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9月26日週【中途採用市場動向】

企業動向

【調査報告】人事担当者に聞いた! デジタル人材採用の実態について 82.1%の企業がデジタル人材不足を実感 70.9%の企業が積極採用を実施するものの69.2%が採用に苦戦と回答 

  • 【デジタル人材の充足度】82.1%がデジタル人材が不足していると回答 充足している企業は17.9%のみ

  • 【デジタル人材採用の積極度】70.9%の企業が採用に積極的 事業成長のためにデジタル人材は必要不可欠

  • 【デジタル人材の採用手段】転職エージェント、転職サイトが上位 即戦力のある中途のニーズが高い

  • 【デジタル人材採用の課題】69.2%が課題を認識 応募者不足・スキルのミスマッチ・待遇面の改善余地

  • 【デジタル人材定着の取り組み】定着化に取り組む企業は約4割のみ

  • 【デジタル人材の育成】6割の企業が取り組みに前向き 社内外研修の充実化に注力

一般職業紹介状況(令和4年8月分)―有効求人倍率は1.32倍(厚労省)

  • 令和4年8月の有効求人倍率は1.32倍で、前月に比べて0.03ポイント上昇。

  • 令和4年8月の新規求人倍率は2.32倍で、前月に比べて0.08ポイント低下。

  • 総務省が30日に発表した8月の完全失業率(季節調整値)は2.5%で、前月から0.1ポイント改善した。

  • 就業者数(季節調整値)は6730万人で前月に比べ4万人減少。

  • 正社員有効求人倍率(季節調整値)は1.02倍となり、前月を0.01ポイント上回った。

  • 8月の有効求人(季節調整値)は前月に比べ0.6%増となり、有効求職者(同)は1.5%減となった。

  • 8月の新規求人(原数値)は前年同月と比較すると15.1%増となった。

  • これを産業別にみると、宿泊業,飲食サービス業(51.1%増)、生活関連サービス業,娯楽業(28.9%増)、卸売業,小売業(18.7%増)、製造業(17.0%増)などで増加となった。

  • 都道府県別の有効求人倍率(季節調整値)をみると、就業地別では、最高は福井県の2.04倍、最低は沖縄県の1.04倍、受理地別では、最高は福井県の1.89倍、最低は神奈川県の0.92倍となった。

  • 完全失業者数(同)は175万人で、前月に比べて1万人減少した。内訳では「自発的な離職(自己都合)」が6万人減少。「非自発的な離職」は前月と同数。「新たに求職」は5万人増加した。

  • 休業者(実数)は268万人と前月に比べて10万人増加した。新型コロナウイルスの感染が再拡大し、陽性者や濃厚接触者が増えたことが背景とみられている。

人的資本経営に関する働く人の意識調査(2022)企業の人的資本の活性度は約30~40%にとどまる―働く人と企業が、共に人的資本を育む時代へ―

  • 1. 企業の人的資本の活性度は約30~40%

2022年8月30日(火)、内閣官房から「人的資本可視化指針」が発表されました。また同月には経済産業省および金融庁をオブザーバーとした「人的資本経営コンソーシアム」が設立されました。人的資本経営に関する議論はますます盛り上がりを見せており、企業における人的資本経営の実践が注目されています。
人的資本経営を実現するためには、経営戦略と人材戦略の連動、人的資本投資の体系的整理、人的資本に関するデータマネジメントとその情報開示等、数多くの課題があります。このような状況の中、まずは足元の人的資本の状況をつかむことが重要であると捉え、現在企業で働く10,459人に調査を実施しました。

