乳がん→MRI=恐怖でしかない。(#7)
私の胸のしこりは乳がんだった。
J大学病院では、左胸を全摘出するのが私の場合の標準治療だという。
胸を温存するという選択肢はない。ああ、私の可哀想なおっぱい。
7月に全摘出手術をするためにMRIをしましょうと言われる。
実は、MRIをやったことがない。
第一子の妊娠6ヶ月でパニック障害を発症していた。
一時は、なりを潜めていたその不安感が、がんがわかる半年くらい前からまた強くなり、電車に乗れなくなっていた。
絶対にMRIはできない。
あんな狭いところに閉じ込められたら(人から聞いた話だと棺桶的な入れ物?)絶対発狂してしまう。
正直なところ、死んだ後に棺桶に入れられるのも怖い。
死んだらわからないでしょ、と言われるがまるでホラー漫画のように棺桶で意識が戻って、出して欲しいのに出られない想像をなん度も繰り返ししてしまう。
そんな私でも、もしかしたらCTは撮れるかもと思っていた。
だって輪っかの形ならなんとかなるかもしれないでしょ。
知り合いのお子さんが鎮静剤を打ってMRIをやった話を聞いたので、その方法は可能なのかと聞いたが、どうしてもMRIを撮らなくてはならない場合はそうするけれども、私の場合はそこまでではないらしい。
主治医は、私のその状況を考慮してMRIは諦めてCTをやってみましょうということになった。
CTを撮る日がやってきた。
造影剤を点滴してから巨大なドーナツ型の輪っかをくぐり抜けるのを3往復するという。
点滴をして準備をし、撮影室に入った。
大きな部屋の真ん中に巨大な機械があった。
私は、台の上に乗る。足を動かさないように若い技師さんが両足をマジックテープで固定した。縛り付けられたようで、なんだか息苦しくなってきた。
怖い。
怖いけどやらなくちゃ。
がんの転移がわかるんだから、すごく大事なんだから!
これをやれば治療計画が決まって、家族も安心できる。
頭では、やらなくてはいけない理由をあげている。
そんなこと私にだってわかっているんだ。
CTの機械の上で大泣きした。
機械が顔面を覆う恐怖とこの後に及んで腹を括れない情けない自分を責めてわんわん泣いた。
私をなだめるのに30分以上かかったが、結局できなかった。
付き添いできていた夫は、心配そうにしていたが
「ひと昔前は、CTだのMRIだのなかったんだよ。ここ最近の話でしょ、こういうの。それでもちゃんと治療できていたんだから、なんの問題もないよ。」
と言った。
ただでさえ、がんという未知の恐怖があるのにその上、MRIができないという致命的にも思える状況に強いプレッシャーで追い詰められていた。
どんなにこの言葉に私の気持ちが、救われただろう。
主治医は、MRIの検査をどうしてもしなくてはいけない状況ではないので検査なしで大丈夫だとのこと。
病気をすると治療においてたくさんの選択をしなければならない。
このひとつ一つの選択が、私の未来を決めていくのだ。
そして、この体のボスは私である。
誰が責任をとるものでもない。私が私の責任をとるのだ。
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