高校を卒業するときに、入学検討者向けに書いた文章を読み返してみる
高校卒業を目前に控えた、ちょうど3年前のこの頃。わたしは、先生に頼まれた入学検討者向けの文章を書いていた。
通っていたのはICU高校(正式名称:国際基督教大学高等学校)。学年の2/3が帰国子女という学校で、日本の地元の公立小中に通っていたわたしは残り1/3の”一般生”(通称:純ジャパ)枠で入学した。
学校説明会で話した内容をもとに一般生の入学検討者向けに書いた文章を読み返しつつ、そろそろ時効かなと思うのでオープンな場所にも残してみる。
いつかのあなたやわたしの支えになることを願って。
入学を検討しているあなたへ
卒業を目前に控えた今、私が皆さんに胸を張って言えること、それはICU高校は絶対に入学したことを後悔させない学校だ、ということです。
「うちの高校はいい高校です」
「こんな素晴らしい授業をしています」
「かけがえのない仲間と出会えます」
どの高校の見学に行ってもおそらく、同じことを言われるでしょう。でも、その高校がいいかどうか、授業が素晴らしいかそうではないか、かけがえのない仲間と出会えるかどうか、そんなこと決めるのはあなた自身です。
結局のところ高校は人が入っては出て行く容器でしかないんだな。
「卒業」という言葉にせき立てられるようにしてこの高校をあとにしようとしている私は、最近それをよく感じます。
3年間を過ごしたその場所で、自分は何を得たか。どう変わったか。どんな未来が見えたのか。
偏差値なんて、進学実績なんて、どこの大学に行くかなんて、そんなことよりもっともっとずっと大事なことは、3年間で自分の心の中に一本でもいい、太い柱がたったのかだと思います。
私は、この学校で「自信」を失い、そして自信を得ました。
中学校の頃の私には「自信」がありました。少し勉強すれば、テストも成績も常に上位にいることができました。周りと比べて自分の点数が高い。成績が5だった。その頃の私の「自信」は、簡単に数値化できてしまうものでした。私が自分自身に価値を見出しているのではなく他人からの評価や数値が私の「自信」でした。それは、本当に脆い自信だったと思います。
高校に入学して、初めてこんなにたくさんの賢い人たちに出会って、私は自分の価値がわからなくなりました。英語はもちろん、国語でも数学でも叶わない帰国生。そんな彼らに対して劣等感を覚えたこともあります。
でも、ICUハイで三年間を過ごすうちに、少しずつ少しずつ「私はこのままでいいんだ」と思うようになりました。そして、そう思わせるようにしてくれたのも、周りのたくさんの帰国生たちです。
「私は私、あなたはあなた。と割り切って考えられるカッコよくて潔い帰国生のおかげで、お互いを尊重することがここでは当たり前です。
私はICU高校にいると、どこか自分の深いところで呼吸できるような、ホッとする気持ちになります。家にいるような気負いのないのびのびした自分で居られるのは、「みんな違ってそれでいい」という安心感があるからです。
三年間で私が得た自信、自己肯定感は、私の心の中の大きな柱となって、今の私を支えてくれています。
ICU高校で何を得るかはそれぞれ全く違うはずです。でもきっと、他のどの高校でも得られない何かを、このICU高校では得ることができます。
全国で数え切れないくらいある高校の中のたったひとつ、このICU高校で、世界中から集った仲間たちと3年を共に過ごせること。それがどれだけ恵まれていて、そしてその時間がどれほど貴重だったか、私は今、その幸せを噛み締めています。
ICU高校は、入試の制度や便宜上、一般生と帰国生の二つに区別されます。帰国生が3分の2をしめる学校生活に不安を覚える一般生もいるでしょう。私もそうでした。
でも、心配は無用です。入学して、どんどん楽しくなっていくうちに、「自分が一般生である」という意識、あるいは引け目は薄れていきます。そして、皆さんの心には「自分はICU生である」という誇りが生まれるはずです。
これから高校受験を控える皆さんにとって、ICU高校への入学は、まだひとつの選択肢にすぎないかもしれません。でもそれが近いうちに、ひとつの選択肢からひとつの未来、そしてひとつの現実になることを願っています。
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