小説/シャッターの向こう側で 【U'z】#5 変わらない夜

【あらすじ】
愛知県から電車で6時間。
命人、羅希、冷央は無事、三重県に到着した。
その頃、明日三重県へ出発する予定の蘭と凪は
家で夜を過ごしていた。


歩堂蘭 3月23日 木曜日 午後7時
            愛知県 冬雫町 歩堂家

「いただきまーす」
 今日の夕飯はハンバーグ。お母さんお手製のデミグラスソースがかけてあって、その上にはケチャップでハートマークが描かれている。
 箸で上手く切り分けて、口の中にいれると、肉の旨味と、ペッパーのほどよい辛さでいっぱいになった。
「おいしいなあ」
「ご飯おかわりしていいからね」
 お椀に炊きたての白米が盛り付けながら、お母さんは言った。

 明日は知人の友達の家に泊まるから、お母さんの料理を食べれなくなる。だから、十分に堪能しようと思っていた。
 とはいっても、三重県で漁師をやってる人だから、おいしい魚料理が味わえる。少し寂しいが結局明日のご飯も楽しみなのだ。

 つまり、ごはんはおいしい。

 呑気に考えて、そんな結論で満足していたとき、ボクのスマホが振動した。
「誰かな?、、、スマホどこだろう」
「え?あ、ソファーの下じゃん!あんたまたそんなところに置いて、、、」
 忘れていた。ボクは床にスマホを置いてそのまま放っておくことが多いから、よく怒られるのだ。
 ちゃんと覚えてるし、やろうとはしてるけどどうしても忘れてしまう。ボクは忘れっぽかったんだと改めて思った。

 スマホの画面に写し出されていたのは、知人の名前だった。

歩堂蘭 3月23日 木曜日 午後7時05分
            愛知県 冬雫町 歩堂家

「やっほー。どしたの?」
「よお、お嬢!元気にしてたか?」
「ボクは元気だよ。がっきーは?」
「オレはいつも元気だっての!」
 がっきーこと石垣(いしがき)さんはお父さんの親友で、小さい頃から仲良しの友達みたいな人だ。

「明日さあ、オレの車で三重行くんだろ?どこに迎え行ったらいい?」
「いつもの駅でいいよ。冬雫駅」
「了解!お姫は知ってるのか?」
 お姫とは凪のこと。凪はお姫様みたいに本当に可愛らしいから、ボクはその呼び名をひそかに気に入っていた。
「凪も知ってるよ、多分」
「多分!?ちゃんと確認しろよ!お嬢は適当だからなあ、、、」
「がっきーが言えることじゃないけどね」
「ぐはっ、、、、、、!!」
 がっきーは本当に面白い。やられる真似をしたがっきーは「ああ、、、」としゃがれた声を出した。
「じゃ、また明日ね」
「なぬ!?お嬢!オレはまだ話足りてないぞ!」
「明日お話ししよ」
「オレ一人寂し─」
 ぶつっと切って、それから席に戻る。

「蘭はストレートに言うね」
「んー?そうだったかな、、、」
 会話の内容はもうほとんど覚えていない。
 まあ、明日話せるしいいや。
 ごはんもおいしいし。

 ボクはもくもくと箸を進めた。

残夜凪 3月23日 木曜日 午後7時30分 
            愛知県 冬雫町 残夜家

 私はドアのノックで本を読む手を止めた。
「はい」
「私、霞だよ」
「姉さん!」
 私は勢いよくドアを開けて、抱きついた。
「どうしたの、凪ちゃん」
「姉さんに会えて嬉しいよー!」
「今日の朝も話したのに」
「でもでもー!」
「ほんと、かわいいなあ」
 姉さんは屈託なく笑って、私の頭を優しく撫でた。

「今から一緒にゲームするんだけど、、、凪もどう?」
「やった!やる、何のゲーム?」
「マリオカートだよ」
「お姉ちゃんも来る?」
「うん。颯もやりたいって」
「わーい!楽しみにしてるね!」
 良かった、と姉さんは笑って、またね、と言った。
 私は手を振って、ドアを閉める。
「楽しみだな、、、」
 小さく呟いて、また本を開いた。


最後まで読んでいただいて ありがとうございました!
次回もお楽しみに!

最近は 外も冷えてきていますね。
秋を感じます(*´ー`*)
体調に気をつけて 元気に過ごしてください!

それじゃあ
またね!

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