オリエンタルベジ基準のモスのグリーンバーガー。不覚にも食後うどん屋に直行
今年はコロナ、BLMと同時に、プラントベースフードの年だと記憶されるのではないか。
マクドもドトールも植物バーガーのメニューを出してきた。食の二大対抗イデオロギー、ファストフードvsヴィーガン、「フード右翼」と「フード左翼」の未知との遭遇である。分断と衝突の明日はどっちだ。
丸大ハムが、伊藤ハムが、お肉そっくり大豆ミート商品を販売している今、大豆バーガーくらいではもう驚かないが(小さい声でお伝えしますが、食肉加工品メーカーさんは原料の肉のかさ増しのために、長年大豆ミートを扱ってきた実績がある)、モスのグリーンバーガーの特筆すべきポイントは、ビーガンの中でも調理難度の高いオリエンタルベジ基準に攻めてきたこと。これは動物性食材のほか、五葷(ニンニク、ニラ、らっきょ、ネギ、タマネギ)も使わない食のルールだ。その理由は、強壮効果のある食べ物が修行の邪魔になるから。地球のためにこれは食べないようにしましょう、とか動物福祉の面でいかがか、とか理屈をこねまくるベジタリアンじゃなく、仏教ベジの精進ルールは、あくまで修行目線のものだ。
欧米のベジタリアンレストランでは、肉から旨味を得る代わりに、玉ねぎやニンニクを過剰に加えた料理が結構見られる。(あれ、胸焼けするんですよね。)肉も、さらに玉ねぎも使わないオリエンタルベジ仕様のハンバーグの難しさ、ご想像いただけるだろうか。
さて、そんな高いハードルに挑戦したグリーンバーガー。大きくて甘いトマトとレタスが、まずフレッシュ。バンズは青っぽい風味でヨモギパンかと思ったが、ほうれん草が練り込まれているとのこと。で、大豆バーガーである。肉っぽい歯応えもなかなか悪くない。いや「肉」だと思うと当然、素っ気ないが、野菜の仲間と考えれば十分なお味と食べ応えがある。ひと昔前の「がんもどきと、どこが違うのか?」と首を傾げるようなベジバーグ(豆腐の混入度が高い)を思い起こせば、この完成度は素晴らしい。ファストフード店がマスを納得させるオリエンタルベジバーガーを提供していることが、そもそもすごい進歩ではないですか。
と、感慨にふけり店を出て、不思議なことに足が真っ直ぐうどん屋に向かっていた。不覚ながら、わが胃が「あれ?今の、バーガーじゃなかったの?」と違和感を表明。バーガー用に用意した大きめの空きボリュームをちゃんと満たしてくれとせっついてきた。バーガーだと思って食べると、胃がこういう見込みギャップを訴えてくることもあるかもしれない。
それにしても、ちょっと思ったのだが、プラントベースのブームに乗るだけなら、ニンニク玉ねぎをきかせた大豆バーグで「ベジ気分」で十分なのに、モスは何故にそこまで高いハードルを設定したのか。そしてこのメニューだけで終わってしまったのか。サイドメニューを見てみたら、ドトールにはベジヨーグルトがあるが、モスがセットに推奨してるのはチキンナゲット。オリエンタルベジバーガーと鶏肉を同時に食べるとは?分断と衝突を感じる。