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株式投資・企業分析③ セガサミーHD

 企業分析の3回目はセガサミーHD(以下、セガサミー)とします。
 理由として、パチ業界は昔から興味があったところで、やっぱり調べておいておきたいんですよね。また、アミューズメント関連ということで前回のラウンドワンからの関連もあります。

 セガと言えば、知らない人はあまりいないと思っていますし、ネットでは湯川専務がCMをやったドリームキャストの失敗ばかりが語られがちなイメージですが、最近はどうなのでしょうか。


セガサミーの事業について

 決算資料を見ると3つに分かれています。エンタテインメントコンテンツ事業、遊技機事業、リゾート事業です。説明すると、
遊技機事業=パチンコ・パチスロ(関連インフラの提供も含む)
リゾート事業=韓国でのカジノ運営・宮崎県のシーガイアの運営
エンタテインメントコンテンツ事業=その他全部(家庭用ゲームやソーシャルゲーム・アミューズメント施設など)

 となっています。売上が多いのはエンタテインメントコンテンツ事業ですが、遊技機事業は利益率が高く、安定していて金のなる木となっています(21.3は赤字を叩いていますが、コロナによるパチンコ・パチスロ台の出荷延期等の影響が大きいと推測できます)。

バフェットコードより引用。

エンタテインメントコンテンツ事業

コンシューマ向け(F2P・無料ゲーム)

 ゲーム機から撤退しながらも、コンテンツでは圧倒的な強みを持っているのがセガで、近年の大ヒットといえば、決算説明資料でも明記している通り、スマートフォン向け「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」でしょうか(通称:プロセカ)。
 リリース直後が一番盛り上がり、周年などで多少盛り上がれど右肩下がりを描きやすいソーシャルゲーム業界で、徐々に盛り上がるヒットは珍しく、AppStoreセールスランキングでも好調に推移しています。男女問わずファンを取り込んでいる印象です。(女性のユーザのほうが多い?ように感じています)

 また、初音ミクに関連して、(筆者の主観ではありますが)2009年頃からPSPでソフトをいち早く発売するなど、デジタルコンテンツとのイメージの良さは見逃せないと思います。
 VOCALOIDのキャラクター以外に、声優を起用したキャラを別に設けるのは、大きな決断で、新たなファンを取り込むには必要なのですが、セガだからこそ受け入れられた側面もあるのかな、と。これをやり切ったのは、セガじゃないとできないと思っています。
 VOCALOIDも、一時期は本当に苦しい時代だったけど(某所の研究記事ですら、焼け野原って書かれていて、確かに・・・ってなっちゃった)、それを乗り越えられる長年のファンに支えられているのは大きな強みじゃないでしょうか。二次創作も盛り上がり、初期のボカロコンテンツに触れているような気持になります。

 一方、他のタイトルはヒットに乏しいです。特に最近記憶に新しいのは、『FGO』の歴史的ヒットのディライトワークスと立ち上げた『サクラ革命』でしょうか。セガのゲーム機時代の代表的なコンテンツ『サクラ大戦』で、新作で売れる力もあり、IPの強さで始まる前は話題沸騰も、初動の遅れはユーザに受け入れられず、散っていきました。
 下記の動画も、本当に仰る通り、って思ってしまいましたね・・・

 奇しくも、同時期には上記のプロセカをはじめ、『原神』、『ウマ娘』、『ブルーアーカイブ』と一線級のアプリが相次ぎリリースされ、『FGO』もサクラ革命以降盛り返しているのを見ると、なんというか・・・という気持ちになってしまいます。
 基本無料であることもあってとっつきやすく、絵師さんがいたり、フォロワーさんがやっているという"共感"がとにかく武器になるはずだったコンテンツで、逆風が吹き荒れた失敗例だと思います。
 今年2月ごろリリースのスマートフォン向け本格RPG『シン・クロニクル』も、そこまでヒットしたとも言えず、F2Pのジャンルで一本当てることがいかに難しいか、というのがよくわかります。

コンシューマ(フルゲーム・家庭用ゲームのこと)