  • 2. FIT:働く人は職場や仕事にフィットしているか

ここでは、働く人が現在の職場や仕事にフィットしているかどうかを知るために、下記 3 項目の調査結果を見ていきます。
 今の部署や職場は、自分の知識やスキル・経験を活用する上で最適な配置だと感じている
 現在任されている仕事は、自分の知識やスキル・経験を活用する上で最適な職務内容だと感じている
 自分の仕事に関する知識やスキル・経験を言語化して他者に伝えることができる
また、それぞれの自己認識別に見た「従業員エンゲージメント」の調査結果を掲載しています。従業員エンゲージメントとは、働く人の所属企業や仕事への熱意の度合いです。どれだけ生き生きと働いているかを示している指標とも言えます。企業の業績や労働生産性との関連があることからも注目されており、今後多くの企業が自社の従業員エンゲージメント情報を活用することが予想されます。
従業員エンゲージメントは、①職務自体との関わりや愛着の度合いを示す「職務エンゲージメント」と②組織自体と従業員の結びつきの強さを示す「組織エンゲージメント」で構成されます*1。本調査では、従業員
エンゲージメントのスコア(従業員エンゲージメント)および、職務エンゲージメント・組織エンゲージメントそれぞれのスコアを掲載しています(最小値 1、最大値 5)

  • 2-1.最適な部署配置

働く人は、自身のスキルや経験等を踏まえた上で、今の職場を最適な配置であると感じているのでしょうか。
「あてはまる」と回答した人は、わずか 5.5%であり、「ややあてはまる」を含めても 30.7%でした。
最も選択率が高かったのは「どちらともいえない(49.2%)」でした。
適材適所(適所適材)ができていることは人的資本を活用するための土台と言えます。
しかし、約 70%の人は「今の職場が自分にとって最適な配置である」と、自信を持っては言えない状態であることがわかりました。

  • 2-2.最適なジョブ・アサインメント

「最適な部署配置」に続いて、職場におけるジョブ・アサインメント(仕事の割り当て)の状況を見ていきます。調査では、「現在任されている仕事は、自分の知識やスキル・経験を活用する上で最適な職務内容だと感じている」かどうかを問いました。
こちらの回答結果も「最適な部署配置」と同様の傾向でした。「あてはまる」の選択率は全体で 5.9%と低く、約 70%の人が「どちらともいえない」や「あまりあてはまらない」「あてはまらない」と回答しています。
働く人が知識やスキルを持っていても、それらが未使用のままでは人的資本が活用されている状態とは言えません。調査結果は、人と職務のマッチングをより一層丁寧に実施していく必要性を示しています。

  • 2-3.スキル・経験等の言語化

「スキル・経験等の言語化」は、働く人が仕事に関する知識やスキル・経験を言語化できるかどうかについて確認しています。
こちらは今回調査した 6 項目の中で、「あてはまる」「ややあてはまる」の選択率が最
も高く、この二つを合計した「あてはまる計」は 41.0%でした。
これは「最適な部署配置」および「最適なジョブ・アサインメント」の「あてはまる計」より約 10pt 高い結果です。この差異は、働く人の一定数は自分自身のスキルや知識等を言語化できているのに、企業がそれを踏まえた部署配置やジョブ・アサインメントができていないと読み取ることもできます。

  • 3. FUTURE:働く人の将来への展望はどうか

働く人それぞれが現在の職場や仕事にフィットしており、さらに将来に向かって展望を持っていることが人的資本経営の観点からも望ましい状態と言えます。こちらでは働く人の将来への展望について、知識やスキル・経験の側面から見ていきます。調査では、以下の 3 つを確認しました。
 現在の仕事のレベルを高めるためには、どのような知識やスキル・経験が必要かわかっている
 将来的にやってみたい仕事に就くためには、どのような知識やスキル・経験が必要かわかっている
 自分の知識やスキル・経験があれば仮に転職することになっても、新しい仕事を見つけるのは難しくないと思う

  • 3-1.現在の仕事に必要な経験

展望に関する項目の一つ目は、「現在の仕事のレベルを高めるためには、どのような知識やスキル・経験が必要かわかっている」かどうかを問いました。「あてはまる計」は 38.3%であり、6 項目の中では「スキル・経験等の言語化」に次いで高い選択率でした。また、「あてはまらない計」は 16.1%であり、こちらは 6 項目の中で最も低い選択率でした。
この項目は、前述の「スキル・経験等の言語化」とセットで捉える必要があります。働く人の「現状のスキル等」と「現在の仕事のレベルを高めるために必要なスキル等」のギャップの解消が、当面の人材育成上の課題になります。このようなギャップを明らかにした上でスキル開発のテーマを設定し、実務の中で解決していくのか(OJT)、研修やセミナーで解決していくのか(Off-JT)を検討すべきでしょう。
エンゲージメントの状況に目を向けると、「あてはまる計」のスコアは、3 つとも「スキル・経験等の言語化」のスコアを上回っています。スキル・経験等の言語化ができている人よりも、現在の仕事に必要な経験がわかっている人の方が、エンゲージメントが高いことがわかります。

