フェミニンとは何か?川端健太郎展
京都新聞 2021年5月15日 掲載記事
川端健太郎は2000年に岐阜の多治見陶磁器意匠研究所を卒業した。同じ世代の卒業生には青木良太、桑田卓郎、新里明士など、個性的な陶芸家たちがいて、同時代の彼らの作品を作風や進化といっしょに鑑賞するのも興味深い。
有機的、そして女性的と評されることが多いのが、川端の作品だ。やわらかな磁土を手びねりしてつくる柔軟なボディの中に、ガラスの小片や石、釉薬を色とりどりにちりばめる手法は手芸的な細やかさがある。出品されている大小のスプーン型のオブジェは、スイスの彫刻家・ジャコメッティが女性をスプーンに見立てた作品『女—スプーン』とコンセプトをを共有するシリーズで、お腹や子宮を思わせる丸みと、長い頸とでできている。土の中でガラスが溶け、焼成の際の収縮率の違いで亀裂が走り、磁土が肉のひだのように縮れる。そこに辰砂のピンク、釉薬の緑と鉄の黒い粒が混ざる色彩には怪しい生々しさがある。
のびやかなスプーン型と同じ手法で作られながらも異なる印象を与えるのが、新作の「Knee Bridge」だ。荒々しく割れた塊に筒状のパーツが自重で折れ曲がって重なる。タイトルのKnee(=膝)は、ひねった土をつなぎ合わせる製作プロセスに由来していて、「何かと何かの架け橋となる存在を言い表す方法を探し求めていた中で出会った言葉」という。うつわからオブジェへ、作品のスケールは大きく展開しているが、デビュー以来、変わらないのが、肉体や生命のイメージ。思った効果を狙って何度も作品を窯に入れることもあるそうだ。
焼くことは生命を再生させる、または新たに結晶させようとする試みだろうか。新作の一つには、困難な手術を意味する「Batista」とタイトルがつけられている。
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