【僧侶が解説】遺族の自宅へお線香をあげに行くとき(弔問)の注意点
お葬式の知らせはいつも突然来るので、どうしても参列できないことがありますよね。
でも、故人があなたにとって大切な人だった場合、そのまま何もしないわけにはいかないでしょう。
お葬式に参列できなかった場合、後日に遺族の家を弔問してお線香をあげるという人が多いです。
ただし、遺族の家を弔問するには【お線香をあげに行くときの注意点】を守る必要があります。
この記事では、弔問時に注意すべきことを、僕のお坊さんとしての経験をふまえて解説しています。
せっかく弔問をしたのに、それで遺族に迷惑をかけてしまわないよう、ぜひ最後まで読んでみてください。
お線香をあげる意味
お葬式に参列できなかった場合、後日に遺族の自宅までお線香をあげに行く(弔問する)人が多いです。
故人が友人だったり、とてもお世話になった人であれば、ぜひお線香をあげに行きたいですよね。
ところで、あなたは【お線香をあげる意味】をご存じですか?
わざわざ遺族の自宅にお邪魔するのですから、ちゃんとお線香をあげる意味を知っておいた方がよいと思います。
お線香に火をつけると【煙】とか【香り】が出てきますよね。
じつは、お線香から出てくる《香り》が大事で、お線香を燃やしたときに出る《香り》は仏様の『食べ物』になるのです。
これを、仏教では【香食(こうじき)】といいます。
つまり、お線香をあげるのは『故人に食事をしていただく』という意味なんです。
お線香をあげて故人に食事をしていただくことで、心を込めて【おもてなし】をしているわけです。
なので、お線香をあげるときには「◯◯さん、生前はいろいろとありがとうございました。コレ、どうぞ召し上がってください。」と、故人に感謝と敬意を表しながら供えましょう。
お線香をあげに行くときの注意点
遺族の自宅へお線香をあげに行くときには、守らなければならない注意点がいくつかあります。
■お線香をあげに行くタイミング
お葬式に参列できなかった場合、なるべく早くお線香をあげに行きたくなりますよね。
でも、あなたの都合だけで訪問しちゃダメです、ちゃんと【お線香をあげに行くタイミング】を考えてください。
例えば、【お葬式の翌日】に訪問するのはヤメた方がいいですよ、きっと遺族はお葬式の疲れがドッと出ている頃ですから。
なので、お葬式が終わってから数日くらいは間を空けた方が遺族の迷惑になりません。
ただ、あまり遅くなってしまうのもダメなんですよね。どんなに遅くても、故人の【49日】を迎えるまでには訪問しておきましょう。
早すぎてもダメ、遅くなってもダメ。じゃあ、どのタイミングで行けばいいのでしょうか?
お線香をあげに行くタイミングとしては、お葬式の日から一週間後くらいがいいですよ。
この頃であれば、
お葬式の疲れがだいぶとれている
遺族の気持ちも少し落ち着いている
という状況でしょう。
これよりも後になると、遺族は役所の手続きなどで忙しくなってきます。
遺族が心身ともに少し余裕が出てきて、まだ忙しくなる前のちょうど良いタイミングが【お葬式から1週間後】くらいです。
もちろん、これは1つの目安にすぎませんので、当たり前ですが、お線香をあげに行くときには必ず先に遺族の都合を確認してから弔問しましょう。
遺族の自宅に着いてからも注意点があります。
まず1つめは、家の中へ上がる前に、「この度はご愁傷様でございました。遅くなりましたが、お線香をあげさせていただいてもよろしいですか?」という弔意を表す言葉を言ってください。
そして、もう1つ大事な注意点は『長居しないこと』です。
遺族としては、わざわざお線香をあげに来てくれたことはありがたいですが、なかなか帰ってくれないと・・・めっちゃ迷惑です。
ですから、少し《故人との思い出話》をしたとして、それでも【15分】以上はいない方がいいと思いますよ。
とにかく、お線香をあげたら早めに帰りましょう、それが遺族に対する配慮です。
■お線香をあげに行くときの服装
お線香をあげに行くときは【服装】にも注意しましょう。