 直近で話題となったのは、『LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶』でしょうか。主人公の声優が木村拓哉氏であることから、キムタクが如くって呼ばれたりしましたね。
 こちらは、クオリティ自体は安定も、開発費もなかなかあって・・・とはいえ、オンライン販売でのPC等とのマルチソフトにしたりして、手に取りやすい環境になってきたのは、ユーザにとってはありがたいですし、ソフトも十分、手が届く値段です。
 蛇足にはなりますが、こういうコンシューマゲームで、最新ゲームは殆ど違法ダウンロードがないのは、業界として本当に努力したんだろうな("割れ"を忌避する空気も寄与していると思います)、ってのは感じていて、10数年前くらいまでは、マジコンが普通に出回っていて、モンハンも同級生の男の子はメモリースティックに入っている違法ダウンロード版やってました。
 とにかく、いいものを作れば、話題になって正しく売れる環境が整っています。自分はゲームから離れちゃいましたが、頑張ってほしいです。(家族がApexやっているのを見ると、すげーなあって思っちゃいます)

アミューズメント向け

 ラウンドワンの項では稼ぎ頭のため、圧倒的に強い・・・かと思いきや、ゲームセンター事業としては2020年頃に事実上の撤退、2022年初頭にはゲームセンターとしては完全に撤退しているんですよね。

 そのため、プライズ景品やUFOキャッチャーの機械のほうをセガが作っているものの、UFOキャッチャー自体は好調も、サプライチェーンの混乱、物価高の影響を受け、1Q(3か月分)の比較を見ると売上高は前年度比伸びているのに、営業利益は16億⇒5億に落ち込んでいます。
 音楽ゲームでは、『チュウニズム』『オンゲキ』は様々なプレイヤーも取り込んでいる一方、他のタイトルがやや弱いかなあ、ってのはゲーセン何回か視察したうえで思っています。増税されたのも痛く、100円にいまだに頼りっきり。

 メダルゲームも、規模を縮小しながらも、コストダウンを優先した開発に舵を切っています。タワーを作ったり、ドスンを落ちたり、インパクトのある払い出しは健在で、もしかしたら、サミーと一緒になった効果ってこういうところでも出ているのではないでしょうか。下記は新製品『ホリアテール』。ジュエル、タワー・・・と過去のセガの強みをミックスしたような台です。

 ただ、開発力はコナミに比べて落ちる印象です(特に100円課金の乱発は印象悪い)。それでも、カプコンやバンダイナムコ等よりも力を入れているのは明らかです。
 強みとして、競馬ゲームは他社の追随を許していないと思いますが、高額な導入費用は、今のプライズ主体のゲーセンに合っておらず・・・

映像・玩具

 名探偵コナンの映画や、ルパンのテレビアニメ、アンパンマンの映画などから収益を得ていて、決算説明資料では『その他』と扱われています。

遊技機事業

 サミーといえば、2003年の「パチスロ北斗の拳」は有名ですよね。発売はセガと合併する前ですが・・・

 シンプルなゲーム性で、3種の内部状態・中段にチェリーが止まると大チャンス。継続率管理のボーナス。それだけですが、すべてが斬新で、死ぬほど打ちました。目押しもこれで覚えました。「パチスロ北斗の拳」専門店も登場したり、なんと、プレステ2で出た、パチスロのゲーム版が100万本も売れてしまいました
 パチスロはお金の吸い込む速度もパチンコと比べ早く、設置台数がパチンコの3分の1ほどなのにも関わらず、利益は同じかそれ以上上がることが多いです。
 しかし、パチスロ全盛期のような爆裂機が設置できなくなり(4号機の完全撤去=2007年)、いったんはパチンコに注力し、北斗の拳シリーズを改めてリメイクし、26万台を超える大ヒットを記録します(セガサミーとして最高台数)。
 パチスロでは爆発力を求めながらも、『ツインエンジェル』『サクラ大戦』など萌え台にも注力し、同人誌即売会に幹部級が来場するなどし、ユーザとの対話を図っていました。現在でもアニメコンテンツを新規でパチ化すること、積極的ですよね。