  • 3-2.将来の仕事に必要な経験

働く人にとって、前述の「現在の仕事に必要な経験」が短期的なスキル開発テーマだとすれば、「将来の仕事に必要な経験」は中長期的なキャリア形成のテーマに該当します。
この項目では、「将来的にやってみたい仕事に就くためには、どのような知識やスキル・経験が必要かわかっている」かどうかについて確認しました。「あてはまる計」の選択率は 31.2%であり、「現在の仕事に必要な経験」と比べると 7.1pt 低い結果でした。
また、雇用形態別では、会社員(雇用期間の定めなし)の「あてはまる計」が 33.2%であり、会社員(雇用期間の定めあり)、アルバイト・パートに比べて約 4pt 高い結果となりました。

  • 3-3.新しい仕事を見つける

本調査では、「自分の知識やスキル・経験があれば仮に転職することになっても、新しい仕事を見つけるのは難しくないと思う」かどうかという設問で、現在の自分の知識やスキル・経験に対する自己認識を確認しました。
全 6 項目の中で、「あてはまる計」の選択率(25.4%)は最も低く、「あてはまる」の選択率は 5.0%のみでした。一方で「どちらともいえない(49.9%)」「あてはまらない計(24.6%)」は最も高い結果でした。
「あてはまる計」の従業員エンゲージメントスコアは、「最適な部署配置」「最適なジョブ・アサインメント」に次ぐ高い結果でした。これは、外部の労働市場において自分の価値が高いと思っている人は、所属企業へのエンゲージメントが高いことを示しています。

管理職層の現状と課題とは「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2022年」の結果を発表

  • 組織課題について「新価値創造・イノベーションが起こせていない」が人事1位、管理職3位

・人事担当者に会社の組織課題について尋ねたところ、選択数が多い順に1位「1.新価値創造・イノベーションが起こせていない」(66.7%)、2位「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」(66.0%)、3位「3.難しい仕事に挑戦する人が減っている」(64.0%)という結果だった。
・同じ設問に対する管理職層の回答は1位「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」( 64.7%)、2位「4.ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」( 62.0%)、3位「1.新価値創造・イノベーションが起こせていない」 60.0%)だった。
⇒「2.次世代の経営を担う人材が育っていない」については、本調査をスタートした2020年から毎年選択率上位の課題である。一方、「1.新価値・イノベーションが起こせていない」は、本年の調査で人事・管理職層とも順位が上がった。人事が選択した課題の3位で「3.難しい仕事に挑戦する人が減っている」が上がってきたことからも、新しい仕事や価値を生み出すことへのニーズが高まる一方、その対応が想定通りに進んでおらず、企業の課題として挙げられている可能性が考えられる。

  •  ここ数年、仕事だけでなく、学習や購買、エンターテインメントや日常のコミュニケーションなどさまざまな活動のオンライン化が急速に進んだ。また、そのことは単なるオンライン化を促進するだけでなく、私たちの日常行動や価値観にも大きな影響を与えている。そうした先の読めない急速な変化が起こり得る社会のなかで、今までの延長線上にはない新価値の創造に取り組む人材の獲得・育成が、企業にとって重要課題になっていることは想像に難くない。また、そのような期待が高まるなか、ますますミドルマネジメント層への期待は高くなっているのではないだろうか。「4.ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」について人事の選択率は4位だったが、管理職層は2位となった。

