「それでも面白いからやる」。クリエイティブ職を諦めかけた2児の母が、作詞作曲家・岡嶋かな多さんに音楽の企画を提案するまで #4荒牧しのぶさん|第2回『日本の音楽が世界に打って出るためにすべきことを考えてください』
企画メシ第2回の講座は「音楽の企画」。ゲスト講師に、作詞作曲家の岡嶋かな多さん(以下かな多さん)をお招きしてお話しいただく回でした。
裏企画メシ第4回目では、フリーランスのコピーライター・荒牧しのぶさんを取材しました。
今年9月から、個人事業主向けのコンセプト言語化スクール『ド・コンセプト塾』を開設する荒牧さん。
自身もフリーランスとして「ことば」を軸に活躍する一方、以前は「クリエイティブ職はやりたいけど飯を食っていける段階ではない」と、諦めかけていたといいます。
就職でクリエイティブ業界の仕事が叶わず、結婚、子育てを経て、それでもクリエイティブで食っていくことを諦めなかった荒牧さんが、今回の音楽の企画にどう向き合ったか伺いました。
起業したい人同士のつながりで、自分の役割を見つける
ー荒牧さんは現在、コピーライターでもあり、ブランディングのようなお仕事もされていますよね。
荒牧:はい、たしかにコピーライティングかブランディングかでいうと、ブランディングやプロデュースに近いかもしれません。
お客さんはだいたい、起業したてでコンセプトがまだ固まっていない、初期段階の個人事業主の方が多いですね。「この商品をどういう方向性で売る?」とか、「告知文どうする?」とか。そういう、個人の見せ方の部分でのご相談をいただきますね。
ーなるほど、個人事業主の方々の相談を受けていた結果、いまのお仕事につながったのでしょうか?
荒牧:仕事のつながり方っていうと、いちばん最初は起業したいママさんのつながりがありました。
たとえばハンドメイド市場が盛り上がっていたときに、自分で商品を持って売りたいって人たちのつながりがあったんですけど、自分のサービスを持つといろいろな壁にぶつかるんですよね。
それこそ、プロフィールをどう書こうとか、商品を紹介するキャッチコピーが欲しいとか。
そのつながりの中で「文章が得意です」って主張できたのが私だけだったんですよね。
ーたしかに、商品を売りたい人のつながりの中で、「文章ができる人」って重宝されそうですね。
荒牧:女性って文章や言語化に苦手意識がある方が多いみたいで。おかげで周りに頼っていただける機会が増えてきて、その中で私のサービスを構築していったという感じですね。
かな多さんが自分のクライアントだったら何を提案する?
ー最初に、「日本の音楽が世界に打って出るためにすべきことを考えてください」という課題を見たとき、どう思いましたか?
荒牧:「え、これ、私がかな多さんになにか言えることある?!」って(笑)。ブラスバンド部に所属していたので、音楽は好きなんですけど、業界のことは全然知らなかったので。めちゃくちゃ難しかったです。
ー音楽業界のトップの人が私たちに「すべきことを考えてください」って、かなり衝撃的でしたよね(笑)。
企画メシでは「そもそも」「たとえば」「つまり」の順で物事を積極的に解釈することを教わりました。企画を考える上では特に、最初の「そもそも」が大事になってくると思うのですが、荒牧さんはどのように「そもそも」を考えたのでしょうか?
