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極妻シリーズ一気レビュー

私は東映やくざ映画ファンなのですが、今更ながら『極道の妻たち』を一気見して、岩下志麻姐さんの美貌と迫力命を預けたくなるカッコよさに感服したのでレビューします!

「極妻シリーズ」は1986年に第1作『極道の妻ほたち』が公開され、その後1998年の10作目『極道の妻たち 決着(けじめ)』で岩下志麻版極妻は完結した、とされていますが(99年から高島礼子版、2013年には黒谷友香版も)、実はこの”岩下志麻版”、第2・第3作目は岩下志麻主演ではないのです。『極道の妻たちⅡ』(87年)は十朱幸代、『極道の妻たち 三代目姐』は三田佳子がそれぞれ主演を務めています。が、やっぱり

岩下志麻しか勝たん!

ってことで、4作目以降はすべて岩下志麻主演になったよう。

最初はちゃんと「極道の妻」がテーマなのだけど、岩下志麻がカッコよすぎて「極妻」というより「女極道」映画になってしまうところが面白い。

また、伝統的に「男の映画」を撮ってきて(美空ひばりや藤純子のような例外はあるけど)、女優より男優重視だった東映。当時、東映の看板俳優の何人かは「女が主演のやくざ映画なんか出れるか!」ということで出演を断ったらしい。そのためか、これまであまりやくざ役イメージがない俳優や若手俳優がたくさん出ていて、そこも見所のひとつだと思います。

それから、岩下志麻と同じく10作中8作に出演しているかたせ梨乃。隣のお姉さん的な雰囲気もありつつとにかくエロいかたせ梨乃の魅力(こちらもだんだん強い姐さんになっていくけど)はシリーズに欠かせない!かたせ梨乃が出ないと寂しいw

極道の妻たち(1986年)

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『鬼龍院花子の生涯』(1982年)でヒットを飛ばし、女性映画に乗り出していた五社英雄が監督。岩下志麻&かたせ梨乃姉妹のキャットファイトシーンや、血みどろの世良公則がかたせ梨乃の胸を揉みしだきながら死んでいくシーンが有名ですね。

組長が懲役で不在の間、粟津組を2倍に膨らませたやり手の妻・粟津環(岩下志麻)は、同じく夫が懲役に行っている極妻たちを集めて「懲役やもめの会」を結成し、ゴッドファーザーのように様々な相談に乗っている。

岩下志麻の妹役がかたせ梨乃で、豊満な肉体をちょっとダサい服で隠した清純派。が、姉にお膳立てしてもらったお見合い前のグアム旅行で岩下志麻と敵対する組の組長杉田(世良公則)にレイプされ、彼にベタ惚れ(定番w)、姉に背いて結婚し、姉妹対決に…という話。

記念すべき1作目。バーで襲われた岩下志麻、眉ひとつ動かさず、着物の下(太腿!)に潜ませたチャカで撃退するシーンがカッコイイ。

序盤から岩下志麻がカッコよすぎることはちょっと置いておいて、極道の男に翻弄される女の悲哀、敵の極妻同士になるからには二度と会えない姉妹の悲劇、がテーマなところは割と正統的女性映画と言えるし、この後もずっと五社英雄が撮っていたら全然違うシリーズになっていたかもな、と感じる。

ブレイク前の竹内力(イケメン!!)や、『ビー・バップ・ハイスクール』の菊リン役で強烈な印象を残した石井博泰が出ているのも嬉しい!!

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もうひとつ注目すべきは、「本家の姐」。岩下志麻の粟津組は堂本組の傘下なので、当然本家・堂本組の姐には頭が上がらない。似たような設定はシリーズ中に何度か出てくるけれど、岩下志麻を抑え込めるほどの迫力を出せているのは1作目の藤間紫姐さんただひとりではないでしょうか。カッコイイ!

極道の妻たちⅡ(1987年)

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監督は土橋亨。上述の通り、十朱幸代が主演です。

不甲斐ない夫(藤岡琢也)に代わって重宗組を取り仕切る遊紀(十朱幸代)だったが、その夫に堂々と浮気された上に「冷たい女」と言われて傷ついていたとき、出会った男が流れの博打打ち・木本燎二(村上弘明)。遊紀は束の間女に戻って大本の元へ行こうとするが、夫(藤岡琢也)が病に倒れたことで結局重宗組の姐という立場を捨てられないことに気づく。一方大本には別れた妻(かたせ梨乃)と娘がいて、一度は娘のためにカタギになろうとするが、やはり極道の道へと戻っていく…。

地味だけどストーリーに深みがあって、私は好き。極道としてしか生きられなかった村上弘明の哀愁ある色気が堪らないし、十朱幸代の時々蓮っ葉になる感じもリアルで良い。タンカ切るとき声が高くなるのがちょっと弱いかなーという感はあるけど。