  • 「管理職に期待していること」・「管理職の役割」の1位は人事・管理職ともに「メンバーの育成」

・人事担当者に「管理職に期待していること」(3つまで選択)を尋ねたところ、最も選ばれた項目は、「1.メンバーの育成」( 42.7%)だった。次いで、「2.業務改善」( 26.7%)、「3.担当部署のコンプライアンス・勤怠管理の徹底」 23.3%)だった。
・管理職層に「管理職として重要な役割」(3つまで選択)を尋ねたところ、人事と同様に「1.メンバーの育成」( 46.0%)が1位だったが、続いては「5.担当部署の目標達成/業務完遂」( 32.0%)と「2.業務改善」 30.7%)が選ばれた。
⇒選択順位が高い項目のなかでも、メンバーの育成や目標達成、業務改善は管理職層の基本ミッションであるため上位に来ることは当然とも考えられる。一方、リモートワークが進むなかでメンバーの勤怠管理や、機密情報の管理などコンプライアンス観点での期待が人事から高まっている。

求職者動向

退職者が選ぶ「辞めたけど良い会社ランキング」、第1位は?-Googleは5位

  • オープンワークは9月27日、退職者が選ぶ「辞めたけど良い会社ランキング 2022」を発表した。同ランキングは、就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」に投稿されたクチコミのうち、「退職者」による評価に限定し、「退職者からの評価が高い企業」を集計したもの。

  • 今回、第1位を獲得したのは、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニー。トップ10のうち、4社はコンサルティングファームがランクインしている。

  • クチコミを見ると、外資系企業やコンサルティング会社は共通して「自身の次のステージに進むため」「十分育ててもらった」「オファーをもらったから」と言ったポジティブな声が見られたのが特徴だったとのこと。

  • 第2位以降は、上からリクルートマネジメントソリューションズ、スカイライト コンサルティング、特許庁、Googleとなっている。

  • ちなみに、ランキングの上位に入った日系企業のスコアを見てみると、共通して「風通しの良さ」「社員の相互尊重」のスコアが高い傾向にあったという。退職者の社員クチコミとしては、チームワークを重んじる風土や自由闊達で挑戦を応援する文化を挙げる声が見られるとのこと。

【意識調査】20代社員の挑戦傾向は年次と共に低下傾向、維持のカギは“学習機会”と“キャリアの軸”確立か:2022年度最新20代若手社員の意識調査レポートを公開

  • 1.仕事観を明確に「持たない」は昨年同様9割、持つ若手は「実際に働く経験を通して」獲得

「自分は何のために働くのか(仕事観)」「どのように働き続けたいか(キャリア観)」:「明確な形で持っている」は、昨年調査内の同設問回答と同様、1割に満たず。仕事観を持たない理由として、「仕事観とは何かそもそもよくわからない・考える機会がない」が多数挙げられた。逆に「持っている」とした回答者にその獲得のきっかけを聞いたところ、「実際に働く経験を通して」が最も多く選ばれた。

  • 2.自分らしさを「意識する」6割も、「自分らしく働く」イメージの具体は欠く

広く物事を決定・選択する際に「自分らしさ」という観点を意識するかを聞いた設問では、「頻繁に意識する」「時々意識する」が合わせて6割強となった。一方で、「自分らしく働く」イメージを持っているかを聞くと、「あまり具体的なイメージはない(30.3%)」「まったく持っていない(9.6%)」「仕事に自分らしさを期待しない(16.3%)」となり、仕事と自分らしさを具体的に関連付けていない回答者が全体の半数を超えた。

  • 3.年次を重ねても強い挑戦傾向を保つ若手に、仕事観・キャリア観・学習機会の所持傾向あり

今回の回答結果を様々な観点からクロス集計し分析したところ、新しい仕事における挑戦傾向は年次を重ねるごとに減少している。ただし、仕事観やキャリア観を明確に所持している回答者については、年次が高くなっても比較的強い挑戦傾向を示した。また、そのような、仕事観やキャリア観を明確に所持する回答者の多くが、1年以内に仕事に関係した学習機会を得ていることもわかった。