とはいえ、お葬式や法事のときみたいに喪服を着なくてもいいですよ。喪服で行くと遺族が恐縮してしまいます。
お線香をあげに行くときには【平服】で問題ありません。
平服とは『ラフではなく、正装寄りの服装』という意味ですから、
『グレー』や『濃紺』など、暗めの色の服
シンプルなデザインで、装飾が少ない服
デニム素材ではない服
光沢のない服
という点に注意してください。
■お線香をあげに行くときの手土産(供物)
お線香をあげに行くときに【手ぶら】というわけにはいきませんので、手土産または供物を持って行きましょう。
でも、どんなものを持って行けばいいのか迷いますよね。
手土産や供物には、
菓子類
賞味期限が長い
かさばらない
安価すぎない
というものがいいです。
手土産や供物には、やはり『菓子類』が無難なんですよね。
手土産の場合は遺族のために持参するものなので、本当なら品物は何でもよいのですが、念のため肉類や魚類のものはヤメておいた方がいいですね。
ちなみに、お葬式へ参列できずに【香典】を渡していなかった場合は、手土産と一緒に香典を渡すようにしましょう。
お葬式に参列できない場合は一般的に、
香典を現金書留で送る
お葬式の後に弔問して香典を手渡す
のどちらかですが、現金書留に抵抗があるという人は、後日にお線香をあげに行くタイミングで渡すことになります。
もちろん、香典を先に送っているなら、お線香をあげに行くときに改めて香典を包みなおす必要はありません。
また、遺族の自宅が遠く離れている場合は、無理にお線香をあげに行かなくてもいいですよ。
■お線香をあげに行くときの生花
お線香をあげに行くときには、故人に供えるための生花を持って行くこともあります。
故人に供える生花は【仏用】なので、ちょっとした注意点があります。
仏用の生花は、トゲのあるものはダメで、ニオイが強いものも好ましくありません。
あと、仏用の生花の色は、
49日までは、3色
49日以降は、5色
がよいとされているので意識してみてください。
・・・と、こうやって『生花』について書いていますが、じつは僕、他人の家に生花を持って行くべきではないと思っているんですよね。
なぜなら、生花を受け取る側としては、それを『迷惑』に感じることがあるからです。
だって、受け取ったら一応は供えないといけないし、時間が経つと枯れた花の処分もしなきゃダメなんですよ?
自分が望んだわけでもないのに、一方的に「はい、これを供えてね。」と渡されるのですから、それが負担となり『迷惑』に感じてもおかしくありません。
そりゃあ、受け取ったときは「あら、すみませんね。ご丁寧にどうもありがとうございます。」と御礼を言いますが、本心は「うわ~花か、困ったなぁ・・・。」と嫌がっているかもしれませんよ。
もちろん、生花を受け取って喜ぶ人も大勢いますが、そこでギャンブルをする必要はないと思います。
弔問をして故人に供えるのはお線香や供物だけで十分、生花は不要です。
まとめ
お葬式に参列できず後日に弔問をするときには、お線香をあげに行くときの注意点を守るようにしましょう。
お線香をあげに行くときは、
タイミング
服装
手土産(供物)
生花(非推奨)
に注意しなくてはいけません。
訪問するタイミングは【お葬式から一週間後くらい】がベスト。
服装は、平服でかまいませんので、地味な色で地味なデザインの物を着ます。
弔問時には手土産を添えた方が無難です。このとき、まだ香典を渡していなければ一緒に渡しましょう。
生花を持っていくのはいいのですが、遺族にとっては迷惑になる可能性があることを十分にご了承ください。
しかし、お葬式に参列しなかった場合、後日にお線香をあげに行く必要があるかというと、そんなことはなく、あなたの自由です。
あなたが形式的に訪問をしても、故人や遺族はそんなことを望んではいません。
お線香をあげに行くのは、あくまで【あなたの気持ち】であり、そして【あなたの都合】なんですよね。
あなたの気持ちや都合で弔問をする以上は、故人や遺族に失礼のないよう十分に注意をして、心を込めてお線香をあげてくださいね。