チーム全員から「明るさの人」と評されたコミュニティデザイナーの、緻密なチームづくりの裏側に迫る #5栗田加奈子さん|第3回『チームの企画』
『企画メシ』第3回目の課題は『チームの企画』。
事前に設定された5人1組のチームで「年内に本気でやりたい企画を考える」内容です。
第5回『裏企画メシ』では『チームの企画』について、コミュニティデザイナーの栗田加奈子さんにお話を伺いました。
栗田さんはコミュニティ運営を趣味でスタートしてから現在、コミュニティデザイナーとして独立を果たし、2015年から法人化されています。
『チームの企画』のチームメンバーからは、「笑顔」「明るい」印象を持たれる栗田さん。ですがその裏には、いいチームづくりのための緻密な策略が隠されていました。
今回はそんな栗田さんに、コミュニティの在り方からチームづくりで心がけたことまで、お話しいただきました。
楽しむだけじゃない!コミュニティは「なぜ?」を解決するもの
ーコミュニティデザイナーとは、具体的にどのようなお仕事なのでしょうか?
栗田:企画を立ち上げたい人のスタートアップをはじめ、ブランディングやプロデュースの仕事をしています。他にも、企業さんとのコラボイベントや、地域活性に特化したコミュニティ運営など、今まで本当にいろいろなお仕事をさせていただいてます。
事業化する前は、趣味でコミュニティの運営や企画を17年くらいやっていました。当時はただ自分が「あったらいいな」と思っていたものを形にしたり、その時々の悩みを解消したりするために企画していましたね。
ーコミュニティをつくりたいと思う人はいても、それを実際に仕事にする人はそう多くない印象があります。コミュニティ運営を仕事にするために必要なことはありますか?
栗田:そもそもコミュニティって、「趣味や好きなもので共通して集まる」イメージがあると思うんですけど、私は「何をするか」以前に「なぜそれで集まっているのか」が大事だと思っています。
「なぜ」が同じ人って、動く最初の鍵や、大事にしている核が一緒なんですよね。
ーなるほど。たしかに、『チームの企画』でも感じましたが、同じ「なぜ」を持つ人が集まるパワーってすごいですよね。
栗田:はい。だから、楽しむだけがコミュニティの役割ではなくて、地方創生とか福祉とかの面でも、誰かの何か困っていることを解消したいと思う人が集まって、解決を目指していくことがコミュニティの持つ力だと思います。
1人の「なぜ」では解決できないけど、「なぜ」が一緒の人同士でやると仕事になるくらい解決できるっていうことが、コミュニティを運営する中でわかったんです。今回の『チームの企画』で、「これ仕事になるな」って思いませんでした?
ー思いました(笑) 栗田さんは今まで、どうやってコミュニティの企画を立ててきたのでしょうか?
栗田:企画の出し方で言うと、最初に私が「こういうことやりたい!」と言い出しっぺで言って、周りが集まってくれてチームが組まれることが多いですね。
ーまるで「この指止まれ」みたい!それで人が集まるって、栗田さんは本当に人望が厚いんですね。
栗田:本当にありがたいことです。情熱と愛と感謝だけ持っているので、拝み倒して歩いてます(笑)
得意・不得意の開示で、初回から「言いたいことを言える」環境をつくる
ー今までの企画で、進めやすかった企画や進めにくかった企画はありますか?
栗田:それこそ、自分が本当に楽しい、やりたいと思う企画は熱量がすごいですね。
たとえば私は「クラブハリエさん」というバームクーヘンが有名な洋菓子屋さんがすごく好きで、一緒にお仕事するのが夢だったんです。それが叶うってなったときは周りへの巻き込みがすごかったですね。絶対楽しいから!って。
だから今回の『企画メシ』の『チームの企画』は、私にとってチャレンジでしたね。チームメンバーほぼ全員初めましてで、しかもまあまあなタイトスケジュールで何かひとつを生み出していくって、結構すごいことだと思っていました。
ー初めましての人ばかりのチームの中で、栗田さんがチームづくりで意識されていたことはありましたか?
栗田:はい、初回のミーティングで1個投げたものがあって。「得意なことはやって、苦手なことは誰かに任せよう」っていうようにしたんです。
たとえば私はアイデアを出すのは得意だけど、書面にまとめるのは苦手です、って。みんながそれぞれ自分の得意と苦手を挙げて、最初にお互い言える空間にすることを心がけました。
ー得意だけじゃなくて、苦手も言えるのがいいですね。
栗田:今回みたいにタイトスケジュールの中、みんなが負荷がかからないチームってどういうチームだろうね、というのも初回に相談しました。
自分がどう立ち回れば周りも自分も輝くか、常に考える
ーチームの企画が始まる前に、栗田さんに相談しておけば、自分のチームももう少し円滑に進んだかもしれないです。
栗田:自己紹介で得意・不得意と合わせて自分の興奮ポイントを伝えると、みんなバカなこと言い出すんです(笑) それくらい、自分が何に興奮するかを伝えるのってすごく自己開示だし、その人の好きがわかるんですよね。
あとは、チームが私の色にならないように、私は一歩引くようにしました。チームの中で私が最年長であることはみんな知ってくれていたので、私に気を遣ってくれていたんですけど。他の人がメインで進めていった方が意見出しやすいと思って、私はひたすらにこにこして場を盛り上げていました。「それめっちゃいいじゃん!」「なるほど!」とか。
ー最初の場づくりはしっかりされて、あとは自分の立場を考えた立ち回りをされていたんですね。笑顔の裏にそんな戦略的な一面が……。
栗田:わかっちゃった?(笑) チームのミーティング中はずっと笑ってるんですけど、自分がどういうポジションになれば他の人が輝くんだろうとか、私も楽しめるのかとかずっと考えている気がします。
人との「今この時間」を大切に、謙虚に生きる
ー今回の『チームの企画』では、年下のメンバーが多かったから一歩引く立ち回りをされていたと思いますが、チームの年齢層や男女比が変わると逆に栗田さんが前に出て進行することもあるのでしょうか?
栗田:あります、全部私がバーって仕切るときもありますね。
ー自分の立ち回りを使い分けられるの、すごいですね!それは経験から培われたんですか?
栗田:心理学やコーチングの勉強もしてきたんですけど、今までセッション含め1万人以上カウンセリングしてきたので、「こういう話し方をする人は、こう伝えたら自分のテンションを上げて頑張れる人かな?」とか、大体わかるんですよね。
ーえ、こわっ(笑)
栗田:究極は、その人の在り方とか大切にしていることが、話すことで全部出るんだなって、今になってわかったんです。
だから私も、ご縁のある人たちとの今っていう時間を大事にしたいと思っています。上部でやるってことは無くなりましたね。心が動くものだけに集中しています。
今回の『チームの企画』でも、たくさんのことを教えていただきました。こうやっていろいろな世代の人と交流できるのは嬉しかったです。
同時にそれは自分がフラットじゃないと入れない環境だから、謙虚に生きていくって大事だなって思いました。人生後半戦に入りますが、まだまだ知らないことばかりです。
ー『企画メシ』の人と関わると、学べることばかりですよね。
ここまでお話しいただきありがとうございました!最後に企画生にメッセージをお願いします!
栗田:出会ってくださったことにありがとう、と伝えたいです。『企画メシ』が終わって終わり、じゃなくて、それぞれの人生の線につながる1つになったら嬉しいなと思うので、ぜひ絡んでください!
<取材・執筆=遠藤 美果(『企画メシ2023』企画生)>