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立冬

未来が常に過去を変えてるんです。
変えられるともいえるし、変わってしまうとも言える。
過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?

映画『マチネの終わりに』に出てくるフレーズが見事に心に刺さりました。

映画の感想はとりあえず、万人共通であろうこととしては、以下二つ 笑
福山雅治は多様化社会における絶対的美をもっているなということ。
私の理想というバイアスを抜きにしても、石田ゆり子さんは表情が日本一豊かな素晴らしい女優であるということ。

それ以外についてはこれまでテロと言う事件と接してきたのかで、少し感じることも変わるだろうなと思いますし、
これまでどんな恋愛をしてきたかで、感じることはさまざまな意見がでてくるのも当然な映画でした。

テロのシーンを見て、民放のとある報道番組のADをしていたときの出来事を思い出しました。イラクでなくなったジャーナリスト・橋田信介さんの、銃弾が貫通した跡であろう、穴が二つあいた遺品の帽子を前にして、
残された奥様が、語ってくださったこと。

この二つの穴をみて、不謹慎かもしれないけど、主人は苦しまずに死んでよかったと思うのよねと。

一文字づつ丁寧にその言葉を紡ぐ奥様は美しくて、愛する人を見届ける日が来るのだとしたら、大学生の私は、そんな大人の女性になりたいって素直に思えたのでした。

あれから15年経った今、私はどれほど美しい大人に近づけたかわからないけれど、少なくとも若いころよくある背伸びをした自己主張はどこかに消えて、等身大の自分に戻ってくることができたような気もするし、自分の中にある焦りのような塊もあるので、大して変わらないような気もするけれど、歳を重ねることがどんどん楽しくなってきた気がします。

ドイツの哲学者・ニーチェの言葉に、
人生などすべてのことは、前に進むでも後ろに下がるでもなく、円のようにぐるぐる回るものだというのがあるということを、
一緒に映画を観賞した人が教えてくれました。
後にしらべると、小難しい言葉で、永劫回帰っていうそうですね・・・

時間は直線で、始まりと終わりがあるという西洋で、こんな時間のとらえ方を言い出すニーチェは、それはそれは想像を絶するほどの変人扱い受けたんだろうなとおもうけれど、この映画は、ニーチェを思い出し、時間のとらえ方について語らうことができる、そんな映画でした。

今宵は立冬。
冬の気配が山にも里にも感じられる季節とのことですが、まだ紅葉に心打たれぬ前に冬が来たとは認めたくないのが正直なところ。
とはいえ、朝晩もぐっと冷え込み、ストーブを取り出してきた方もいることでしょう。
季節の移ろいを想うと、時の流れはとても早いけれど、めぐりめぐる季節にほっと安心する日本では、仏教の思想も身近にあるせいなのか、ニーチェの時間のとらえ方をあまり斬新に思うこともなく、自然と取り込める感覚のような気がします。

寒暖差が激しく、ずいぶんと大気も乾燥してきておりますが、ここまで読んでくださった優しいあなたも、どうぞお体おいといくださいますように。

写真は先日最終日を迎えた、東京のミッドタウンでオーデマピゲとパリで活躍する日本人アーティスト・池田亮司さんのコラボしたインスタレーション。

時計以上の何かという時間をテーマにした作品で、人間の耳で聞こえない周波の音とかもまじってたみたいですが、
私は人間なので、なにがなんやら、よくわかりませんでしたが、今のアート界のトレンドはそれとなく理解できましたとさ。

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