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道を継ぐ存在がいるということ

バレンタインの翌日、私は朝から泣いていた。
一緒に住んでいる犬二匹が引くほどに号泣した。

突然の訃報に言葉を失い、その後、ご家族とのやりとりに涙したのです。

経営しているものづくりの会社で、お世話になっている取引先にバレンタインにお菓子を贈っています。

届いた方からお礼のメッセージをいただくことがあります。もちろんお礼のためにやっていることではないけれど、メッセージをいただくと、それをきっかけにちょっとした交流ができてほっこりします。

15日の朝、起きて支度を終えて、PCに向かいながらX(Twitter)をチェックしていました。
珍しくDMが届いていたので開けたところ、バレンタインのお菓子のお礼…それと共に、訃報が伝わってきたのです。

亡くなられたのは、やりとりをした方のお父さま。息子さんともどもシルクスクリーン印刷の職人をしていらっしゃいます。

バレンタインのお菓子が届く直前の夜中に、この世を去られたとのこと。

年齢を重ねて、体が思うように動かなくなったとは聞いていましたが、最近は調子が良いという話もあり、突然のことに本当に言葉を失いました。

新卒から勤めていた会社を辞め、ラブソル代表のゆかとノベルティ・オリジナルグッズの制作を主な生業とする会社をつくりました。
今でこそ、完全オリジナル商品を国内外の工場でつくるようなこともしていますが、当時は既製品に名入れをするのがほとんど。
その時に、名入れをお願いしていたのがその方でした。

元々は、ゆかの友人の紹介で知り合い、会社をつくる前から、演劇系のファンクラブのグッズ制作をお願いしていました。
ボランティアスタッフだった私たちは、グッズ制作の素人。
しかも、制作する個数も少ないし、その割にこだわりは強いので名入れ専用ではないアイテムを色々持ち込むし、なかなか大変なお客だったと思います。

しかし、そんな若造の依頼を丁寧に受けて、対応してくれました。

そして、私たちが会社をつくるとお伝えすると、最初は自分たちを知ってもらうためにサンプルをつくってPRすると良いと言って、さまざまなアイテムに無償で社名を入れてくれました。
また、お祝いにと、クリアファイルにも名入れをしたものをたくさん送ってくれて、商売繁盛するようにと招き猫のイラストも入れてくれていました。

少しお仕事をお願いしたことがあるだけの私たちに、こんなにも大きな愛を下さったこと、10年経っても忘れることはありません。

その他にも、急な納期に対応してもらったり、緊急事態にリカバリーのヘルプをしたり、何度も救ってもらいました。

とてもシャイで、時にぶっきらぼうとも思える、いかにも職人肌の方。
基本的にお客さまとは対面せず、メールでやりとりしていました(メールは驚きの即レス!)。
そんな中、私たちはまだ起業前に一度、実際にお会いする時間をいただけました。

印刷したいサンプルを持って作業場を訪れ、名入れの現場を見せてもらい、作業場の周りにある家庭菜園で収穫したお野菜をいただいたのでした。(その後も折に触れ、野菜を送ってくれました)

またお会いしたいとずっと思いながら、お互いに忙しかったりコロナ渦があったりして願い叶わず。ついに、二度と会うことはなく永遠のお別れになってしまいました。

今回のことで二つ心に浮かんだ思いがあります。
まずは、会いたい人には無理をしてでも会っておかねば、後はないということ。とはいえ、お相手の都合もあることなので仕方ない部分もあります。
もう一つは、その人がいなくなっても、その技術や思いが継承されていることの素晴らしさです。

私たちがお仕事をお願いしていた当初は、息子さんは別のお仕事をされていたのですが、途中から一緒に印刷をするようになりました。
もし、それがなかったら、もう二度と印刷をお願いすることはできなかったし、もっと恐ろしいことには、亡くなったことを知らないままだったかもしれません。

息子さんにしっかりと受け継がれていたおかげで、私たちはこれからもお仕事を通じて繋がることができるのです。

ひるがえって自分はどうだろうか?
自分がいなくなったら、会社は、会社の思いは継続されるのか。そもそも継続して欲しいと思われる仕事をできているのだろうか。
自らに問うきっかけになりました。


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