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民藝と生活工芸ブームが生んだ、「作家ものの実用品」というジャンルは、民具を作家作品としてつくりなおす文化的な「アップサイクル」かもしれない

京都新聞 2024年5月25日掲載

 陶芸家の工房の古民家内のギャラリーでの、工芸作家三人展。金属に微妙な風合いを表現する金森正起。繊細でゆらぎのある吹きガラス作品の小澄正雄。無垢であたたかな木の質感を活かす木工の川合優

木枠に色ガラスの柵をはめた虫籠
ガラスの持ち手をつけた銀メッキの水桶

それぞれの素材と技を寄せた合作も展示。木枠に色ガラスの柵をはめた虫籠は小澄と川合、ガラスの持ち手をつけた銀メッキの水桶は小澄と金森の作品だ。

見ているだけで、使った時の気持ちよさが感じられる

金森は川合との合作で、車輪と引き手を、鉄を鍛えてつくった荷車と、小型の鍬(くわ)のような農具「草引」を制作。いずれも実際に使える。草引は素朴な木の柄と鍛冶(たんや)した厚い刃が力強く、手にして草を刈る心地よさが、ありありと想像できる。

金属で食器や建築小物を作っている金森だが、もともと憧れていたのは農業や林業の道具をつくる野鍛治で、今回、その技で初めて作品制作に挑んだ。

お値段は量販店の廉価な品の100倍くらい。鍛冶(たんや)した厚い刃は力強く美しい「草引」。

雑器を作家作品として作る/鑑賞する。これは、器物とその使い方のアップサイクルかも


茶の湯の「見立て」は実用品を鑑賞の対象に転じる美の手法だが、昔ながらの農具の形と機能をそのままに、観客に野趣を喚び起こす作品として制作、提示することは、流行りの言葉で言えばアップサイクルか。

昨今の民藝、生活工芸ブームにともない、量産品とも非日常的な高級工芸品とも異なる「作家ものの実用品」の市場が確立された。

この工芸の範疇の拡がりは、使うことを前提とした、器物の新しい創造と鑑賞の形を育んでいる。

白田=船井郡丹波町森山田 5月28日まで)


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