物議を醸しつづけるアーティスト、岡本光博が驚いた、台湾の「日本神」
京都新聞 2024年9月21日掲載
ブランドバッグの生地で縫ったバッタ『バッタもん』、人気キャラクターが水に浮かぶ『ドザえもん』など、商標、著作権や表現の自由を考えさせる作品をつくる岡本光博。2005年に台湾・高雄でのプロジェクトを映像と写真で振り返る。
滞在制作に赴いた岡本は、終戦まで約50年続いた日本統治時代に建てられた神社の石燈籠の遺構を見て興味をひかれ、復元を提案する。占領を美化する行為だという反発は予想できたが、大々的に報道され、殺害予告まで受けた。それでも実現できたのは、統治時代を知る高齢の人たちが協力してくれたからだった。
展示会場に流れる郷愁に満ちた歌声は、当時、音楽教師だった林添材さんが幼い頃から親しんだ、日本語のお祭りの歌だ。街には日本人街が残されていた。
「台湾と日本の交流には、さまざまな人の思いがあった。その拠りどころをつくりたい」という岡本のアーティストとしての提案に、日本の教育を受けた世代が、記憶と歴史保存の営みとして賛同した地元の人がいた。
大きな物議をかもした岡本自身が、逆に驚かされたこともあった。
第3代総督の乃木希典ほか、日本の軍人や軍艦が「日本神」として民間信仰の対象となっていたことだ。岡本はその聖像を台湾式の額に入れ、複雑に結び合った台湾と日本の絆のひとつの現れとして掲げる。
(KUNSTARZT=東山区三条通神宮道東入ル 22日まで)