かたせ梨乃は娘を名門小学校に入れるために肩書きのある男と再婚しようとしてるのにヌードモデルやるのは浅はかすぎるだろ…とは思うけど笑、そのちょっとバカなところが愛おしいよね。

元・博徒系女親分役の草笛光子もカッコイイ。「人生最後までバカ踊りや!」と言っていた粋な女。年下の愛人に殺されるところも素敵。

全体的に暗い中、重宗組の若衆たちは明るいイケメンが多くてちょっと癒される。セリフの増えた細い竹内力もいいし(柳沢慎吾と一緒にチンピラ役をやっているところが初期『ミナミの帝王』ファン的には嬉しい)、事件前?の木村一八(横山やすしの息子)は甘いルックスでかっこいい〜。

極道の妻たち 三代目姐(1989年)

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3作目。監督は高倉健とのコンビで知られる降旗康男。

病身の組長(丹波哲郎)を支えて組を切盛りする妻・坂西葉月(三田佳子)だが、組長の死によって勃発した跡目争いに入れ札で決まった寺田(成田三樹夫)ではなく武闘派・赤松(萩原健一)を推すことで介入し、対立を深めていく…。

そう、ショーケンが出てるんです!でもこの映画のショーケンはやたらモテるが故にいろんな厄介ごとを背負いこみ、女に振り回され、幸せが見えかけたところで殺される、というちょっとかわいそうな役回り。殺された理由も結局痴情のもつれだし。まあ主役は三田佳子なんだから良いんだけど、全体的に「女の浅知恵が組をボロボロにした」と言われかねない流れなのはちょっと残念。

ちなみにショーケンを殺すのは若き日の坂上忍でした。

極道の妻たち 最後の戦い(1990年)

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監督は有名どころに戻り、山下耕作。4作目からから遂に岩下志麻復帰です。

春日太一による岩下志麻インタビュー本『美しく、狂おしく』(文藝春秋、2018)によると、最初は1作目だけの予定だったのでとても驚き、「極妻役はこれで最後にするから」と説得されたことから『最後の戦い』というタイトルになったとか。本の中で、山下監督が記者会見の時に「テーマは岩下志麻です」と答えてくれて感動した、というエピソードも語られています。

この作品から、いわゆる「極妻」のイメージはできたと言えると思う。とにかく岩下志麻がカッコイイ。

・いかにもな悪徳弁護士(津川雅彦)にそこらへんの女相手のように不躾に口説かれ、無言で凄む岩下志麻。津川雅彦「あれは・・・ほんまもんの極道の目ぇや・・・」

・夫(小林稔侍)に刺されそうになる岩下志麻「あんたにわてが刺せるんか?人を殺すっていうのはなあ・・・こうやるんや!」(自らの足にドスを突き刺す岩下志麻) 

・喪服姿でけじめを取る岩下志麻

以上、3大カッコイイシーンでした。

「男より男らしい女」という、ともすればチープになりかねない役だけど、岩下志麻が演じれば、この人のためなら命張っても良い、いやむしろ死にたい、と思える本物の侠(おとこ)、という説得力が出るからすごい。

やはりこれほど極妻役がハマったからこそ、誰もが知る長寿シリーズになったんだろうなあ。

新・極道の妻たち(1991年)

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やくざ映画でおなじみ、中島貞夫監督。

例によって岩下志麻は「霊代」、彼女の息子役が高嶋政宏。高嶋政宏(若い!)はイケイケタイプのヤクザで、それを抑え付ける母とは対立気味なのだけど、冒頭から岩下志麻が「親父が甘やかしすぎたんや」などと言うので、普通逆だろ、と思って笑ってしまった。岩下志麻は終始「親父」の立場なのである。

「息子が死んでも涙ひとつ見せない」「恐ろしい母親や」と組員にまで批判的に陰口を叩かれるシーンがあるのだけど、これは男の組長なら賞賛されこそすれ、非難されることはないのではないか、と思って、なかなか考えさせられる。

セクシー弁護士・かたせ梨乃も良い。

新・極道の妻たち 覚悟しいや(1993年)

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監督は再び山下耕作。

東映の顔・梅宮辰夫が組長役で初めて出演した作品でもある。いやらしい感じがお似合いです。あと、草刈正雄が気弱なヤクザ役をやっているのも意外で面白い。

香港でも極妻口調で「誰かー、花杜のハウス知らへんかー?」「ドゥユーノー?」とか言うところは笑ったw

岩下志麻の割と直接的なラブシーンがあるのと、かたせ梨乃がはっきりと敵役で出てくるのが珍しい。

新・極道の妻たち 惚れたら地獄(1994年)

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降旗康男が二度目の監督。

岩下志麻がシリーズ中最も女性っぽい作品。愛していた夫を失うも、とにかく組を強くするために歯を食いしばって耐える女組長、という役。耐えて耐えて耐えたのにうまく行かず・・・最後は爆発!という流れはむしろ伝統的任侠映画路線と言えるのかも。

僧侶の格好で葬式に忍び込みマシンガンで皆殺しにする荒唐無稽さでさえ板につくところはさすがです。機動隊はなんで黙って見てるんだよ!と思うけどw

極道の妻たち 赫い絆(1995年)

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監督は関本郁夫。

岩下志麻カッコイイランキングではこれが私の中で第1位!!