HRtech関連

SIGNATE、「内定者・新入社員へのデータリテラシー教育」の実態を調査し、新人向け教育プログラムをリリース。

  • AI開発・運用、DX人材育成サービスを提供する株式会社SIGNATE(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:齊藤 秀、以下 SIGNATE)は、ProFuture株式会社が運営する「HRプロ」(https://www.hrpro.co.jp)に登録する会員を対象に「内定者・新入社員のデータリテラシー教育の現状調査」(以下、本調査)を実施いたしました。

  • 新人向けデータリテラシー養成コース(http://signate.satori.site/lp-template-fresh)

  • 内定式から新卒半年目までの1年間で「データリテラシー教育」を実施し、即戦力となる社員を育成することが効果的です。

  • SIGNATEが提供するDX人材育成サービス『SIGNATE Cloud』の内定者・新入社員向けの「データリテラシー養成コース」では、以下のプログラムによって新卒社員の即戦力化を実現します。

  • STEP1: 内定期間 リテラシー講座を受講

  • STEP2: 入社直前or直後 現レベルの把握

  • STEP3: 入社1〜3か月目 弱点補強講座を受講

  • STEP4: 入社4~6か月目 Aランク到達を目指す

  • 72.7%もの企業がデータリテラシー教育の必要性を感じているが、実際に取り組んでいるのは18.0%に留まる。一方、従業員数5001名以上の企業は、データリテラシー教育に『取り組んでいる』割合が45.5%と突出して高い。

  • データリテラシー教育に『まだ取り組んでいない』企業の50.0%が「自社の現レベルがわからない」と回答し、「人材要件・定量目標が作れない」と課題を感じている企業も39.3%いた。

  • データリテラシー教育に『取り組んでいる』企業はそうでない企業に比べ、新入社員を育成対象として考えている割合が高い。

  • 全体の55.6%の企業が、内定者・新卒社員に求めるデータリテラシーとして「EXCEL等を用いてデータを絡めた資料作成」と回答。

経済・政治動向

2050年に活躍する「未来人材」のキャリアパスを経産省、ALE、東大が議論

  • デジタル化や脱炭素化といった大きな構造転換を背景に、2021年12月から5回にわたって経済産業省が開催したのが「未来人材会議」だ。2030年、2050年を見据えて産学官が目指すべき人材育成のあり方を検討し、5月に中間とりまとめとして「未来人材ビジョン」を公表した。冒頭で島津氏が、「未来人材ビジョン」の概要を紹介した。

  •  「今後は『問題発見力』『的確な予測』『革新性』が一層求められる。日本企業は人への投資が減少傾向にあり、個人も自ら学ばない現状があるが、技術革新などによりスキル陳腐化のスピードも上がるので、生涯学び続けることは不可欠だ」と島津氏は解説する。

  • 日本企業では新卒一括採用や終身雇用といった従来の仕組みに縛られているケースも多い。しかし、今後は経営戦略と連動した人材戦略を掲げ、働き手と組織が「選び、選ばれる関係」になることが重要だ。島津氏は「経済産業省ではこれを『人的資本経営』と定義し、様々な政策で支援している。未来人材会議では、学生と大学と企業がウィン-ウィン-ウィンになれるインターンシップの環境設計の必要性も論じた」と紹介した。

  •  さらに島津氏は、教育現場での課題として挙がった「探究学習を増やす」「高等教育と企業間の接続・相互の連携を強める」という点にも言及し、「知識の習得はオンラインで行い、探求力は対面で鍛錬する。そして社会に出た後も必要に応じて大学・大学院で学び直しやすい社会にしていく必要がある」と述べた。会議では「あるべき方向性へと向かう具体策」として以下の具体策を列記した。

  • 企業が教育に関わり課題解決力を育てる探求学習を強化

  •  創業11年目を迎えた宇宙スタートアップALEの岡島氏は、人材採用や人材育成の取り組みを紹介した。ALEは「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」というミッションを掲げ、気候変動のメカニズム解明のための大気データ事業や宇宙ゴミ対策装置の開発、人工的に流れ星を流す宇宙エンターテインメントなどに取り組んでいる。