 2013年頃には爆発力のある台が揃い、パチスロ専門店も再び増加し始めました。朝の抽選も鉄火場と化し、外国人を使った抽選代行なども問題と化していたのですが・・・

パチンコ・パチスロ業界のジレンマ

 IR関連や東京五輪などでギャンブル依存ののめりこみ対策という名目で警察庁から規制が強化。パチンコがMAX機(大当たり確率が最低の代わり、爆発力が高い台)一斉撤去の2017年頃、パチスロも沖ドキ、初代まどか、GODなど2015年までに導入された規制が緩い台が撤去され始めた2019年あたりから客離れが目立つようになりました
 特にパチンコでは、コロナ前の2019年ですら、新台でパチンコの平均稼働を上回って新台として機能していた期間を示す「稼働貢献週」という用語があるのですが、最長の機種でもなんと20週で、ほとんど数週か、全く客がつかず終わっています。パチスロではジャグラーシリーズやハナハナシリーズは別にすると、さらに悲惨なことになっています(リゼロは20週超動いたものの3度にわたる増台で客飛び、他の6号機も壊滅的なうえ、ユーザの離反を招いたのは明確だと思います)
 2017~2019年あたりは、規制前に駆け込みで出た機種に、稼働を頼ってしまうという悪循環が続く結果となってしまいました。
 たちが悪いのは、導入した段階では客が定着するかわからないので、株主の視点からしたら「あ、n万台も売れたのね、良かったね」となりますし、実際に売上と利益が立ってしまいます。下記画像参照。

2020年度の決算資料より、コロナ前ギリギリで26%近い利益率を遊技機で確保も、この中で10週以上動いたのはエウレカセブン(11週)のみ、他は壊滅。
6万台近く売れた北斗の拳天昇はリゼロのクローンに近く、すぐに客が飛びました(7週)
https://www.youtube.com/watch?v=tgYf8rAHrd8より引用。
2019年付近は本当に業界が迷走していて、演者がこういうことを言っていた時代でした・・・

 ただ、次に同じ台数を買ってくれるかわからないですし、下手したら買ってくれるパチンコ店がつぶれているかもしれません。
 2022年度決算で売上だけがぐっと落ち込んでいるのは、こういう影響も否定できないのではないでしょうか。利益は出せているのは、値上げが容易な業界構造にもあると思います。60万超えの筐体も今後は当たり前になっていくのでしょう。
 2020年以降になり、新台⇒即客飛びの負のループには歯止めがかかってはいるものの(巻末の資料参照)、業界の衰退はパチ業界に普段興味ない人でも、耳にすることが多いのではと思います。
 そんな中、業界内で希望とされているのが、2022年11月から導入開始の『スマートパチンコ・パチスロ』です。玉・メダルレスとして専用の貸出サンドを設けた機種とする代わり、規制の緩和がなされます。
 パチンコでは大当たり確率の緩和(320分の1⇒350分の1)が単純ながら大きく、現行でもほとんどの店舗がパーソナルシステムを導入しており、店員の玉積みがないので、人気機種が出次第、徐々に移行となっていくと思われ、あまり混乱はないと思っています。
 パチスロでは不満の多い有利区間制限を撤廃し、「5万円突っ込んだら、爆裂大当たり引いても2400枚の上限枚数に到達するので絶対勝てない」という状態が完全になくなります。

上記の件の図解
こういうことが決算説明資料で書かれる時点で業界の厳しさがよくわかります。

 枚数上限がある程度解消された6.5号機は稼働を保てているため、スマートスロットにかかる期待は大きく、11月下旬稼働開始となる一方、設備投資の件や、半導体等が足りず欲しい店舗にいきわたらず、、、ということが大きなリスク。
 筆者はスマートスロット・パチンコがうまくいく確率は2割程度だと思っていて、過去には設定付きパチンコなど、大失敗した迷走はあれど、CR機⇒P機移行は順調に進んだことを鑑みると、「客・店側にメリットが見えるなら、一気に置き換わる」と予想していますがどうでしょうかね。ただ、パチンコは350分の1を活かした爆裂機から徐々に変わっていく、ってなりそうで、しばらくはパチスロのほうが盛り上がりそうかな、と思います。

