これからの人生でまーったく役に立たないもの
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ありがとうございます。
高校生の私も喜んでおります!
今回の記事は、
ノーテンキ高校生だったわたしが、
運のいいことに大学に進んで(私の年から推薦枠が増えた)、
バイトに、サークル、心置きなく睡眠を貪る時間、
たまーに勉強(そのせいで四年生すごく忙しかった自業自得である)
という平々凡々な4年間を過ごし、
みんなとは違う袴が着たいという理由で
アンティーク着物に身を包みながら参加した、大学の卒業式のお話です。
着物屋さん、これからもお世話になりたい素敵なお店なので、リンク貼っておきますね。
友達とお写真とるのも素敵だと思います。ぜひに。
#みんなの卒業式
※ ※ ※
「やばーいこんな日まで遅刻だよ……もうちょいで着くってLINEしとこ」
わたしが一年生の頃、初めて見送ったサークルの先輩が着ていたお着物が華美な色合いではないのに、ものすごく可愛くて、その人らしくて、心ときめいたのを忘れられなかった。
学校帰りに同じ学部の子を引き連れて、お店に足を踏み入れたのを今でも覚えている。後日、母というスポンサーを連れて再訪し、他の子とかぶらないオリエンタルな柄の青い珍しいお着物を借りるのを決めた。
着縁さんに向かって、下北沢駅の改札を抜けて走る。走る。
「ほんと、集合時間に来た試しがない!」とまた言われてしまう。
汗だくになりながら、下北沢の駅を走る。
小田急線が地下に潜ってどのくらいだろうか。
私はちょうど時代の節目だからか、青春を過ごしたmy名所的なところがことごとく無くなっていく。
小学校…卒業後移築
中学校・高校…改装につぐ改装
初めてキスした場所…下北沢の今はなき高架上
大学だけ、かろうじて残っている。
そのまま残っていてくれ…頼む。
「すいません!遅くなって!」
着縁(こちらも移転前)の赤い扉を勢い良く開ける。
「ほんとだよー今日くらいちゃんとおいでよ笑」
絶賛着付け中の友人たち。
私は、汗だくなまま、へらへらと笑った。
「順番に着付けちゃうから、とりあえず汗ふいてていいよ〜」
店長さんの言葉にあまえて、汗がひくまで、にやにやとみんなを見ていた。
そう、今日が、わたしの学生最後の日、卒業式です。
✕ ✕ ✕
「じゃぁ、式が終わったら返却にきてくださいね〜ご卒業おめでとう〜〜楽しんでね〜」
着縁の店長さんに見送られ、大学に向かう。
大学校内の講堂で卒業式をするので、
4年間そんなに飲めやしないのに毎日のように、飲み屋にいっては千鳥足で歩いていた道をしゃなりしゃなりと少し背筋が伸びる。
「撮るよ〜はい!」
しゃなりしゃなりと歩いていたかと思ったら、
カメラのシャッターのタイミングで、高くジャンプした。
私は思っていたよりも、遥かにこどものままだった。
学生じゃなくなるのにね。わかってなかったなぁ、そしてウン年たった今もたいして変わっていない。ごめんなさい。
講堂に向かう道も、入学式と健康診断くらいしか来てないななんてぼーっと考えてたら、式が始まった。
一度しか歌ったことのない校歌を、友達とクスクス笑いながらなんとなく歌う。私は、そんない時間が、おもしろくて、忘れたくなくて、携帯で録画していた。
全体の卒業式が終わり、学科ごとに教室に招集がかかった。
ちなみにわたしは、絵を描かなくていい芸術学科である。
自意識だけを育んできてしまったといっても過言ではない。
ホールで散り散りになっていた、
同級生たち(腐っても芸術学科だからか個性的な袴の人が多かった・コスプレはいなかった)とわいわいと写真タイムを楽しんでいると、
「卒業証書配りますよ〜席ついて〜」と学年主任なる先生が、いつの間にか教壇にいた。
