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伊勢木綿の共布でオリジナル足袋

前回、マリメッコの生地でオリジナル足袋を作った話を書きました。

ブランド生地を使うと、どうしても材料費(生地代)がお高くなってしまいますよね。
今回は、家にある余り布を活用して足袋を作った話をご紹介したいと思います。



伊勢木綿の共布で足袋を誂える(主に夫用)

夫用に誂えた伊勢木綿の着物の共布

こちらは、夫のために誂えた伊勢木綿の着物の共布ともぬのです。
三重県の伝統工芸品である伊勢木綿については、以前に書いた「ふだん着・街着のススメ! 木綿着物編」で詳しくご紹介しています。
この青と黒のチェック柄の生地も、三重県内で現存する唯一の伊勢木綿の織元である臼井織布さんのお品です。

共布というのは、同じ生地のハギレ布のことです。
反物たんものから着物を仕立てると、身長にもよりますが、かならず残り布(共布)が出てきます。
その余ったハギレ布(共布)を捨てるのはもったいない! と思って、足袋を作ることにしました。
伊勢木綿はコットン100%の生地なので、足袋の表地にぴったりなのです。

伊勢木綿の共布で誂えた足袋(白底がわたし用、黒底が夫用)

そうして出来上がったのが、こちらの足袋です。
前回のマリメッコ足袋と同じく、美津菱足袋さんに仕立ててもらいました。

夫用の伊勢木綿の共布からは、全部で4足分とることができました。
せっかくなので夫婦でおそろいの足袋を作ることにし、2足はわたし用に23センチの白底、もう2足は夫用に25センチの黒底というオーダーにしました。
表の生地が同じなので、わたし用か夫用かひと目で見分けがつくように、底生地の色を変えてみたわけです。
こうして並べてみると、黒底の方が表生地の柄に合っていて、すっきりと格好よく見えますね!

夫が伊勢木綿を着て、共布の足袋を履いたところ(2023年)


伊勢木綿の共布で足袋を誂える(自分用)

伊勢木綿の着物は、これまでにわたし用と夫用で二着誂えています。
わたし用はカラフルなチェック柄、夫用は青と黒のチェック柄。
伊勢木綿は、ポップなものからキリッと辛口なものまで、色柄のバリエーションがとても豊富なので、男女関係なく楽しむことができます。

自分用に誂えた伊勢木綿の着物の共布(残り布)からも、オリジナル足袋を作ってもらいました。縫製はもちろん美津菱足袋さんです。↓

伊勢木綿の共布で誂えた足袋を履いたところ(2019年)

伊勢木綿の着物を着たときに、共布の足袋を合わせるのが、わたしにとっての定番コーデとなっています。
つま先まで連続して同じ柄なので、なんとなく脚長に見える効果があるような気がします。

今回ご紹介した伊勢木綿の足袋は、前回のマリメッコ足袋と違って、足袋を作るためだけに生地を買ったわけではなく、着物を作り終わった残りの布で足袋を作ったため、かかったのは縫製代だけです。
余り布を捨てずに有効活用することができて、とても良かったです!

なお、正絹しょうけんの着物を誂えた場合、シルク100%なので、残り布で足袋を作ることはできません。
一般的な共布の使い道としては、和装用バッグやがま口、ポーチ、草履、羽織紐などがあるそうですよ。
わたしもいつか何かに使いたいと思って、これまでに誂えた正絹の着物の共布はすべて捨てずに保管してあります。


なぜ柄足袋にこだわるのか?

ここまでオリジナル足袋を作った体験談を書いてきましたが、
どうしてここまで柄足袋にこだわるのか?
店頭でたくさん並んでいる白無地の足袋を履けばいいのでは?
とお思いのかたもいらっしゃるだろうと思います。

白無地の足袋は、基本的に礼装用です。
冠婚葬祭やお茶席、踊りなどの芸事では白足袋が必須アイテム。
わたしが若い頃にお世話になった茶道の先生からは、あらかじめ替えの足袋を用意しておき、茶室に入る前に足袋を履き替えるよう、厳しく指導されました。

なぜわざわざ履き替えるのかと言うと、
「外を歩いてきた足袋は汚れている。茶室では畳の上にじかに茶碗や菓子器を置くのだから、清潔な足袋に履き替えるべし」
とのことでした。

「茶室に入る前に足袋を履き替える」というのは茶道における一般的なルールらしいのですが、それに追加して、洋装で茶室に入るときは白ソックスに履き替えるという独自ルールもありました。
白足袋の代用品が、白ソックスということです。
なので、冬場は黒タイツの上から白ソックスを履く、という謎の出で立ちでお稽古をしていたのでした。
ほかのお教室でも同じようなルールがあるのでしょうかね?
その当時は白ソックス強制を面倒に感じていましたが、今思えば、そもそも和装が強制ではなく、洋装でもOKという時点で、服装に関しては寛容な先生だったと言えるかもしれません。

そういう若い頃の刷り込みがあってですね……
気の置けない友人との集まりや、夫とふたりで出かけるときなど、ふだんのおでかけに白無地の足袋を履くのはかっちりしすぎている気がして、逆に落ち着かないのです。
着物はふだん着なのに、足元だけ礼装というのは、なんだかちぐはぐな感じがしてしまいます。
今、わたしが柄足袋を好んで履いているのは、こういう理由からです。


ちなみに、礼装用の足袋が白無地なのは男女とも同じですが、男性のふだん履き用の足袋は黒か紺が一般的なのです。
昔から「関東は紺キャラコ、関西は黒繻子」と言われていたそうですよ。
繻子しゅすというのは光沢感のある織り方の生地で、キャラコは光沢感のない織り方の生地です。
地域によって、好みが分かれるというのは面白いですよね!

江戸時代中期、第八代将軍の徳川吉宗が鷹狩りの際に紺足袋を履いていたことから、そのオシャレが武家の男性の間に広がり、町人の間にもしだいに広がっていき、江戸を中心とする関東において男性一般のふだん履き用として紺足袋が定着したという説があるそうです。

大阪を中心とする関西は商人文化だったから、光沢の強い黒繻子足袋が好まれたのかも? ツヤツヤ光る方が懐に余裕があるように見えますもんね。

茶道では茶室に入る前に白無地の足袋に履き替えるのが決まりです。
なので、男性であれば、ふだん用の黒足袋か紺足袋を履いて自宅から会場まで行き、茶室に入る前に待合まちあいで白足袋に履き替えるのがマナーというわけですね。

と言っても、わたしが茶道を習っていた当時、同世代の若い男性が数名おりましたが、全員洋装でお稽古をしていて、お茶会でもスーツを着ていました。
なので、待合で黒足袋から白足袋に履き替える姿とか、着流しの上に袴を着ける姿というのは一度も目にしたことがありませんでしたね。
そこで袴を着るから、待合を別名、袴付はかまつけと言うらしいのに……

最後までお読みくださり、どうもありがとうございます。

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