患者さんからのお手紙
理学療法士になって16年以上。
病院や施設、在宅、といろいろな場所でリハビリを提供してきたのだけど、その中で患者さんから心のこもったお手紙を頂くということが結構あった。
純粋に嬉しい。
その人と一緒に頑張った時間も、
その時間に生まれた気持ちも、
結果としての体の機能や生活の変化も、
私に対して抱いてくださった気持ちも。
昨日もそんな感じでお手紙を頂いた。
もらったとき、私は泣きそうになった。
帰って読んで、また泣きそうになった。
そんなお話。
「このままでは歩けなくなります」と言われて10年以上
関節の変形がすごくて、10年以上前に歩けなくなると言われたらしい。
歩くと悪化するから歩き過ぎないで、自転車を使った方がいい、とも言われたらしい。
騙し騙し生活をしてきて、ついに痛みが今まで以上になって、もう歩けないのかも…と絶望的な気持ちで整形外科クリニックに受診をしたとき、私との出会いがあったと言う。
レントゲン上の変形は確かにひどかった。
どこまで痛みを軽減できるか、やってみないとわからない部分も大きかった。
でもやれることはやっていきたい、できる限りのことを提供しつつ、一緒に考えていきたいと思った。
棒のように支えるだけになっていた足
10年以上も痛みをかばいながら生活してきたから、その足の機能は「支える」ことで精一杯になってて。
足の裏全体で地面に接地し、足を棒のようにして支えて、次の一歩を出すという、ヒョコヒョコした歩き方。
棒のようにして支えるだけになっていた足はいろんな筋肉が落ちていて、左右の足の太さもだいぶ違ってた。
痛い関節の周りには、関節を守るためにガッチガチになった筋肉。
関節を守るために筋肉を張らせて固めているのだけど、それも限界にきているようで、ちょっと触るだけでその筋肉たちは激痛のようだった。
こんな状態になっちゃうと、守りたい関節も守れてないと思う。
案の定、全然力を発揮できない筋肉になってた。
私「今までかなり頑張ってこられましたよね。
ここ、かなり痛いでしょう?
頑張って関節を守ろうとしてきたんだと思うけれど、それも限界になってるんだと思います。
だから歩くと関節にも筋肉にもかなり負荷がかかるようになってて、痛みもひどくなったんじゃないかしら。」
その方は50代女性だったけれど、片足立ちが数秒すらできない状態。
グラグラで、ご本人もビックリしていて。
女性「ここの筋肉がこんなに痛いのも知らなかったし、片足立ちがこんなにグラグラなのも自覚なかったです。」
うんうん、なかなかそうやって自分のからだを見られないよね、専門家じゃないし。
私「まずは変形した関節を守れるように機能改善したいと思います。
大雑把に言うと、関節を守る筋肉がちゃんと働けるようにしたくて、しかも体重を支える強さもつけたいです。
ただ、それだけだと多分不十分で。
長く棒のように支えるだけになってるから、足全体の筋肉が落ちていて。
お尻周りは特にバランスをとったり、踏ん張る力を発揮するのに大事なところなんですけど、ここが弱いと変形した関節にも大きな負荷がかかってしまうから、ここも一緒にきたえたいです。
かなり落ちてるから頑張らなきゃいけない部分もあるけれど、逆に言うと、必要な筋力がついたら絶対に痛みは減ります。
変形の部分をどこまで動かせるか、どこまで負荷を減らせるかは何とも言えないけれど、やれるところまでやってみましょう!!」
そうやって週1回のリハビリは始まったのね。
あ、変形の場所は個人特定の恐れがあるので、明記できないのだけど。
もうすぐで期限の150日
最初はかなりの痛みとも戦いながらのリハビリで。
だけど、毎回少しずつの結果が出ていて。
ヒョコヒョコ歩いていた歩き方は、少しずつ真っ直ぐになり、今ではどっちが悪かったかもわからないほどキレイな歩き方ができるように。
階段も難しかったのに、サクサク上がれるようになったよ、スゴイ!
