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イケてない上司を突き上げるのは得策か?
上司をイケてないと思うとき
あなたが企業のトップでない限り、必ず最低1人はあなたの業績を評価する上司が社内にいるはず。その上司がイケてない上司で、しかも当面の間は一緒に仕事をしなければならないとしたら、あなたはどうするか。
まず、イケてない上司にも様々なタイプがある。
暴言を吐いたり、すぐに癇癪を起す
ねちねちと重箱の隅をつついて、レビューや会議の時間が長い
タスクの期限設定を細かく指定し、逐一報告を求める
あまり深く内容を考えずに指示を出し、後でちゃぶ台を返す
能力・スキルや知見が足りず、仕事を蛇行させる
毎晩飲み歩き、午前中は体調不良で機嫌が悪い
タバコの休憩が多く、会話をしたくてもなかなか捕まえられない
あなたが上司より優秀で(少なくとも自分ではそう思っていて)、上司の粗が見えれば見えるほど、上司への不満は募り、「なんでこんな奴の下で働かなきゃいけないんだ」という憤りが湧いてくるだろう。できればこの上司を突き上げ、自分に対する態度や行動を改めさせたい、あるいはこの職場から追い出したい、そういう衝動にも駆られると思う。
ただ、このイケていない上司を突き上げること、追い出すことはあなたにとって得策なのだろうか。あなたが求めるように、上司はあなたに対する態度や管理のやり方を変えてくれるのだろうか。突き上げられた上司は居たたまれなくなり、おめおめと尻尾を巻いて職場を去っていくのだろうか。
私の経験からいうと、上司を突き上げることであなたにとって都合の良い結果が訪れることは決してない。かなりの高確率であなたは上司に敗北し、場合によってはあなたが職場を去ることになるだろう。なぜならば、あなたの評価を握っているのは、まぎれもなくその上司だからだ。
上司の上司にアプローチする
では、一体どうしたらよいか。上司があなたの評価を握っているように、上司の評価を握っているのは上司の上司である。とすると、あなたの上司を何とかしたいのであれば、上司の上司に訴えかけるしかない。
上司の上司へのアプローチは、意外と有効であるし、好まれる。なぜなら、上司の上司から見た場合、上司がその後輩に対して、普段どのような振る舞いをしているのか意外と見えていないので、後輩が上司をすっ飛ばして報告してくる情報はとても貴重であるからだ。ただし、このアプローチが有効であるためには絶対的な条件がある。
それは、あなたが確かに上司より優秀であること。
上司の上司はそのことをどのように判断するか。それは、あなたの顧客からの評価だったり、職場の評判だったり、直接目にした資料やプレゼンだったりする。つまり、上司の上司は、少なくともあなたの上司よりあなたのことを優秀だと思っている必要がある。さもなければ、上司の上司はあなたの上司の味方に付き、結果としてあなたの評価が下がるという結末で事態は収束する。なので、あなたの実力、そして周りの評価を読み間違わないようにすることが何よりも重要だ。
結果として得られるもの
あなたの上司に対するルサンチマンがある日暴走し、上司の上司へのアプローチを実際に行い、あなたが勝利したとしよう。その場合に得られるものは何か。
あなたの上司がイケていなかったという証明
あなたが上司よりも優れていたという評価
あなたの上司の上司からの高い評価
ただ、得られるものばかりではない。あなたは職場で以下のような人間と思われるリスクもある。
自分の優秀さを過信し、周りを見下す人
いざとなったら職場の人間関係を壊す、非情な人
地位や評価にこだわる、自分本位な人
実際に自分がイケてない上司を持った時のことを思い出すと、得られるものと失うものを冷静に比較衡量できるような状態ではなかったと思う。むしろ、失うことが分かっていて行動したことも実際にある。
振り返って思うのは、企業に勤める限り、イケてない上司に当たるのは「所与」であるということ。イケてる上司に当たることの方が圧倒的に少ない。そもそも、イケてる上司は一体どこに棲息しているのか。イケている上司がいるということ自体、もしかしたら我々の妄想なのかもしれない。