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アーティストという「野生」たちに心揺れる、「ゆらめくいきものたち」展

京都新聞 2022年 11月26日掲載

京都精華大学内Terra-sで開催された、いきものがテーマのグループ展。

船井美佐(写真)は、楽園のイメージを空間的に展開する。宗教や人種を問わず、人が楽園を思い浮かべるとき、そこには動植物がいる。
大学で日本画を学んだ船井は、花鳥画の世界観と「輪郭で描く」という日本画のセオリーを生かして、アクリルボードを切り抜いて、その輪郭で蝶や鳥、動物のかたちに切り抜いて描く。ボードには鏡や影のような黒い板が使われていて、周りの景色も人の視線も吸い込む。
観客は、絵を観ているつもりで、楽園に住むいきもののシルエットを入り口に、異なる世界に誘われる。

 野田ジャスミンのインスタレーションは、陶器の花が無数に並ぶ。同じ形の規則的な反復は、一見、無機的だが、絶え間ない植物の増殖と、生命力への讃歌にも見える。今村源は、現れては消える水蒸気をモチーフに、生けとし生けるものの命のはかなさと柔軟性に共感を寄せた。安喜万紀子は、国内外へ赴き、環境と呼応しながら風景を描く。人の意志ではコントロールしがたい金箔や鉱物を画材に用いることで、自然界の偶然性を、作品にとりこんでいる。
 イケガミヨリユキは、動植物を幻想的に描き、動物を描くことが多い絵本作家・ミロコマチコは、色彩をほとばしらせる描法そのものが、動物の瞬発力や疾走感に似る。大型作品は、何層にもビニールや紙を重ね、それを破いて描いてゆく。次々に切り替わる次元は、野生動物が瞬時、瞬時を全開で生きるかのようだ。
 衣川泰典は、野山や渓谷で石を採取し、その場の風景を石版画に写している。それは石の目線から見た風景で、石もまた、いきものなのだ。

 自然と感応し、見えないものを描き出す彼らアーティストは、実社会の中でもしたたかにサバイヴしている現代的な野生の持ち主だ。
同質な人の群れから距離を置いて先を歩む、彼ら「ゆらめくいきもの」たちのビジョンへと心を向けたい。緑豊かな大学構内にある開放的な展示空間は、観客の野生も目覚めさせる。
Terra-S=京都精華大学 2020年 12月24日まで、日曜休
 

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