでぶつけて行こうかと思っていたりする。

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