リゾート事業

 韓国のパラダイスカジノ(2017年開業)がギャンブル界隈ではコロナ前まで人気でした。大学のサークル仲間が、韓国にカジノするためだけに行った、ってのもあったくらい。従業員2500名を抱える一大カジノなんですよね。空港から近く、一勝負しやすいのも好条件。一時期はパチンコのライターに案件を出したりして、日本にも宣伝していたものの、コロナの影響で休業するなど苦戦しています。
 テレビでも、TBS『リンカーン』で罰ゲームとして、芸人がカジノで大勝負する回があったり(時期的には他のカジノだと思いますが)。日本から一番行きやすいカジノ場所であることは間違いないのですが・・

https://www.famitsu.com/news/201907/23179897.html  より引用。パラダイスカジノの外観。カジノを含む統合的リゾートとして整備されている。
ディーラーがつくテーブルや、スロットマシンが設置されて、飲食もできたり。

 その他、100億円で買収した宮崎県のシーガイアでウクライナ避難民を受け入れたこともニュースになっていましたね。

 事業自体は赤字垂れ流しの問題児ではありますが、日本でIR関連を当て込んでいたのでしょうから、この赤字は仕方がないでしょう。パラダイスカジノとしても、頼みの中国客がコロナ以降ゼロに。コロナ後に少し日本からのVIP客を戻しており、お金を落としてくれるお客に絞った営業としつつも、行動制限明けには赤字の縮小を見込んでいます。
 しかし、肝心の日本ではカジノ自体がgdgdな感じ。横浜のカジノは流れることから・・・う~ん。自分も日本のカジノができてもしょうもないんだったらうーんだし、(マイナンバーや税金回りが相当厳しいそうです)カジノばかりがやり玉に挙げられるけど、いざ実際にできたら全体的に魅力に乏しく、海外のカジノに惨敗するかもしれません(いわゆる、ついでで寄ってくる需要はあるかもですが、コロナでインバウンドが激減し、観光に頼っていた分野は厳しくなりました。)
 日本人は、韓国か本場でやりたいかな・・・ってなっちゃいますし、ゲーセンのビンゴゲームで満足しちゃいます。アニマロッタ面白いぞ!
最近、ユニバーサルエンターテインメントがフィリピンで元従業員との抗争を披露していましたが、こういう利権は難しい。
 そのため、決算説明資料でも、後ろ向きの記載があったように。今後は相当精選した支出となっていくのではないでしょうか。

おわりに他(宣伝等)※分析とは関係なし

 もしかすると、Mリーグ(麻雀のリーグ戦)で、「セガサミーフェニックス」と聞いたときに、「え、セガとサミーって一緒だったん!?」って人もいらっしゃるかもしれません。それくらいサミーの存在感は薄いんですよね・・・と思いきや、この遊技機の存在は大きく、現在(2022/9/9)、公式サイトを見るとパチンコ台、パチスロ台の宣伝が並びます。ゲームは「ロストジャッジメント」が6番目にある・・・と、遊技機の存在感って、大きいんですよね。
 遊技機で安定したキャッシュを生み出すため、スマスロがまずヒット、スマパチも徐々に移行、店舗数減少の歯止めの兆しが見えたところで、エンタテインメントコンテンツ事業でもう一山ほしいところ。最近では麻雀だけではなく、バスケチームの経営にも参入したようで(サンロッカーズ渋谷、今年から)硬式野球以外でもサバンナチャンスが聞こえるのかもしれません。

※画像について、特に記載のないものは公式サイト、またはIR資料等より引用しています。
※割愛しましたが、パチスロ業界の規制についてはパチ7の佐々木真様の記事が詳説されておりお勧めです。同サイト内にもパチンコの65%規制やP機の規制についても記事多数あるのでお勧めです。(ある程度知識ある人向け)。https://pachiseven.jp/articles/detail/8688

ただ、どうしても専門用語が多くなる関係で(IR資料ですら、普通の人はぽかーんとなるのではないでしょうか)、5号機の規制の流れを筆者が口語体で語る、別記事を書いています。興味のある方は、ご覧くださいませ。⇒

稼働貢献週について、2020年度以降のパチンコ機種はこちらにあります⇒

https://g-net-ps.com/wp-content/uploads/2022/09/fd005e02bb5db3d02f8f146efa47930c.pdf


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