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ドイツ語ニュース解説:「死なせること」は処罰対象ではない(ドイツ最高裁判決)

2020年2月26日に出たドイツ連邦最高裁判所の死亡ほう助に関する判決を報じるARD Tagesschau の記事を文法的・内容的に解説します。

Urteil des BGH
"Sterben lassen" ist nicht strafbar
Stand: 26.02.2020 07: 58 Uhr
Der BGH hat zwei Freisprüche in Sterbehilfe-Fällen bestätigt: Ärzte hatten Frauen bei deren Suizid-Wunsch unterstützt und auf Rettung verzichtet. Begleitetes Sterben ist nun möglich - aber nur bedingt.

【解説】
BGH=Bundesgerichtshof: ドイツ連邦最高裁判所
Freisprüche – der Freispruch: 無罪判決
Sterbehilfe-Fällen – der Sterbehilfe-Fall: 死亡ほう助事件。die Sterbehilfe「死亡ほう助、安楽死」とder Fall「事件、事案」の複合語。
der Suizid-Wunsch 自殺願望
hatten …. unterstützt: unterstützen 「支援する、サポートする」の3人称複数過去完了。判決よりも前のことを表します。
(hatten …) auf … verzichtet: auf etwas verzichten「~をあきらめる、放棄する」の3人称複数過去完了。判決よりも前のことを表します。
Begleitetes Sterben: 付き添い・随伴付きの死
【試訳】
ドイツ連邦最高裁判所の判決
「死なせること」は処罰対象ではない
ドイツ連邦最高裁判所は自殺ほう助事件での2件の無罪判決を確定した。以前に医師が女性たちの自殺願望を支援し、救助を放棄した事件だ。(この判決で)いまや添い付きの死が可能になった。ただし、かなりの制限付きだ。

Von Kolja Schwartz, ARD-Rechtsredaktion
Eine 44-jährige Frau möchte nicht mehr leben. Nicht auseiner Lebenskrise heraus, sondern weil sie unheilbar krank ist. Seit ihrer Jugend leidet sie an einem äußerst schmerzhaften Reizdarmsyndrom. Krämpfe und Schmerzen begleiten ihr Leben.
Ihr Arzt verschreibt ihr Medikamente, die zuihrem Tod führensollen. Die nimmt sie ein und schreibt dies dem Arzt per SMS. Als der bei der Patientin eintrifft, ist sie noch nicht tot, aber bewusstlos. Der Arzt lässt sie sterben, bleibt bei ihr, bis sie tot ist.
Im Februar 2013 war das, in Berlin. Seitdem musssich der Arzt dafür vor Gericht verantworten. Heute nun bestätigten die obersten Strafrichter endgültig die Freisprüche der Vorinstanzen.


【解説】
aus (Dativ) heraus: ~から。場所的な意味もありますが、ここでは比喩的に理由を表します。
die Lebenskrise: 人生の危機
leidet … an: an (Dativ) leiden (病気)に罹っている、罹患している。3人称単数現在。
das Reizdarmsyndrom: 過敏性腸症候群
Krämpfe: der Krampf「痙攣、ひきつけ」の複数形。
zu (Dativ) führen: ~につながる、~の結果となる
Die = die Medikamente を指す指示代名詞、中性複数対格(Akkusativ)
der = der Arzt を指す指示代名詞、男性単数主格(Nominativ)
bewusstlos: 意識不明の、失神した
muss: müssen 現在形ですが、ただ「しなければならない」とすると、seitdem 「それ以降」という時間の副詞と日本語では相性が悪いので、その時点から現在まで続いている状況であることを表す適切な日本語を補足する必要があります。
für (Akkusativ) vor Gericht verantworten: ~に関して法廷で弁明 する。für の代わりにwegen (Genitiv) が使われることもあります。
der Strafrichter: 刑事裁判官
endgültig: 最終的に、決定的に
der Vorinstanzen: die Vorinstanz Instanzは審級の一つとしての裁判所を指します。Vorinstanzは、最高裁判所に至る前にこの件に関わった一審、二審のことを指します。前審。
【試訳】
ARD法律編集部、Kolja Schwartz(コルヤ・シュヴァルツ)
ある女性(44)はこれ以上生きていたくない。人生の危機が理由ではなく、彼女は不治の病に罹っているからだ。少女時代から激痛を伴う過敏性腸症候群に苦しんでいる。痙攣と痛みが彼女の人生について回っていた。
主治医は彼女に死に至る薬を処方する。それを彼女は服用し、そのことを主治医にショートメッセージ(SMS)で知らせる。医師が患者のもとに到着したとき、彼女はまだ死亡していなかったが、意識不明になっている。医師は彼女を死なせる。死ぬまで彼女のもとにとどまる。
このようなことが2013年2月にベルリンで起こった。以降、その医師はこのことに関して法廷で弁明しなくてはならない状況にある。そして今日、最高裁の刑事裁判官が前審の無罪判決を最終確定したのである。
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