小説/シャッターの向こう側で 【U'z】#6 発端

【あらすじ】
蘭と凪がいつもと変わらぬ夜を過ごしている頃
命人と羅希、冷央は 大自然の中で
特別な夜を過ごそうとする。



鴨ノ端羅希 3月23日 木曜日 午後7時45分
                三重県 杜樫山

「─よし!テント張り終わったー!!」
「やったあ!!これで完成だね!」
「あー、お疲れ様、、、!」
 3人でふかふかの草原に転がる。
 春の初めの背丈の伸びきっていない柔らかい草は心地よかった。
 濃紺の空には星が輝いていて、冬も終わって寒さが緩んだ大気が僕らをやさしく包み込んでいる。

「お腹空いたねー」
「え、ごはん!?何作る?何作るっ?」
 爽やかに笑いながられおくんが言って、ごはんは何かと思わず2人にきく。
「キャンプと言ったら、やっぱりカレーでしょ!」
「カレー!?早く食べたい!!」
「みんなで作ろっか」
 早くカレーが食べたい。
 3人で作ったらどんな風にできるかな、、、?

「必要なものは、木の枝だけかな」
 れおくんが言った。
「そうだね!2人とも用意持ってこれた?」
「もちろん!僕は紙皿とか、スプーンとか、紙コップも持ってきたし、お水もあるよ!」
「俺も、カレーのルーもあるし、食パンとか、明日の朝ごはんの用意もあるよ」
「良かった!」
 僕たちは分担して、ここで過ごせる用意をしてきた。みこちゃんは、ライターとかウールとか火をつけるための道具を持ってるらしい。

「それじゃあ、探しに行こう!」
「「おおー!!」」
 これから始まる、僕たちだけの夜。
 期待に胸を踊らせながら、満点の星空に向かって、拳を突き上げた。

東雲冷央 3月23日 木曜日 午後7時50分
                三重県 杜樫山

 暗い道を3人で一緒に歩く。
 夜道は暗いけど、俺の懐中電灯が明るく照らすから、特に怖いなんて思わなかった。
「あっ!こういうの使えるよねっ!?」
「そうだね!これを使おうか」
「これもいいかな?」
「よし、それも持っていこう!」

 俺らはひたすらに一本の道を歩く。木の枝を見つけては、拾っていく。みこちゃんとらーくんの2人の両手が木の枝でいっぱいになったところで、俺は言った。
「そろそろいいんじゃない?」
「うん!こんなに集まったもんね!」
「帰ろうか!」
「火がつくと─うわっ!?」
「あ!!れおくん!!?」

 また歩き出したその時、俺はバランスを崩し、そのまま倒れた。自分で、靴ひもを踏んだみたいだった。
「大丈夫!?」
「ごめん!自分で靴ひも踏んだだけ!」
「そっか、怪我してない?」
「全然平気!あー、俺ダサかったかも、、、」
 半分笑いながら手で顔を隠す。バランスを保てなかったことが恥ずかしかった。

「はは!れおくん!気にしなくていいんだよ!」
「そうだよ!俺だってそういうときあるし!」
「それはそうだけど、、、って!2人とも笑うなー!!」
 2人は笑っていた。それは良かったけど、やっぱり恥ずかしい。2人は笑いながら手を貸してくれて、恥ずかしいけど、この2人と友達でいれて良かったとその手を取った。

「あれ、懐中電灯は?」
 俺が言うと、
「それならここに─」
 と、らーくんに指差されて─。

 少しだけ、時が止まった。
 、、、ような気がしただけかもしれない。

「ん?こんなところにあったっけ、、、?」
 らーくんが近づく。

「暗くて道も分かんなかったから、、、みこちゃん、どうした?」
 みこちゃんが隣で固まっていた。

「みこちゃん?」
 ぼーっと一点を見つめている。しばらくして、はっとしたように顔を上げた。

「それ、、、」
「え?」
 みこちゃんは近づく。
 じっと見て、それから手に取った。

「俺、知ってる」
「「、、、?」」

 地面に置かれた懐中電灯に照らされていたのは、どこか古びたカメラだった。

上水流命人 3月23日 木曜日 午後8時15分
                三重県 杜樫山

 知ってる。知っているけど、なんだか思い出せない。ただ、どこかでこのカメラを触ったことがある─気がした。
 これは、確か、、、。
「あ、写真だ」
 らーくんがつぶいた。
 とあるボタンを押すと、写真のフォルダーが出てきたのだ。
「わあ、すごいね!綺麗な空、綺麗な花、、、あれ?」
 らーくんが急に声を止めた。
「この写真、なんか変、、、?」

 それは、とある夫婦の写真だ。けど、何かがおかしい。
「なんか、、、おかしいね」
 そう言った俺の声は情けなく震えていた。
「、、、ねえ、みこちゃん。大丈夫?」
 らーくんに言われて思う。
 当然、大丈夫ではないと。
「もしかして、何か知ってる?」
「─!!」
 れおくんの声が、俺の頭を強く打った。

『何か知ってるんだな?』
『怒らないから答えて』
『命人くん』
『命人』
『命人!』
『命人!!』

「みこちゃん!!」
「、、、!」
 思わず、しゃがみこんでいた。
 顔を上げると、れおくんとらーくんが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫?」
「、、、うん」
 俺の声はかすれていた。
 れおくんは優しく微笑んで
「テントに戻ろう」
 と言った。
「カレー食べて元気出そう!」
 らーくんも続けて元気に言った。
「、、、そうだね」

 俺はこんなところでなんで、泣きそうになっているのだろうか。何を怖がっているのか。

 本当に、まだ何も分からない。
 答えは、出てきそうなのに。
 ─まだ、思い出さなくてもいいか。
 思い出すことが怖い。考えることが怖い。

 今は逃げていたい。


最後まで読んでいただいて ありがとうございました!
次回もお楽しみに!

みかんづめ。は最近 
和歌山県へ旅行に行ってきました!
海が広くてとても綺麗で
何よりも そこに住んでる人たちが みんな優しい!
自分が旅館で 温泉の準備に戸惑って
人を待たせてたのに その人 優しく笑って
見守ってくれてて!
嬉しかったなあ、、、(*´ー`*)

ごはんもおいしかった!
まぐろとか梅干しとか、、、。
おいしいものが たくさんですね!

みなさんも ぜひ 遊びに行ってみてくださいね!
おすすめは 那智の滝です!


それじゃあ
またね!


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