荒牧:いちばん最初に思いついていたそもそもは、「そもそも世界に打って出る必要があるのか」っていうところで。でも「打って出る」って言ってるんだから打って出ないことはないよなって。
だけど、「打って出る」っていうのは、自分たちが世界に出ていくわけではなくて、人を呼び込むっていうように考えたいと思ったんです。
ーそうなんですね。
荒牧:でもこれだけじゃないよなって思って。そもそも企画がなぜ出されたかっていうのにちゃんと向き合わないとこの答えが出せないと思って、音楽業界について調べ始めたんです。
K-POPは市場が小さいから最初からグローバルを目指していたことは聞いたことがあったし、日本は音楽市場の大きさに甘んじてきた感覚も何となく得ていたんですけど。「そんなのみんなわかっているよね」って思って。
ーたしかに、音楽業界のことを調べて思いついた企画を並べてみても、「これじゃないよね?」と思うことばかりでした。
荒牧:それでもかな多さんが私たちに求めることを考えたときに、かな多さんが私のクライアントだったら何を求めるだろうかと考えたんです。
あんなにトップの方が私のところに依頼するわけないけど、もし来たらビビりながらもかな多さんや音楽業界以外の人しか考えられないことを言うしかない。ということはそれこそ、一般人目線でもいいのかもしれないと思って企画を出しました。
荒牧:そしてこれは私の願望も入っているんですけど、なんで日本が世界でヒットをとらなきゃいけないかを考えたときに、私はもう日本の音楽業界が憧れる魅力的なものに見えなくなってるんじゃないかなと思ったんですよね。それこそSKY-HIさんの記事を見てかなり影響を受けたんですけど。
SKY-HIさんのオフィシャルサイトはこちらから
荒牧:自分自身にも子どもがいるし、かな多さんにも子どもがいることを考えると、子どもたちが未来に夢を描くことを可視化したいと思って。
日本からデビューして世界に出たい、もしくは出れるという状況を夢見させるにはどうしたらいいかっていうと、いま韓国に行かないとグローバルを狙えないのなら、そういう状況を日本で作れればいいと思うんです。
ー子どもたちが夢を描けるように、という荒牧さんの想いと、いまの音楽業界について調べられた内容がうまくマッチした企画ですね。
企画を出すのは恥ずかしい。それでも開き直る
ーかな多さんは第2回の講座で「やられた、は毎週思う」とおっしゃっていました。荒牧さんも過去のnoteで『やられたなーの数だけ成長がある』というタイトルで記事を書かれています。
ーお二人は「やられた」をポジティブに転換されていると思いますが、私はどうしてもマイナスに捉えてしまいます。「やられた」を伸び代に転換できたきっかけなどはありますか?
荒牧:「やられた」をマイナスに捉えてしまう気持ちはすごくわかって、私もそれで何回も諦めようとした人生でした。
もちろんいまでも悔しいは悔しいし、企画出すときも「うわああ!」と思うけど、もうどこか開き直っているんですよね。
いまでも私は何も持ってないと思うんです。それでも人に認めてもらうためには、「私はこうです!こんなことを目指しています!」っていうのをバンと示すことで、恥ずかしいけど開き直っているって感じですね。
だから毎回企画メシの企画を出すのは恥ずかしいけど、でもクリエイティブをやりたい人はこの恥ずかしさと付き合っていかなきゃいけないんだって思います。
ー企画を出すのって勇気が入りますよね。企画メシに入って考え方が変わったことや影響を受けたことはありますか?
荒牧:企画ってやっぱり面白い!ってことを実感できるこの時間が、企画メシに入って得たことですね。
先ほどの「やられた」の話にも通じるんですけど、「それでも面白いと思えるからやる」っていうエネルギーって人生において大事だと思っていて。このエネルギーがいま自分が個人事業主でやろうという想いを支えているから、それを自覚できるっていうことが得たことだと思います。
ーここまでお話しいただきありがとうございました!最後に企画生にメッセージをお願いします。
荒牧:同じ目線で頑張っているので、一緒に楽しみましょう!
企画メシの中でむしろいちばん子どもでいてやろうと思っているので。本当に子どもっぽいかもしれないですけど(笑)。
楽しい気持ちからポジティブな企画って生まれると思うので、みなさんと楽しみたいですね。
半年後ここで出会ったつながりがまた新しい価値を生むかもしれないし、つながることを楽しめたらなって思います。
<取材・執筆=遠藤美果(『企画メシ2023』企画生)>