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MtK「旅と夢」展。旅情なき「遠くへ行きたい」
京都新聞 2024年3月9日掲載
小さなモニタにうつる映像。そこに鳥が横切ると、センサーが反応し、レトロなおもちゃのピアノが鳴る。サウンド・アーティスト、すずえりの作品だ。時空を超え、メディアと現実の間をまたいでインタラクションが生じ、懐かしい音が響く。
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大和田俊は、石灰石にクエン酸を染み込ませ、鉱物が溶ける音を増幅させ、いま我々が立つ大地とそれが結晶した時間を音として感じさせる。小林椋は、SF小説の一節からインスパイアされたオブジェを制作。昔なら未来的だと感じただろう、機械仕掛けの装置のフォルムは、むしろ懐かしく見え、緩慢な動きは未来も過去も志向していなさそうだ。
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相川勝は、パンデミック期に、衛星からの映像を通して辺境を探索した映像を展示する。水戸部七絵(みとべななえ)は、作家のJ. G. バラードが、62年に記した「これからのSFがめざすべきは、外宇宙ではなく『内宇宙』である」という宣言の一部を描く。
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バラードの言葉は、今や現実になった。仮想現実は現実と共存しているし、人はその気になれば外界と断絶された中に引きこもり、時空を超えた宇宙へ旅することができる。キュレーションを担当した畠中実は、「このテクノロジカルな状況から、現在の移動と空想について、作品を通じて考えてみたい」と、メディアを通して考え、制作する作家5人の視点を集めた。
(MtK=左京区岡崎南御所町 3月23日まで 日休)