この作品では、何よりもまず岩下志麻こそが本物の極道(堂本組組長の娘として生まれ、夫は堂本組の若頭。いわば実質婿養子。「極道よりも極道らしい」)、というところがポイント。

夫婦仲はとても良かったのだけど、色々あって岩下志麻が服役することになり自ら夫と離婚、その後夫は新しい妻(鈴木砂羽)を迎えることに。

鈴木砂羽は元姐・岩下志麻に嫉妬し、全身に刺青まで入れて対抗してくるのだけど、悲しいかな所詮はカタギの女・・・という象徴的なシーンが、

「あんた・・・彫り物しててもカタギの女やな。惚れた男のために人殺すんはカタギの女のすることや。筋違えたら、夫でも息子でも殺すんが、極道の女や

・・・それはもはや「極道の女」じゃなくて「極道」なのでは・・・???

とツッコミは入れるけど、めっちゃカッコイイ笑。

その言葉通り(伏線)、もちろん姐さんは、筋を違えて組員を見捨てた夫のけじめをきっちりと取りに行くのでした。

そもそも組長の言うことに反発してた若衆たち、岩下志麻が極妻スタイルで帰ってきたら「姐さん!!!」と集まって組の窮状を訴えてきて、頼られる姐さんめちゃくちゃカッコイイし説得力あるけど、組長は形無しである。

それから前作『惚れたら地獄』にもちょい役で出ていた元光GENJIの赤坂晃が、カタギになった岩下志麻を連れ戻そうとするチンピラ役で出ているんだけど、これがなかなか良くて、もっと俳優やればいいのになーと思った。

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あと「なんで松方弘樹がこんな一瞬しか出ないの?」と思って見ていたら息子の目黒大樹でした。さすがに似過ぎ笑。

極道の妻たち 危険な賭け(1996年)

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再度登場、中島貞夫監督。

今度の岩下志麻は、広域暴力団・阪松組の跡目争いに圧倒的な財力とカリスマ性で介入する北陸の女組長役。彼女が応援するのが、あまりうだつの上がらない佐渡(北村和夫)。「賭け事でも大穴を狙う方が儲けが多い」とのこと。なるほど。

岩下志麻の娘役として工藤静香がひどい演技で出ていて(若い頃の工藤静香、顔も歌も好きなんだけど演技はひどいw)、なんでかよくわからないけど4WD不倫で話題の原田龍二(かっこいい)と愛し合うことになってママの周辺を色々荒らす。工藤静香の演技もアレだけど役としても何がしたいんだか全然わからない笑。しかし、この岩下志麻vs工藤静香の構図は1作目の岩下志麻vsかたせ梨乃を彷彿とさせるものがある。

にしても、やり手な上に「見ていると震えがくるほどの美女」である岩下志麻に支援されたらそうしたくなるのも分からなくはないけど、「五分の兄弟盃をかわさせてくれ」とか他の組員の前で勝手に言い出すのは広域暴力団の組長候補としてはどうかと思うよ、佐渡さん。

極道の妻たち 決着(けじめ)(1998年)

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シリーズ最後の監督は、中島貞夫。

うーん、正直これは、上述の『美しく、狂おしく』でご本人も「これで終わりにした方がいいと思った」とおっしゃっていたけど、これ以上はいいかな、という作品だったな〜。

岩下志麻もあんまり出てこないし、かたせ梨乃はなんか違う人みたいになっちゃったし、話もまとまりがなく、正直イマイチだった。

しかし、1・2作目で二枚目だった竹内力が本作ではすでに萬田はんの顔になっているのが灌漑深い(『ミナミの帝王』は1992年〜)。あと大杉漣の変わらなさ。


まとめ

1作目の感想で「もし五社英雄がずっと撮っていたら」と書いたけど、通しで観るとやはり『極妻』はストーリーが甘くても岩下志麻のカッコよさで押し通すシリーズであり、もっと言えばそこが魅力なので、結果としてはこれで良かったと思った。「女の悲哀」は別の映画で観れば良いかなと。

それから、意図したのかはわからないけど、ある意味では男塾的な、「侠(おとこ)とは何か」というテーマになっているのも興味深い。「侠」は「男」ではなく、肉体的な性別は関係ない。実際、シリーズ通して誰よりも「侠」てあり「道を極めて」いるのは岩下志麻なのだ。

★K.ROSE.NANASE★

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