着物で日帰り旅行のススメ! 聖地巡礼編
着物で旅行してみたいけど大変そう、というかたに向けて
旅行の季節がやってきましたね。
これから、遠くへお出かけの計画を立てているかたも多くいらっしゃると思います。
浅草や京都では、レンタル着物で街歩きを楽しんでいる男女の姿を、よく見かけます。
旅先で着物を着るというのは、着物好きにとって、あこがれですよね。
レンタルも良いと思いますが、せっかくなら、お気に入りのマイサイズの着物を着たいものです。
自分の着物で旅行をしてみたいけど迷っているかた、本当に一日中着ていて大丈夫なの? と心配なかたに向けて、これから書いていきたいと思います。
最初は日帰り旅行から
まずは、着物で旅行するということが、どういうことなのか、イメージしてみてください。
①着物を着たままで、数時間以上、座っていられる。
飛行機や電車、バスなどでの移動時間は、旅の目的地によりますが、数時間から10時間を超えることがあります。
②着物を着て、1日中街歩きができる。
一般的な観光地を徒歩で巡ると、1日で1万歩はゆうに超えます。
③宿泊先で自分で着替え(着付け)ができる。
宿泊先によっては、全身が映る鏡が無いお部屋もあります。
いかがでしょうか?
自己紹介欄で「旅する着物好き」と自称しているとおり、わたしはもともと旅行が好きで、着物をひとりで着られるようになってからは、旅先でも着てみたいと思うようになりました。
もちろん、上の①から③まで、最初からいきなりできたわけではありません。
着物で旅行するはじめの一歩は、着物で日帰り旅行です!
日帰り旅行の定義は人それぞれだと思いますが、ここでは、目的地まで片道1時間以上かかる遠出をすることとします。
日帰り旅行の場合、自宅で着物を着て、電車やバスで目的地へ向かいます。
①の長距離移動と、②の街歩きの経験を積むことができます。
宿泊はしないので、③の出先で着替える心配はないですよね。
着物を着て、行って帰ってくる、それだけです。
ここからは参考までに、実際にわたしが行った日帰り旅行の様子を少しご紹介しますね。
漫画『聖☆おにいさん』の聖地、立川市へ!
東京都立川市は、漫画『聖☆おにいさん』の舞台です。
このときは埼玉県内から片道1時間ちょい程度でした。
移動手段は電車です。
聖地巡礼ルートは、立川駅から住宅街を歩き、大きな鬼の顔の滑り台がある錦第二公園、通称「オニ公園」まで行きました。
作中では主人公たちがこのオニ公園を訪れて、エリマキトカゲの遊具に乗ったりしています。
この日は、母譲りのウールの着物に、写真では見えにくいですが、半幅帯を締めていました。
天気は良くても肌寒い日だったようで、上に絹ものの羽織を重ね、首元にはスカーフを巻いていますね。
この梅の柄の赤い羽織は、わたしの母が若い頃に誂えた品で、当時はこのような短い羽織丈のものが流行だったそうです。
母譲りの羽織は、ぜんぶジャケット丈ぐらいの長さなんですよね。
令和の時代では流行が昔に戻り、戦前と同じような長羽織が主流です。
足元はベルベット素材の足袋に草履を履いていました。
長襦袢は、洗えるポリエステル素材のものだったと思います。
手元は、京WA・KKAさんの帯の生地でつくられた利休バッグです。
オニ公園を楽しんだあとは、作中の「ハッスル商店街」のモデルとなった商店街を歩き、主人公たちがピクニックをした昭和記念公園内を散策しました。
それから立川駅付近で食事をし、再び電車で帰りました。
アニメ『ヤマノススメ』の聖地、飯能市へ!
埼玉県飯能市はアニメ『ヤマノススメ』の舞台です。
都内から片道1時間半程度。移動手段は電車です。
聖地巡礼ルートは、飯能駅から飯能銀座通り商店街を歩き、白い象さんが目印の観音寺まで行きました。
観音寺は、主人公たちが放課後によく立ち寄る場所で、この縁起の良い白い象さんの前で、アイスを食べたりしています。
この日は、マイサイズの片貝木綿の着物に、母譲りの塩瀬の染名古屋帯を締めています。
このチェック柄の片貝木綿は、新潟県小千谷市にある270年つづく染め織りの工房、紺仁工房さんのお品です。
このときは5月でしたが、汗ばむくらいの陽気でしたので、羽織ものはなし。
長襦袢は夏用のアイスコットン生地で、半衿は夏冬兼用のレース素材。
足元は足袋に草履でした。
観音寺は、810年創建の歴史あるお寺で、幕末には「飯能戦争」の舞台となったそうです。
第二次世界大戦中に鐘が供出されたため、鐘撞き堂には鐘のかわりに白象が奉納されています。
観音寺を観光したあとは、割岩橋を渡り、飯能河原を歩きました。
飯能河原は主人公たちがピクニックをした場所ですが、わたしが訪れたときも、たくさんの親子連れや若者がバーベキューを楽しんでいました。
時間に余裕があれば天覧山にも登りたかったのですが、今回はあきらめ、暗くなる前に飯能駅まで戻り、再び電車で帰りました。
片貝木綿はすべりにくい素材なので、歩いている途中で帯がずり落ちてくるということはなかったです。
思い返してみますと、塩瀬の帯はつるつるすべる絹素材なので、ずり落ちないように、締めすぎなくらいぎゅうぎゅうに締めてから出かけたので、出先では満足に食事をとれなかったような……。
締めがゆるい方が食事はしやすいのですが、それで着崩れては困りますし、帯や着物の素材にもよるので、これといった正解がなく、いまだに試行錯誤をしているところです。
この日のコーデで片貝木綿を選んだのは、汚れても大丈夫な着物だからです。
散策ルートがぜんぶ野外でしたので、洗濯機で洗える着物を選びました。
まとめ
着物で旅行するときに大事なポイントは、多少の汚れは気にしない、おおらかな気持ちを持つことです。
突然、雨や雪が降ることもありますし、泥はねすることも、飲みものや食べものをこぼしてしまうこともあります。
ぜったいに汚したくない! というような、大事な着物は着ないことをおすすめします。
それから長時間座っていると、着物に座りじわがけっこうつきます。これも手でさっとのばす程度にして、あまり気にしないことですね。
たくさん歩いたり、動いたりすれば、しわができるのは当たり前のことなので、しわひとつない完ぺきな着姿を求めないことが、旅先で着物を楽しむコツだと思います。
わたしの場合は、履きなれた草履と誂えの足袋の組み合わせがいちばん歩きやすいですが、それは本当に個人差があると思うので、ご自分に合った履物を選ぶと良いでしょう。
鼻緒ずれしてしまうと、痛くて歩けなくなっちゃいますよね。
足袋も、足袋ソックスよりは、コハゼのついた本物の足袋の方が防御力が高いので、足の指が痛くなりにくい気がします。
着物にハイヒールやブーツなどの洋靴を合わせる和洋折衷スタイルもありますよ。
次回は、宿泊をともなう本格的な旅行に出かける話を書きたいと思います。最後までお読みくださり、どうもありがとうございます。