「△△△さん〜」
ゼミの先生が担当生徒の名前を一人ずつ読み上げる。
名前が読み上げられ「わたしだ〜いってくる〜〜」と浮かれ足で証書をとりに向かった。
「おっ…今日は遅刻してませんねぇ〜〜ほほほ」
スラムダンクみたいなひげをもつ個性強めのゼミの先生に、遅刻常習犯ネタを軽くいじられ、
「へっへっ」とまたへらへら笑った。
✕ ✕ ✕
全部のゼミ生に証書をくばり終えて、
教授たちからのお祝いの小話みたいな時間になった。
「みんなご卒業おめでと〜う、みんな卒業できてよかったね〜がんばれ〜〜」のような、テンションだったと思う。
そんななかで、最後に話してくれたのは、
イタリア美術をこよなく愛し、
愛しすぎて子供の名前にもイタリア都市名をつけてしまう、
授業はいつも先生のイタリアで見てきたものの話で終わってしまう先生だった。(これは、特定不可避かw)
「皆さん、ご卒業おめでとうございます。
いや〜今年も皆さん卒業できてよかったよかった〜〜。皆さん、いろんな進路に進むみたいですね〜大学院で深めていく人、就職する人、様々ですね〜」
「僕らは、芸術学科なわけですが、正直な話、
この四年間で学んだことは、まーったく仕事に役に立ちません!」
「だって、ほら経済経営学部なら、仕事に役立つ知識もあるでしょう。法学部とかもね。でもねぇ…文芸学部はね…」
それいっちゃだめです……先生…って、私は思いましたともその時。
「でもですね!役には立ちませんよ!だけどもね、芸術学科で学んだからこその強みがあります!」
「それは、何かを美しい・素晴らしいと思える事です。
社会に出たとき、どうしても心が立ち直れない時、これからあるでしょう。でも、君らは芸術の素晴らしさを知っています!」
「こころがぽっきり折れてしまう、その前に君らは何かをみて聴いて美しいと思えることでしょう。芸術は必ず、君たちを救ってくれます。何を学んで来たのかを問われ、外に出たら役に立たないと言われてしまうかもしれません。恥じることはありません。そんな秘密兵器を君たち、私達は持っているのです。ふふふっ。」
いたずらっ子のような瞳で、芸術の愛を語る先生はいつもキラキラしていた。この日も変わらずに。
✕ ✕ ✕
数ヶ月後………
社会人になって、大学時代から付き合っていた人生はじめての彼氏に振られた。(前の記事にちょっと詳細あり)
映像の仕事について、その日は夜勤明けで
眠さと慣れない仕事疲労感と、ふらふらとしていた。
彼氏を失っただけなのに、私のことを私よりもわかってくれる親友も同時に失ったような気がした。
食欲がなく、食欲がないかわりに、体力を温存するかのように眠りこける時間が増えていた。
実家から大学に向かう電車と、仕事場に向かう電車が同じだった。
昼前の下り電車にはほとんど人がいない。
乗り換えの駅のホームで、電車を待っている時に、ふわっと本当にふわっとだけど、このまま線路の上で寝たらどうなるのかと考えた。
電車が入線してきたとき、
ぽつぽつ
お天気雨だった。夏の日差しの中に、ぽつぽつを雨が降ってきた。
オレンジの車体に弾く水玉。水の音。夏の匂い。雨の匂い。
「きれいだな……」
ふとひどく素直にそう思った。
そんな時に、先生の言葉を思い出した。
ふふふっ。
追記
大学の卒業式の写真を見直した。
当時付き合っていたサークルの先輩だった彼が、
会いに来てくれていた。
ツーショットをサークル棟の前でとってもらい、後輩に冷やかされながら嬉しそうな顔をしていた。
まぁ、その半年後くらいにどん底に落ちむんだけどな笑
とウン年後のわたしが、笑いながらこの記事を書いている
ふふふっ。
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