  •  「未来人材ビジョン」には「スタートアップでは人的資本経営を推進している企業も多い」と明記されており、実際の事例として岡島氏は自社の人材戦略について紹介。「新卒一括採用する体力はないので、中途採用で世界各国の優秀な人たちを集めている。会社の成長とともに必要な能力が変わるため、縦割り組織では仕事が回らない。自分の守備範囲を超えて周りと結びつき、自律的・主体的に動ける人が活躍している」と話す。

  •  未来人材育成につながるSTEAM教育に取り組んでいる東京大学の大島まり氏は「パーパス経営やジョブ型雇用が増え、学歴より学習歴が問われるようになってきた。社会人も課題解決に必要な知識、技能を主体的に学んでいく必要がある。学校教育では教科を横断する探究活動で課題解決力を養うことが重要だ」と話し、学際的研究を高校で行う東大の試みを紹介した。大島氏は「高校では2022年4月から『総合的な探究の時間』が始まったので、一般の高校にも導入して探究のスパイラル作りを狙う。企業が教育に関わってリアルな体験を共有すれば学びが深まる」と話し、企業と教育現場の双方が協力して共創的な場を形成することの重要性を訴えた。

  • さらに、日本企業で博士人材が活用されていない問題点については、博士号を持つ岡島氏が「就活時に日本企業ではオーバースペックだと受け入れてもらえなかった」と振り返る。その要因として「博士人材は自ら問題を発見してドライブできるが、日本では研究室に閉じこもって専門性を極めている印象が強い。博士課程のカリキュラムの中に社会的な活動も取り入れるべきだ」と持論を展開した。また「新卒一括採用や終身雇用の中では多様性が許容されにくい」と人材採用のあり方にも疑問を呈した。

  •  それに対して大島氏は「私の研究室では博士課程の学生も企業に就職している」としつつ、「PBL(課題解決型学習)などで学生と企業が共同で課題に取り組むことが双方にとって学びや気付きの場になる」と語った。

  •  島津氏は「未来人材会議では、たとえ小中学生であっても、難しい社会課題をそのまま語ることが大事だという議論もあった。また探究的な学びの強化と同時に、文部科学省では大学入試でその力をいかに測るかにも取り組んでいる。インターナショナルスクールや国際バカロレア認定校、海外校出身の子どもたちを受け入れられる道を整えることも大切だ」と指摘した。

人材マネジメント

経営戦略としての「ウェルビーイング経営」

  • 今、なぜウェルビーイング経営か

ウェルビーイングを実現する必要性は、世界の共通目標となっているSDGsにも表れています。特にGoal3の「すべての人に健康と福祉を」やGoal8の「働きがいも経済成長も」を踏まえ、「従業員のことをどの程度考えた経営をしているか」といった観点から評価する投資家は少なくありません。

  • 先行企業の取り組み事例

それでは、具体的にどのようにウェルビーイング経営を推進していけばよいのでしょうか。国内外の企業における事例を見ていきましょう。

  • まず、サステナビリティに向けた取り組みの一環としてウェルビーイングを位置づけているのが、ユニリーバです。独自の人事制度によって、仕事だけではなく家庭や私生活での充実を同時に追求する従業員が増加傾向にあり、価値観や働き方の多様化が進んでいる点が特徴です。Googleなども、社員のモチベーションを上げ、生産性を高めたり離職率を引き下げたりすることを目的に、ウェルビーイング経営に積極的に取り組んでいます。

  • 日本では、楽天の取り組みが注目されます。CWO(Chief Well-Being Officer)をトップとする組織を立ち上げ、個人・組織・社会の3階層でウェルビーイングを定義し、従業員や組織風土にとどまらず、サービスやデータといった楽天の強みを生かした社会全体のウェルビーイングの向上実現を目指しています。

  • 他にも、丸井グループは、中期経営計画において自社の目標としてウェルビーイングを位置づけ、ウェルネス(身体・精神の健康)、ストレングス(自身の強みの発揮)、リレーションシップ(人間関係)、パーパス(目的との合致)の4段階 *1 でウェルビーイングの実現に向けた活動をしています。トップ層を対象にしたレジリエンスプログラムの他、社員が積極的に参画できる仕組みづくりにより、組織の活力向上などの成果につなげています。

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