自分を語らずして「伝わる」広告をつくった、山梨の映像クリエイター #2桐原侑希さん|第1回『自分の広告をつくる』
『裏企画メシ2023』第2回目の企画生は、山梨を拠点に活躍する、映像クリエイターの桐原侑希さん。
2年前にフリーランスとして独立後、主に企業さん向けの広告映像などを企画されています。
「企画には毎日困らされている」桐原さんが今回企画した『自分の広告』は、約1分間の動画。再生すると、『自分の広告』にも関わらず「Kiriってどんな人?」の冒頭から始まります。
一体どういうことなのでしょうか?制作の裏側を取材しました。
どうすれば伝わるか?を突き詰めて集めた、自分の「口コミ」
ー桐原さんはいままで、自分を紹介する映像は制作したことがあったのでしょうか?
桐原:はい、何度か自己紹介の動画は制作してYoutubeにあげています。
ー今回『自分の広告をつくる』という課題でしたが、これまでの自己紹介動画とつくり方を変えたところはありますか?
桐原:いままでのYoutubeとは正反対のことをしないとなっていうのはあって。というのは、大体こういうお題を出されたときに、誰もが思いつく王道の企画とかテーマとかはあると思うんですよ。おそらく今回は「私はこんな人です」ってみんなぜったい書くよね?って思ったんです。
ー実際ほとんどの人がそうでしたね。
桐原:でもそれって、いかようにも言えると思うんですよ。
たとえば飲食店で「うちの料理美味しいですよ」って宣伝する。そりゃ美味しいでしょってなりますよね。
ーどの店も当然「美味しい」と宣伝しますもんね。
桐原:それよりかは、お客さんが「あそこの店美味しかったよ」って言った方が説得力があると思うんです。だから自分も今回の企画でその手法を取りました。
ー自分を「口コミ」してもらったんですね。
桐原:いかに伝わるかを考えたので、伝わる仕組みにした方がいいと思いました。自分だったら「私はこんな人です」って言われるより、「あの人って実は努力家でさ」って言われる方が「次からそんな風に見よう」って思えますし、印象に残りますからね。
企画から取材、制作までわずか1週間
ー短い時間でこれだけの人数の「口コミ」を集めた行動量に感動してしまったのですが、どういう段取りで『自分の広告』をつくられたんですか?
桐原:この動画のために企画書をつくったんですよ。それを撮らせてほしい人にLINEで送って撮りに行ったり、時間がない人はzoomで5分だけ時間もらったりしました。
桐原:この企画書も10分くらいでつくって、BGMも何となく頭にあったもので決めて見つけて、だいたいジャスト1分でオチが出るようにしました。制作まで1週間くらいですかね。
ー桐原さんって、映像ももちろんですが静止画つくるのもうまいですよね。
桐原:こういう企画書は毎日つくるので、いかにテキストで想像させるかというのを大事にしています。映像作る人は意外と言語化が苦手な人が多いのですが、自分は好きでやってますね。
映像の強みを活かした「?」からオチまでの演出
ーこの自分の「口コミ」をすべてテキストに落とそうとすると、文字量が多すぎてしまいますよね。
桐原:そうですね、映像だから今回の企画が成立したっていうのもあると思います。
ー文字量が多いと、途中で読むのをやめてしまう人がほとんどですが、映像だと情報量は同じでも最後まで見れてしまいます。これが映像の魅力だと思うのですが、最後まで映像を見てもらうために心がけていることはありますか?
桐原:それは広告やCMをつくる上で大事な視点で、大きく2つの要素があると思っています。「これってどういう動画なんだろう?」と最初の数秒で思わせる意外性と、逆に「こういう動画なんだろうな」と思わせるわかりやすさ。
今回の『自分の広告』だと、「Kiriってどんな人?」という文言から「自分のことなのにどういうこと?」と最初につかむ。見ていくうちに「ああ紹介してもらうのね」とわかる構成ですね。
ー阿部さんが講義でおっしゃっていた、「?」から入って「!」に持っていくイメージですかね?
桐原:そうですね。動画的にもオチをつけるように、奥さんには3つ嫌なところを言ってもらって、だけど奥さんだよっていうのをつくりました。そこは企画というより演出の部分ですけどね。自分はあの動画で自分の名前しか言ってないんで(笑)
ーでも、最後に桐原さんが自分の名前を言うあのオチがあるから、動画的にしまるというか。
桐原:逆に最初から最後まで友達や知り合いだったら、ただ自分が気持ちいいだけなので(笑)
最後どうなるんだろう、っていう予感を持たせた広告なんですかね。
その人の大義名分を乗せて、自信を持って企画する
ー今回『自分の広告をつくる』企画に向き合ってみて、企画に対して考え方が変わったことや、これから仕事に生かしていけそうなことはありますか?
桐原:先月から企画メシに参加して、新しい発見ももちろんあったんですけど、「やっぱ広告つくる人ってそういう考え方するんだなぁ」と共感する部分が多かったです。
実はここ最近、映像の仕事をする中で「企画」の部分で頭を抱えてしまうことが多く、まさに壁にぶち当たっていたんです。
でも初回講義で阿部さんの話を聞いて、自分の企画に向き合う姿勢は大きく間違ってなかったんだって思えました。
ー実際、阿部さんや他の企画生たちも、桐原さんの広告を「推し3選」に選んでいました。
桐原:自分の広告がちゃんと届いたのがわかって、少しばかりですが自信になりました。実際仕事の方でも、CMやシナリオの企画に対して自信を持って幅広く提案できるようになったんです。
それに加えて、ただ自分が表現したいファーストではなく、依頼してくれた人や届けたい人の大義名分が企画に乗るようになりました。
ー企画をつくる上で、より「この人に伝わるように」という気持ちが強くなったのでしょうか?
桐原:その人だからこそできる企画をつくれればいいんだって思いました。
企画を考えていても、「これちょっと微妙だな」と思うものがあって。自分がちょっとそうしたモヤモヤを抱えていると、受け取る側もモヤモヤしているんです。だから、つくる本人がワクワクしてないと受け取る側にも響かないと思っています。共感性を付けたり、サプライズを付けたり。
そういう意味で広告って、さまざまな感情を生み出すコミュニケーションツールだと思っています。
ーここまでお話しいただき、ありがとうございました!最後に企画生にメッセージをお願いします。
桐原:みなさんと仲良くしたいです!企画生はそれぞれの立場、生活、目標ややりたいことがあって、そういうことに関して感度が高い人が集まっている場所だと思います。そういう話をするのが好きなので、みなさんの話を聞きたいですね。
<取材・文=遠藤美果(『企画メシ2023』企画生)>