高級お寿司の味

数年前から寿司打を続けている。
始めは一番簡単なコースである「お手軽コース」でさえ太刀打ちできずにキーボードを見つめていた私が、最近「高級コース」でちょくちょく得できるようになったのだ。

(寿司打をやったことが無い人はとりあえず1回やってみてください。できればお手軽コースと高級コースの二つとも。)

自分のタイピングの遅さに危機感を持ったきっかけは高校2年生(違うかもしれない)の時。
情報技術基礎(違うかもしれない)という授業で寿司打に出会ったことだった。

隣の席の友達は、スマホの文字入力をPC配列で行っているタイプの友達であり、タイピング強者だった。
一方私はフリック入力タイプの人間。パソコンをバリバリ使うことも無く、タイピングとは無縁の人生だった。

しかし、大学でも専門でも、高校卒業後すぐに就職するとしても、何をするにもいずれタイピングと向き合わなければならないことは分かり切っていることである。
とりあえずキーの配置ぐらいは覚えようと思い、暇なときにぼちぼち(不甲斐ない結果にイライラしながら)寿司打をやっていた。

自分がスムーズにタイピングしているイメージが付かない。指をどう動かせばいいのか分からないし、それを覚える気もないし。

それでも惰性で続けていると、キーの配列自体は少し覚えることができ、遅いなりになんとか「お手軽コース」で得できるようになった。そうなってくると、

((ちょっと指をどう動かすか勉強してみるか…))

という気になり、月日を重ねるうちに「おすすめコース」でも得できるように。いつしか私の目標は「高級コース」で得することになっていた。
目標ができたことで、今まで以上に寿司打にのめり込み、無心でバーチャル寿司を消費し続ける日々。だんだんと「高級コース」で得できそうな気がしてきた。

そしてその時は突然やってきた。初めて高級コースで得することができたのだ(2024年2月8日の出来事である。嬉しすぎて日付を記録していた)。

「嬉しっっ…」

一人暮らしで、咳をしても一人状態であるのにも関わらず、つい漏れ出てしまった。数年前まで夢のまた夢だと思っていたことがふと現実になったのだ。
世の中を見渡せば「寿司打でちょくちょく得できる人」なんて沢山いるが、そんなことはどうでもいい。飴(ame)だの皿(sara)だの、たった4文字打ち込むことさえままならなかった頃の記憶が鮮明にあるからこその感動。目標達成の瞬間であった。

燃え尽き症候群という言葉があるが、私の手は未だ止まることを知らず、ここ数日だけを切り取ってみても、少しずつ得できる回数が増えている。明確な目標を失った今、どこまでタイピング速度を上げることができるのか。
自分に期待している。

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