1日8000歩までは症状を出さずに歩くことも可能になった。
まだいくつかの筋肉の力が不十分なのだけど、それは自分でも練習していけるところなので、ちょうど期限で終了の運びとなった。
私は正直、まさかここまで回復するとは思ってなかった。
ケアの仕方をお伝えしたのだけど、それを上手に実践した積み重ねもカタチになったのだと思う。
私のリハビリのスタンス
私は人のからだの声を聞いたり、自分ではどうにもならない部分に手を入れたりすることはできても、その人のからだをコントロールすることはできないわけで。
その人がわかるように説明して、その人が自分でケアできるように教えられて、その結果こうなると見通しをお話しできて…その程度。
最後はその人が自分のからだとどう向き合うか、付き合うかなのだと思ってる。
どんな言葉で気づきにつながるか、
どんなエクササイズで自分のからだを感じられるか、
どんな自主トレやセルフケアで目の前のこの方は自分のからだと付き合っていけるか、
そんなことばっかり考えてる毎日は本当に幸せ。
ハッと気づく瞬間ってあるのね。
こんなに左右で違いがあったんだ、とか、
こんなにここ痛かったんだ、とか、
こんなにうまく筋肉使えなかったんだ、とか。
うんうん、そうなの、その自分のからだの声をちゃんと聞いてあげてほしいな、そんな想いでいるの。
もちろん伝わらない人もいるんだけどね、そういう人はそういう人なりのステージというか、
もがく時期、人に受け止めてもらう時期、痛みを伝えて自覚する時期、悩む時期、いろいろあるんだよね。
そんな時期の人には、とにかく自分の感じてる感覚をたくさん言葉にしてもらって、いちばん困ってる動作を細分化して、今向き合う要素をハッキリさせるようにしてる。
わかるとスイッチが入る人もいるし、
わかってもらえると感じてどんどん気持ちがあふれちゃう人もいる。
いろんな人がいてね、いろんな時期があってね、いろんな頑張り方がある。
変形がひどくなってしまった女性は、つらい毎日の中でずっと向き合ってこられた方だったから、私の説明でやれることが見えて、前向きになれて、リハビリはスムーズに進んで。
2人で頑張ったよねって笑い合ったんだけど、そんな日が来るなんてね、ホントに嬉しかった。
もちろん変形は治らない。
でも立ったときの関節の位置関係はだいぶ改善したかな、筋力で支えられるようになったから。
動きも良くなったしね。
ただ、変形とはずっと付き合っていくことになるのね。
支える筋肉が弱くなったり、固くなって使えなくなったら、やっぱりまた痛みが出ると思うし、変形も進んでしまうと思う。
日頃の気づきやケアは大事になる。
だけどね、そうやって自分のからだを大切にしていくってすごくステキなことだと思わない?
悪くなったことを嘆くよりも、悪くなったからこそケアの大切さを実感して、加齢変化とともに衰えていくからだとも上手に向き合えるようになっていくんじゃないかしら。
悪くなったからこそ気づけるの。
だから、その気づきを大切にしてほしい。
お手紙に書かれていた内容で、自分の想いが伝わっていることを嬉しく思う
頂いたお手紙には、治してくれてありがとうって言葉は一切ないの。
だって、私が一方的に治すというスタンスを取らなかったから。
それは伝わっていたんだなって、嬉しく思う。
「状況をよく聞いて、その時に必要なことに寄り添ってくれた」
とか
「私の気持ちを汲んで治療してくれた」
とか
「どう自分のからだと付き合っていくか、の指導で心が落ち着いた」
といった具体的なこと挙げてくださったのだけど、そこを感じてくださってて嬉しいと思ったの。
そうしたくて接していたから。
もちろん変形の部分の動きを出すとか、荷重の掛け方を変化させるとか、筋肉を使えるように促通していくとかはスキルが必要だし、なかなか自分じゃできないことを私が治療としてやっていたりもするんだけど、大切なことは他にもあるって思ってたから。
それは自分のからだとの付き合い方を知って、実践できるということ。
私が大切にしたいと思っていることがちゃんと伝わってたのが嬉しい。
そして、それが希望につながってたことも嬉しい。
大丈夫、うまく付き合っていったら、まだまだ歩ける。
それを自分のからだでも実感できたから、気持ちも落ち着いたんだよね。
うん、ホントによかった。
私「とっても上手にケアされているので、『痛いな』と感じたときは無理せずに、寝る前には頑張った足をリセットしてあげてくださいね。
まだもう少し力が欲しいこの筋肉は、隙間時間を利用して『ながらエクササイズ』をもう少し続けてみてください。
もう少し歩くのが楽になるはずです。
そして、どうしようもなくなったり、困ったらいつでも受診して先生に相談してみてくださいね。」
そうやってお別れしたのだけど、困ってもここに来ればなんとかなる、そう思える安心感ってすごく心強いって思ってるの。
そんなふうに、そういう相手の気持ちへの寄り添い方、声のかけ方、自分の治療者としてのあり方…自分の中でだいぶ固まってきたなぁって感じて嬉しい。
この辺の心の変化はやっぱり自分の心ととことん向き合ったからかなって思ってるんだ。
だから私は noteで自分と向き合うのが好き。
自分のあり方につながっていくのが嬉しい。
私、ちゃんと夢を叶えてるんだなぁ。
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